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まだ残る澄んだ想い(三嶽+戦場)三嶽視点

 どいつもこいつもイイ子ぶって。結局顔とカラダにしか興味ないくせに……。
「塔士くん……来てくれたんだ。急に呼び出してごめんね」
 なーにが『急に呼び出して』だ。どうせこいつも何日も前から計画してたんだろうが。誰も好きで来たんじゃねぇよ。
「それで、話って何ですか?」
 後輩らしい愛嬌で、そして俺らしくこの女もきったねぇ泥沼に突き落としてやる。
「明日……私、卒業でしょ。だから……」
 だから何だよ。
「まさか、俺に告白するってんじゃねぇよなぁ?」
「えっと……あの、塔士くん……?」
「当たりかぁ? お前、鏡で自分のツラ見たことあんのかよ。卒業だからだか何だか知らねぇけど、お前みたいなどこにでもいるモブ女と、俺が付き合うわけねぇだろ。バカじゃねぇの」
「っ……」
 俺のことなんてひとつも知らないくせに、ちょっと周囲の野郎に人気あるからって思い上がりやがって。この女が泣こうが知ったこっちゃねぇ。さっさと失せろ。
「塔士……」
 木陰からデカい男――戦場が出てきた。裏表もない、クラスに一人はいる周囲の人間によく好かれるタイプの男だ。俺とは真逆……住む世界が違い過ぎる。
「ハッ。盗み聞きかよ、シュミ悪ぃな」
「塔士が呼んだんだろ。あの子が塔士を呼び出した時間に」
「そーだっけか? ハハッ」
 敢えてあの女と時間を重ねて、俺が戦場を呼んだ。そんでわかってて遅れて行った。
「……良かったのか」
「あ? 何がだよ」
「さっきのあの子だよ。言い過ぎじゃないのか。泣いてたぞ」
「知るか。結局あの女も俺の顔目当てだったってことだろ。それなのに俺が悪いってのかよ」
「そう言ってるんじゃないけど、もっと言い方が――」
「るせぇなぁ。だったらお前があの女のこと慰めてやりゃあいいじゃねぇか」
「どうしてそうなるんだよ……」
 俺は今まで何十人もの女に同じことを言われて、そりゃ最初は柔らかく断ってたさ。でも次第にめんどくさくなって、何人目だったか忘れたが、それから言いたいこと言ってフってやるのが当たり前になっていった。
 俺に集る女はみんな同じで、見てるのは〝俺〟じゃない……。
「最近モデルのバイトが忙しくてお前に構ってやるヒマなかったからな。溜まってんのかと思って」
「……そもそも構われた覚えもないけど。まさか告白してくる女の子みんなに、ああいうこと言ってるんじゃないだろうな?」
「は? だったら?」
「あんな言い方されたら、一生忘れられないぞ」
「いーんじゃねぇの、別に。俺の顔とヤリ目的な女共には丁度いい。それに、俺にはお前がいるだろ? 本当の俺を知ってるのはお前だけで十分だ」
 どうせ戦場は気づかない。俺がお前をこの場に呼んだ理由を。
 お前との出会いは記憶に残るほどの強い印象があったわけじゃない。でも、ふと出てしまった隠していた俺の素を笑って受け入れてくれた。歪んでいくだけだった俺を落とすには、それだけで十分だった。
 戦場が同じ男だったから、女と同じような反応をするはずはない。わかりきってることだけど、だから。だから――まだ卒業すんなよ……。

 お前しかいないって、見せつけたかっただけの俺をまだ置いて行かないで。
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