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夢と悪夢を引き換えに(国重×夏透(捏造)

 誰も居ない部屋に、ひとり。
 お前の幻を追い掛けて眠るが、所詮は夢。
 きっと、会うことも、触れることも、もう二度と叶わないだろう。
 俺はいつ、どこで選択を間違えたんだろうか。

「昴正ってば、他人のことばかりだね」
「何だよ、突然」
 食後の、何をするわけでもない時間。
 昴正は吸いかけのタバコを灰皿に押し付けて、隣に座る僕の顔を見た。
「僕は昴正の一番近くにいるのに、昴正はちっとも僕を見てくれてない。いつだって見ず知らずの他人のことばかり考えてる」
 これが、僕が口にした初めての昴正への不満だった。
「そんなつもりはねぇけど……仕方ねぇだろ。仕事なんだから」
 半ば呆れたように言う昴正に、
「だったら……そんなに余裕がないなら、どうして僕と付き合ってるの?」
 こんなこと、本当は言っちゃいけない。僕は昴正を応援するべきなのに。
「……」
 昴正は何も答えてくれなかった。僕と付き合ってる理由なんてないんだ。
 そうやって、自分のことばかりを考えてる僕はワガママなのかな。
「なんでそんなこと聞くんだよ」
「〝なんで〟……?」
 僕は昴正が思ってる以上に淋しいし、強がってる。
 昴正は仕事に誇りを持って頑張ってるから、負担をかけたくない。だから今までずっと何も言わずに付いてきた。けどもう、苦しいよ。
 僕は昴正よりも子供だから、昴正みたいに我慢なんてできない……こんなに好きなのに。
「僕だってこんなこと言いたくないよ……昴正が好きだから……でも、昴正が僕に言わせたんだ……!」
「……悪い」
 ぽつりと、呟くようにそう言った。
「少しくらい、自分や……僕のことも考えてよっ……」
 もっと大事にしてほしかった。それだけだった。
「悪かったな、今まで。ずっとお前に我慢させてたんだな。気づいてやれなくて悪――」
「もう、謝らないで……」
 僕の声が震えて、それ以上言葉を紡げなかった。
 昴正は今にも泣き出しそうな顔をして、僕を優しく抱きしめてくれる。
 それが、昴正が僕に与えてくれた最後の温もりだった。
「昴正……愛してたよ」

 僕は昴正と別れた少しあと、リビドーに出会った。
 夢の中の昴正はいつだって僕を一番に想ってくれて、いつだって側にいてくれる。
 昴正に抱かれたまま、このまま死んでしまいたい気分だ。



 どんなに余裕がなくても、夏透だけは好きだった。
 どんなことがあっても夏透だけは俺に付いて来てくれるって、根拠もないくせに疑わなかった。
 誰よりも望んだ関係を自ら壊してまで、俺は何をしたかったんだろう。
 一緒にいれればそれでいい、なんて。考えが甘過ぎたんだな。
 俺は最低だ。
 夏透を手に入れても、夢を追い続けて、夏透を失い。
 ――まるで終わりのない悪夢みたいだ。



-END-
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