君と運命とそれからオレと
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私には可愛い可愛い番がいる
名前は灰谷竜胆
可愛い可愛い私のΩ
彼の項を噛んだのは何時のことだったろう
噛んだ時の驚きと嬉しさが混じった顔で怒られた時は本当に可愛かった
そんな、彼には兄が居るという
竜胆と付き合って半年、今日初めて彼の兄とやらに会う
いや、ぶっちゃけ竜胆さえ居れば後はどうでもいいから紹介なんて要らないんだけど、どうしても紹介したいと言われたから竜胆の家にお邪魔する事にした
ガチャ
「おーお前が竜胆のつが……え……?」
「っ!!!」
「兄ちゃん?さや?」
あぁ、この男の匂いだったのか
……竜胆から香っていた甘い匂い
「みぃーつけた」
「なっ……!?え??」
「っ!!やめっ!!」
私は本能のままに目の前の男の手を取って項に噛み付こうとした
「さや!!」
「……あ?」
私は何をしようとした?
番が、竜胆が居るのに別な男の項を…噛もうとした……?
「っ!!竜胆悪い今日は帰る」
「さや!待って!!」
「っ……本当に、居たんだ…」
後ろから竜胆の声と甘い男の声がしたが私は振り返らずにその場から去った
いや、これ以上あの男の声を、匂いを嗅いでいたくなかった
竜胆を裏切ってしまう
そんな確かな予感が頭を過ぎっていた
それから竜胆と連絡を取らなくなった
原因は私にある
衝動が抑えられない
ただそれだけ
次彼に……運命の番に会ったら確実に噛んでしまう
そんな嫌な予感が頭をしめて竜胆に連絡を取れずにいた
プルルルルル…プルルルルル…
竜胆からの電話は毎日それこそ数時間おきにあった
それに私は出れずにいた
竜胆を裏切ってしまう
そんな事が頭の大半をしめて仕方なかった
大事で大切な私の番
運命の相手なんて要らなかった
竜胆さえ居ればよかった
それは甘い考えだった
運命には逆らえない
「ははっ……何で運命の番が竜胆の兄なんだよ…」
私が感じていた香りは竜胆の物じゃなかったの……?
私は……私は……
「竜胆、ごめん……ごめんね…」
私は弱い
αだなんてふんぞり返ってたけど竜胆の前ではこんなに弱い
「助けて……りんどう……」
プルルルルル…プルルルルル…プルルルルル…
「例の子?」
「兄ちゃん…」
「あれから連絡ないんだってな」
「うん……」
「……ごめんなぁ」
「兄ちゃんが謝る事じゃないよ……仕方、ない事じゃん」
「竜胆……」
さやからの連絡が途絶えて何日経っただろう
毎日毎日毎日、さやに連絡しても出てくれない
オレ、すてられちゃったのかな?
兄ちゃんが運命の相手だったからもうオレは要らないのかな……
そんな……嫌だ!!
さやはオレのだ
オレの番……オレのα……
だけど、運命の人はオレじゃない
どうして……?なんでオレが運命の相手じゃないの?
何で兄ちゃんなの?
知らねぇ奴なら殺せたのに……
兄ちゃんは殺せないよ……
「ねぇ、さや……早く迎えに来てよ…」
そして、オレだけをあいして
運命の相手なんて信じちゃ居なかった
運命なんてあるなら何でオレと弟がΩなんだよ
Ωだからってバカにしてきやがる奴らは全員再起不能にした
そしたら六本木のカリスマなんて言われるようになった
オレは弱くねぇ
αにだって負けねぇ
運命なんて信じねぇ
あの日までそう思ってた
「っ……マジかよ……」
「兄ちゃん大丈夫…?」
「あはは、ちょっと辛いかも」
ちょっとなんて嘘だ
大分辛い
オレの運命の相手は弟の番だった
勝ち目ねぇじゃねぇか
他の奴だったら確実奪ってた
周りも見ずにアイツに抱きついて噛んで貰いたかった
でも……
「りんどぉ……安心しろよ、大丈夫だ」
「兄ちゃん……」
だから泣きそうな顔すんなよ、お前の番は奪わねぇから
オレは大丈夫だから
だから……
「しあわせになれよ」
運命なんてやっぱり嫌いだ
その日久しぶりに竜胆に会った
少し痩せてた
罪悪感しか感じない
竜胆に会うのがこんなに辛くなるなんて思ってもみなかった
「連絡無視してごめん」
「ううん、大丈夫。さやは大丈夫だった?」
「うん」
大丈夫なわけない
竜胆に会えないのは何よりも辛かった
だけどそれ以上に裏切ってしまうという事が辛かった
「さや、もう1回兄ちゃんに会ってみない?」
「いや、いい。竜胆の兄には二度と会わない」
「兄ちゃんが辛そうなんだ…頼む、会って欲しい」
「竜胆…1回だけ。これっきりだよ」
「ありがとう」
この時気づくべきだったんだ
竜胆がどうするか、なんて前の私なら分かったハズだったのに…
ガチャ
「ん、入って」
「お邪魔します…」
あぁ、甘いあの匂いだ
私を狂わせる甘い甘い香り
「さや、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
竜胆がいる限り、大丈夫
「兄ちゃん話が…兄ちゃん…?」
「っ!!」
ベッドの上に真っ赤な華が咲いていた
「兄ちゃん!!!」
「……う……りんど……なんで……」
「兄ちゃん兄ちゃん!!」
「早く止血を!!竜胆落ち着け!!」
「なんで……兄ちゃん……!!」
「大丈夫だ!出血は激しいけどそれ程深くはない」
「………さや……兄ちゃんをまもってね…」
「竜胆……?待て、何処に……竜胆!!」
この日の事を私は一生忘れない
もう一度戻れるのなら今度は君を死なせたりなしない
だから、竜胆……
「もう一度繰り返そうか。バカな物語を」
竜胆今逢いに逝くからね
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