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俺だけおればええ。
志摩
志摩
仕事帰り、夜道を歩いていたナマエ
疲れた体を引きずりながら、ぼんやりと帰り道を進んでいたその時――
「おっと…ほな、ちょっと失礼するで?」
突然背後から声がして、次の瞬間には強い腕が彼女の体を包んでいた。
「えっ――」
驚く間もなく、視界が暗くなる。背後から何か刺されていると理解した時には、すでに意識は遠のいていた。
消えゆく意識の中、耳元で囁くように低く甘い声が落ちてくる。
「ナマエちゃん、暴れんでもええよ。ちゃんと優しくしたるから」
「……し、まくん?」
聞き覚えのあるその声の主を口にした瞬間、私の意識は完全に闇へと落ちた。
___
目が覚めると、知らない部屋の天井が見えた。
柔らかいベッドの感触。心地いい布団の温もり。
……私の部屋じゃない。
体を起こそうとすると、手首にふわりとした感触。
見下ろせば、リボンのようなものが巻かれていた
「――で? これはどういうつもり?」
目の前にはやたらとご機嫌な様子の彼氏、志摩廉造。
「痛かった?ごめんなぁ、夜魔徳くんの調整上手いこといかんくて」
刺されたと思ったあれは夜魔徳の炎だったのか、って違う、聞きたいのはそういう話じゃない。
「いやぁ、ナマエちゃん、最近ちょっとよそ見してるっちゅうか、他の男と話してること多ない?」
「……だからって誘拐はやりすぎじゃない?っていうか、仕事だし」
「え? 何のこと? これはただの“お持ち帰り”やろ?」
ニヤッと笑う志摩。
「そんな怖い顔せんといてや。ナマエちゃんがどっか行ってしまいそうやったから、ちょっと捕獲しただけやん?」
「……捕獲って、これ犯罪だから」
「まぁまぁ、堅いこと言わんといて?」
志摩は軽い口調のまま、片手を伸ばしてナマエの頬にそっと触れる。
「俺さ、ナマエちゃんのこと、めっちゃ大事にしとるんよ?」
「……だったら、こんなことしなくても――」
「でも、こうせんと俺のこと、ちゃんと見てくれへんやろ?」
志摩の目が、ほんの少しだけ切なげに細められる。
「ナマエちゃん、俺がほんまに怖いことすると思う?」
じっと見つめられて、息をのむ。
確かに志摩は本気で怖がらせるつもりはないのかもしれない。
だけど――
「……今の時点で十分怖いんだけど」
「ほな、充分に甘やかしたるから、怖くなくなるまで俺のそばにおり?」
「……え?」
「ナマエちゃんが俺しか見えんようになるまで、ちゃんと“調教”したる」
志摩は、いたずらっぽく笑いながら、ナマエの手をそっと引いた。
「ほな、今夜は俺と一緒におるん決定やな?」
___
朝、目を覚ますと、隣には志摩廉造。
腕枕をされながら、彼の心地よい体温を感じる。
「……おはよ。」
「んー……おはよ、ナマエちゃん。」
低い声が耳元で響く。昨夜はまた彼に捕まったまま眠ってしまった。
だけど、もう抵抗する気も起きない。
志摩くんが私を監禁してから、どれくらい経ったんだろう。
「ほな、俺、仕事行ってくるわ。」
「……え?」
「え?って何驚いとんねん。俺かて、働かんと飯食えんやろ?」
そう言いながら、志摩くんはベッドからスッと抜け出し、手際よく着替えを始める。
「いや……監禁してるのに、普通に出勤するの?」
「そらなぁ。俺が働かんかったらナマエちゃん、ちゃんもご飯食べられへんやん?」
「いや、そういう問題じゃなくて……」
「大丈夫やって。ちゃんと鍵かけてくし、必要なもんは全部揃えとる。何も困らへんやろ?」
そう言いながら、志摩くんは髪を整え、制服を着て、いつも通りのチャラい笑みを浮かべる。
「ほな、行ってくるわ♡ ええ子にしとくんやで?」
そう言って、私の額に軽くキスを落とし、何事もなかったかのように家を出ていった。
――仕事場では、志摩くんはいつも通りだった。
「女の子には優しくしたらなあかんやん?」
「チャラいなぁ。」
「ははっ、それほどでも♡」
彼は普段と変わらず、周りの女の子を軽く口説き、笑いを取って、場を和ませている。
だけど――誰も知らない。
彼の家に、今、"監禁されている女"がいることを。
___
志摩くんが出かけてから、しばらくの間、私はただぼんやりと天井を見上げていた。
……このままでいいわけない。
そう思いながら、私は急いで立ち上がる。
携帯さえあれば――誰かに連絡さえ取れれば――
部屋の中を必死で探す。
ベッドの下、クローゼットの中、机の引き出し――
「ない……」
どこを探しても、私の携帯が見当たらない。
焦りが胸を締め付ける。
その時――
ガチャガチャ……
玄関のドアの鍵が回る音がした。
――帰ってきた!?
