君の制汗剤の匂いがした。
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暑さの所為か、恋の所為か。
答えは多分どちらもだろう。体育館外の水道の前で、手を洗いながらぼうっと体育館の中を眺める。冷たくもない、まるでぬるりとしているような温まった水道水で、手を濡らしていても全く意味なんてない。暑いな、と考えるよりも先に自然とむさ苦しい体育館の中で、バスケをする彼に夢中だった。
揺れる蜂蜜色を目で追いかけるのに必死で、自分の手元などどうでもよかったのである。すると、ふと中にいる彼とバチッと視線が合う。これはきっと暑さの所為。普段ならすぐに視線を逸らすのに、今日はぼうっとしているために何も考えられない。キュッ、と流しっぱなしの生温い水道水を止める。温い水道水なんか、何にも役に立たないじゃないか。何も冷えていない。体も心も。
「おい、大丈夫かよ」
「……あっ、大丈夫です」
「嘘だな、お前保健室行くか?」
「いや、そんな大丈夫です」
「そんなぼうっとした顔で言われても説得力ねぇぞ」
彼女の様子に気付いた彼はいつの間にか、外の水道前までやって来た。顔の前で手を振ったり扇いだり、彼の動作一つ一つに、自分の体に熱を帯びるのが分かる。この距離は、良くない。引き寄せたらそのままキスできそう、なんてことを考えてしまうくらい彼女の頭はぼうっとしていた。彼は、ため息をついて一度体育館中へ戻って行く。きっと、大坪さんに事情を伝えに行くんだろうなぁと他人事のようだ。そして、懲りずにまた彼の姿を追いかける。無意識に。
冷やしたタオルを片手に彼は彼女の元へ、走って来た。「ほらよ」とタオルを首にかける。
ああ、冷たい。冷たくて痛い。
ふわりと体が持ち上げられ、彼の顔との距離がさらに近くなる。頭の方は少し冷えたようで、彼女は今置かれている状況にやっと気づいた。抱えられている。ちょっとだけ汗くさいような気もするけれど、彼の匂いにどきんと心臓が跳ねた。
「宮地せんぱ、」
「ぶっ倒れる前に休め、保健室行くぞ」
「あ、歩けますからっ!」
「病人は黙って言うこと聞け」
「は、はい……」
この熱は、暑さの所為か恋の所為か。
「宮地先輩、」
「ん、どした」
暑さの所為にしてしまえば、いい。
全部全部、暑さの所為だから。
「……すき、です」
この恋も、彼の熱さの所為。
答えは多分どちらもだろう。体育館外の水道の前で、手を洗いながらぼうっと体育館の中を眺める。冷たくもない、まるでぬるりとしているような温まった水道水で、手を濡らしていても全く意味なんてない。暑いな、と考えるよりも先に自然とむさ苦しい体育館の中で、バスケをする彼に夢中だった。
揺れる蜂蜜色を目で追いかけるのに必死で、自分の手元などどうでもよかったのである。すると、ふと中にいる彼とバチッと視線が合う。これはきっと暑さの所為。普段ならすぐに視線を逸らすのに、今日はぼうっとしているために何も考えられない。キュッ、と流しっぱなしの生温い水道水を止める。温い水道水なんか、何にも役に立たないじゃないか。何も冷えていない。体も心も。
「おい、大丈夫かよ」
「……あっ、大丈夫です」
「嘘だな、お前保健室行くか?」
「いや、そんな大丈夫です」
「そんなぼうっとした顔で言われても説得力ねぇぞ」
彼女の様子に気付いた彼はいつの間にか、外の水道前までやって来た。顔の前で手を振ったり扇いだり、彼の動作一つ一つに、自分の体に熱を帯びるのが分かる。この距離は、良くない。引き寄せたらそのままキスできそう、なんてことを考えてしまうくらい彼女の頭はぼうっとしていた。彼は、ため息をついて一度体育館中へ戻って行く。きっと、大坪さんに事情を伝えに行くんだろうなぁと他人事のようだ。そして、懲りずにまた彼の姿を追いかける。無意識に。
冷やしたタオルを片手に彼は彼女の元へ、走って来た。「ほらよ」とタオルを首にかける。
ああ、冷たい。冷たくて痛い。
ふわりと体が持ち上げられ、彼の顔との距離がさらに近くなる。頭の方は少し冷えたようで、彼女は今置かれている状況にやっと気づいた。抱えられている。ちょっとだけ汗くさいような気もするけれど、彼の匂いにどきんと心臓が跳ねた。
「宮地せんぱ、」
「ぶっ倒れる前に休め、保健室行くぞ」
「あ、歩けますからっ!」
「病人は黙って言うこと聞け」
「は、はい……」
この熱は、暑さの所為か恋の所為か。
「宮地先輩、」
「ん、どした」
暑さの所為にしてしまえば、いい。
全部全部、暑さの所為だから。
「……すき、です」
この恋も、彼の熱さの所為。