心臓が大きく跳ねる。
私は反射的に、クローゼットの影に身を潜めた。
ドアが開く音。
足音が、ゆっくりと部屋に近づいてくる。
「……ん? どこ行ったん、ナマエちゃん?」
志摩くんの声――。
ひんやりとした空気が、一気に緊張感を増す。
「まさか、俺がいない間に逃げようとしてたん?」
足音が、近づいてくる。
「……困るわぁ。俺、ナマエちゃんには“俺だけ”見ててほしいんやけどな?」
クローゼットの扉が、ゆっくりと開かれる。
私は息を飲んだ。
志摩くんの視線が、暗闇の中の私を捉える。
「――可愛いなぁ、隠れんぼ?」
ニヤリと笑う唇が、どこか冷たくて、どこか優しくて。
「……捕まえてしまったからには、ちゃんと罰、与えなな?」
逃げられない――。
目の前に立つ志摩廉造は、いつもの彼とは違うように見えた。
柔らかく笑う表情。いつも冗談を交えて、軽いノリで話してくれるあの志摩くん。
周囲の空気を読んで、女の子には甘く、優しい。
――そんな彼が、私を監禁している。
「……志摩くん、本当はどっちなん?」
ゆっくりと顔を上げて、問いかける。
“いつもの優しい志摩くん”と、
“この檻の中で私を閉じ込める志摩くん”
どちらが、本当の彼なのか。
志摩くんは一瞬、まばたきをする。
そして、静かに笑った。
「どっちも、ホンマの俺やで?」
優しく微笑むその顔が、どこか怖かった。
「外では、俺は“誰にでも優しい志摩廉造”でおらなあかんやん?」
「でもな――ナマエちゃんには、俺の本当の姿も見せたる。」
「だって、好きな子には全部知ってほしいやろ?」
そう言いながら、志摩くんは私の髪を指で絡め取るように撫でた。
その仕草すら、いつもよりもずっと甘くて、だけど――冷たい。
「……怖い。」
思わず呟くと、志摩くんは微笑んだまま、私の顎をそっと持ち上げた。
「大丈夫やで? 俺、ナマエちゃんには優しいから。」
「ただ――他の誰にも渡す気はない。それだけや。」
――どこまでが冗談で、どこまでが本気なのか。
「さぁ、晩ご飯にしよか?」
そう言って、まるで“いつも通り”みたいに微笑む彼に、私は何も言えなくなった。
監禁されているのに、優しい。
閉じ込められているのに、甘やかされる。
……私は、これからどうなるんだろ。
___
監禁されて1ヶ月ほど経っただろうか。
最初は、何とかして逃げ出さなきゃと必死だった。
でも、今は……それすら考えることができない。
外の世界はどうなっているのか。
私がいなくなったことで何か変わったんだろうか。
友達は、私を探してくれている?
それとも、もう――。
「ねぇ、出雲ちゃんって――」
目の前で食事の準備をしていた志摩くんが、一瞬動きを止めた。
「……なんや?」
低く、落ち着いた声。
だけど、さっきまでの軽いトーンとは違う。
「私のこと、探してると思う?」
志摩くんは、箸を持ったままこっちを見つめる。
「さぁ、どうやろな。確かめてみる?」
彼のポケットから、探しても見つからなかった私の携帯電話
私は恐る恐るスマホを受け取り、電源を入れる。
画面には、未読のメッセージ通知がいくつか並んでいた。
「どこにいるの?」
「何かあった? 連絡して」
「心配してるよ!」
手が震えた。
「……みんな、探してくれてる。」
安堵の息を漏らした瞬間、志摩くんの指がそっとスマホを取り上げた。
「せやな。でも――もう関係ないやろ?」
バッ
彼は、スマホの電源を切って、ポケットに戻した。
「今さら連絡したって、何になるん?」
「私、帰る。」
「帰ってどうすんの?」
「……みんなのところに――」
「ほんまに?」
志摩くんは、ニヤッと笑う。
「帰ってもええで? でも、俺とおったらこんなに甘やかされるし、守られるし、好きなこともできるんやで?」
「…俺のほうが、大事にできるで?」
耳元で囁かれる声が、甘すぎて、でもどこか冷たい。
「せやから――出雲ちゃんのことも、仕事のことも、もう考えんでええねん。」
「俺だけ、見てたらええやろ?」
まるで、志摩くんの世界に引きずり込まれるように――。
…いや、ダメだ友達も心配している。
ココで私が折れたら全てが終わってしまう。
どうにか、どうにかして、彼を……。
「……でも、志摩くん、監禁してるデメリットを1つ教えてあげる。」
彼の目をしっかりと見つめながら、静かに言葉を紡ぐ。
「私と、外でデートできないよ?」
一瞬、志摩くんの表情が動いた。
「……あぁ、それは確かに、痛いなぁ。」
くすっと笑いながら、顎に手を添えて考える素振りを見せる。
「可愛い彼女と、街中歩かれへんのは、男としてはちょっと悔しいなぁ。」
「……なら、外に出してくれる?」
「んー、せやなぁ……」
少しだけ考え込むように視線を伏せたかと思うと、次の瞬間――
「しゃーないなぁ、ほな、俺が我慢できる範囲で考えたる。」
にっこりと笑う。
「本当!?」
思わず顔を上げると、志摩くんはゆっくりと私の頬に触れ、低く甘い声で囁いた。
「……“俺が我慢できる範囲”やけどな。」
心臓がドクンと跳ねた。
「外には出してやるで? でも、俺の許可なしにどっか行ったら……」
ふっと微笑んで、指先で私の唇をなぞる。
「――それ相応の罰、考えなあかんな?」
「……っ!」
甘い笑顔が、怖い。
「まぁ、せっかくやし、ナマエちゃんが俺とだけデートしたいって約束するんやったら、考えたるわ。」
「……それって、逃げようとしたらダメってこと?」
「当たり前やん?」
さらっと言うその顔は、まるで本気とも冗談ともつかない。
「ナマエちゃん、外出たら俺以外の男の目に触れるんやで? そんなの、俺が許すと思う?」
「俺が全部手配するわ。ほんで、ちゃんとデート気分味わわせたる。」
「でもな――」
目が合う距離で、志摩くんは静かに微笑んだ。
「俺からは、絶対に逃げられへんで?」
優しく触れる手とは裏腹に、その言葉は鎖のように私を縛っていく。
「まぁ、それでもいい。」
そう言うと、志摩くんは満足そうに微笑んだ。
「そっか、ナマエちゃんも、俺とのデート楽しみにしてくれとるんやな?」
「……うん。」
小さく頷く。
これで、外に出られるチャンスができた。
ここでの生活にも慣れてしまいそうになっていた自分が怖い。
志摩くんは甘く優しい。
閉じ込められていても、愛されていると錯覚するほどに。
でも、外に出られたら、私は――。
…重要なのはタイミングだ、
出雲ちゃんがいつも行くケーキ屋さんの新作発売日。
あの店は人気だから、きっと並ぶだろう。
もしその日に出られたら、もしかして……出雲ちゃんに会えるかもしれない。
「なぁ、志摩くん。」
「ん?」
「……デートの日、決めてもいい?」
「ええよ? いつがええの?」
「……来週の土曜日。」
何気ない顔を装いながら、指定する。
「んー……」
志摩くんは少し考え込んで、そして微笑んだ。
「ええで。ナマエちゃんの願い、叶えたるわ。」
「ありがとう。」
「ほな、当日はちゃんと俺のそばにおるんやで?」
「……もちろん。」
この嘘を見抜かれないように、精一杯の笑顔を浮かべる。
「楽しみにしとるわ。」
志摩くんは、私の頭を優しく撫でた。
――その手の温もりを振り払うことができないまま、私は微笑んだ。
___
デート当日。
志摩くんと並んで歩きながら、心の中はずっと落ち着かなかった。
ちゃんと出雲ちゃんに会えるだろうか。
そして、もし会えたとして――私は逃げられるだろうか。
「ナマエちゃん、なんや緊張しとるん?」
「え? そ、そんなことないよ。」
「ふふ、まぁええわ。せっかくのデートやし、楽しまな。」
志摩くんはニコニコしながら、私の手を取る。
ギュッ。
思ったよりも強い力で、逃げられないようにしているのだろうか。
「……っ」
鼓動が跳ねる。
それはドキドキではなく、警戒のせい、かな。
そして――狙い通りの場所、出雲ちゃんがいつも通うケーキ屋の前。
いた。
出雲ちゃんが、並んでいる。
「出雲ちゃ――」
ガシッ。
腕を掴まれる。
「っ……!」
驚いて振り向くと、志摩くんが微笑んでいた。
「なぁ、ナマエちゃん。なんでそないに大きな声出すん?」
「……え?」
「そんなんしたら、びっくりされるやん。」
いつもの軽いトーンなのに、力強く私の腕を握る手にはまるで逃がさないという意志が込められていた。
「え……」
私が動揺している間に、出雲ちゃんがこちらを振り向いた。
「……え、ナマエ?」
目が合った瞬間、私の胸が高鳴る。
出雲ちゃん――気づいて……!
「今まで、どうしてたのよ……!」
彼女が近づいてくる。
焦りと希望が混じった気持ちで、私は答えようと口を開いた。
「出雲ちゃん、私――「お久しぶりやな、出雲ちゃん。」
私の声に被せるように志摩くんが割り込んできた。
「え……志摩?」
「ナマエちゃん、ずっと俺のとこにおったんよ。」
さらりとした言葉。
でも、それはあまりにも自然で、違和感なく響いた。
「……は?」
「ナマエちゃんがちょっと色々あってな。俺がずっとそばにおったんよ。」
「ちょっと色々って……」
「心配かけてもうてごめんなぁ。でも、もう大丈夫やろ?」
志摩くんが私に視線を向ける。
「な?」
「……」
「それに、こんなとこで話してたら、ケーキ買いそびれるで?」
「あ……」
出雲ちゃんが後ろを振り向く。
列が少しずつ進んでいる。
「そ、そうだけど……」
「俺ら、デート中やしなぁ。邪魔せんといてくれる?」
志摩くんは軽く笑いながら、腕を引く。
「ほな、またな。」
「ちょ、ちょっと待――」
「行こか、ナマエちゃん?」
私の返事を待たずに、志摩くんは私を引き寄せる。
出雲ちゃんの視線が、遠ざかる。
「……っ!!」
私が最後に見たのは、困惑したままの出雲ちゃんの表情だった。
「志摩くん、なんで……」
歩きながら、ようやく搾り出せた言葉。
それを聞いた志摩くんは、少し驚いたように目を細めた。
「俺、何も嘘言うてへんで? ナマエちゃん、ずっと俺のそばにおったやろ?」
「……それは、そうだけど……!」
「ほな、間違ってへんやん?」
さらりと言い放たれた言葉に、息が詰まる。
違う、そうじゃない。
私は助けを求めたかった。
なのに、志摩くんはそれすらも言葉巧みに覆してしまった。
「そもそもな?」
志摩くんは少しだけ眉を寄せる。
「なんで出雲ちゃんに助け求めようとしたん?」
その言葉が、突き刺さる。
「……」
「ナマエちゃん、俺のこと嫌なん?」
「違う……!」
「なら、ええやん。」
「……っ」
「俺、ちゃんとナマエちゃんのこと見とるし、愛しとるやん?」
ふっと微笑んで、私の髪を撫でる。
「俺はもう、ナマエちゃんがどこにも行かんようにしたいんよ。」
その声は甘く、優しく、そして、恐ろしく冷たい。
「どこにも逃がさへんよ?」
柔らかく触れる手とは裏腹に、その言葉はまるで鋼の鎖のように絡みつく。
「俺のそばにおるんやろ?」
「……」
「ほら、笑って?」
そう言いながら、志摩くんの指が私の頬にそっと触れる。
「俺が、ずっとそばにおるからな?」
「……ねえ、志摩くん。」
「ん?」
「そんなに私が居なくなるのが、不安なの?」
足を止めて、じっと見つめる。
私の問いに、志摩くんはほんの一瞬、目を伏せた。
「……せやな。」
静かな答え。
「そりゃ、不安やわ。」
それを聞いた瞬間、胸がギュッと締め付けられる。
「でも、志摩くんって、女の子好きでしょ?」
「好きやで?」
「なら、私が居なくても、他の女の子が寄ってくるんじゃない?」
「……せやな。」
また、同じ答え。
だけど、今度は少しだけ笑っていた。
「でもな、ナマエちゃんみたいに俺のこと、ちゃんと見てくれる子はおらんねん。」
「え?」
「ほんまはな、こんな風に誰かを手放したくないって思うこと、今までなかったんや。」
「……」
「でも、ナマエちゃんは違う。」
「……」
「どっか行ってほしくない。考えるだけで胸が張り裂けそうや」
そういう志摩くんの顔は今にも泣き崩れそうで
「……志摩くん……」
「せやから、怖いんや。」
「……怖い?」
「俺から離れていくのが。」
その言葉を聞いて、私は言葉を失う。
「ナマエちゃんは、俺が今まで出会ったどの女の子とも違う。」
「……」
「せやから、絶対に手放したくない。」
その言葉に、私は息を呑む。
「……そんなに、私のこと……」
「好きやで?」
微笑む。
「せやから、どこにも行かせへん。」
そっと、私の頬に触れる。
「俺のそばにずっとおるって、約束して?」
甘い声で囁かれる。
「……」
「……志摩くん。」
「ん?」
「なら、結婚しよっか。」
静かな声でそう言うと、志摩くんの瞳がわずかに揺れた。
「……マジで言うてる?」
「うん。」
私はじっと、志摩くんを見つめる。
「だって、私が居なくなるのが怖いんでしょ?」
「……せやな。」
「なら、ずっとそばにいられるようにすればいいじゃん。」
自分でも突拍子もない事言ってるのは分かってる。
「……っ。」
志摩くんは、一瞬言葉を失ったようだった。
「俺から逃げられんから……?」
「……そうかもね。」
私は、ふっと微笑んだ。
「でもね、志摩くん。」
「ん?」
「監禁なんてしてたら、志摩くんが好きな“私”は、どんどん崩れていっちゃうよ。」
私がそう言うと、志摩くんの腕が一瞬だけ強くなる。
「……」
「だから、今まで通りの外の生活は許してくれないかな?」
志摩くんは、何も言わないまま私を抱きしめる。
「私は毎日絶対に、志摩くんのところに戻ってくる。」
「……」
「だから、私を閉じ込めないで?」
「…こんなことされても、やっぱり私は志摩くんのことが好きみたい、結婚ってさ一緒に生きていきたいって心から思えないと、意味がないでしょ?」
しばらく静寂が続いたあと、志摩くんはふっと小さく笑った。
「ナマエちゃん、ずるいわ。」
「え?」
「そんなこと言われたら……しゃあないやん。」
「……じゃあ……」
「ちゃんと、戻ってくるんやで?」
「うん。」
「……もし戻ってこんかったら、また閉じ込めるで?」
「……それは困る。」
私はクスっと笑いながら、志摩くんのシャツを軽く握る。
「絶対戻ってくるよ。」
「ほな、信じるわ。」
そう言って、志摩くんは少しだけ照れくさそうに微笑んだ。
──そして、数ヶ月後。
結婚式当日。
「おい、志摩ァァァ!!」
「俺らの知らん間に何しとんじゃコラァァァ!!」
会場の外で、坊の怒声が響く。
「監禁!? 何それ!? ちょっと説明しなさいよ!」
怒りに震える出雲ちゃん。
「俺は志摩さんを信じたかったんですけど、これはちょっと弁護のしようがないですね……」
冷静な顔の子猫丸。
「お前マジでアホなんか!? 結婚決める前に通報されるとこやぞ!?」
「もう通報したほうがいいんじゃない!?」
「ちょ、待て待て待て、ちゃうねんって!!」
両手を上げながら、必死に言い訳する志摩くん。
「いやいやいや、ナマエちゃんも納得しとるやん!? なぁ!?」
視線を向けられて、私は小さく笑った。
「うん、納得してるよ。」
「ほらな!? ほら!! 俺、無理やりやないねん!」
「でも監禁は監禁やろが!!!」
「「「そうだそうだ!!!」」」
容赦ない非難の嵐に、志摩くんは肩を落とす。
「……いやぁ、愛って、難しいなぁ……」
「難しくねぇよ!!!!」
──こうして、結婚式の前に志摩くんは全力で友人たちに説教されるのだった。
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