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僕のヒーローは(緑谷+爆豪)

 僕はなんにもできない。そんな僕をいつも守ってくれたかっちゃんは、僕の憧れそのもの。
 かっちゃんは昔と変わってしまったけど、僕の気持ちは昔も今も変わらない。

「デクのくせにっ……」
 最近のかっちゃんはそればっかりだ。
「絶対は俺だ。俺が一番なんだよ……!」
 かっちゃんは何がそんなに気に食わないんだろう?
 僕の一番はいつだってかっちゃんなんだよ。
「かっちゃん……僕、どうしたらいいかな。どうしたらまた昔みたいに、かっちゃんと仲良くできる?」
「あァ? てめぇと仲良くした覚えなんてねぇよ。バカじゃねーの」
「……ごめん。でもっ……あの頃のかっちゃんも口は悪かったけど、心は誰よりも優しくて、誰よりも真っ直ぐだったよ」
「デクが……てめぇに何がわかる……俺の、何がっ……」
 強く握り締めた拳がぷるぷると震えていて、それでいて、かっちゃんは怒りにも似た悲しげな表情を浮かべていた。
「かっちゃん。僕はかっちゃんと違って、生まれ持ったすごい個性なんてないよ。だからこそ、僕にしか出来ないことだってあるって信じてるんだ。かっちゃんに勝ってるなんて思ったことないけど、いつかはかっちゃんと並んで同じ未来を見れたらいいなって。そう思うのも、かっちゃんは許してくれないのかな?」
 黙って聞いていてくれたけど、もう聞きたくないと言いたそうに目を閉じた。
「……さねぇ」
 あまりにも小さな声で聞き取れず、僕は首を傾げる。
「だから! お前とこの俺が並ぶ未来なんてねぇよ。そんなこと絶対許さねぇっつってんだよ」
 鼻と鼻がぶつかるんじゃないかってくらいの近さで睨まれ、僕は後ずさりそうになる。
「そうだね。それでこそかっちゃんだよね」
 気づいたら、僕は笑っていた。
「何が可笑しいんだよ、デク」
「僕の一番はやっぱりかっちゃんだなって」
 笑う僕に、怒るかっちゃん。
 無個性な僕と、すごい個性を持つかっちゃん。
 今はまだ無個性と言っても過言じゃない受け継がれた〝個性〟だけど、絶対に自分のものにしてやるんだ。それで、かっちゃんが並ぶなと言うのなら、彼の少し後ろを守れたらいいなって。
 ヒーローはひとりで〝ヒーロー〟になんてなれない。守るべき人がいて、助けを求める人がいるからヒーローになれるんだ。
「俺はデクが一番気に入らねぇけどな」
 不機嫌丸出しにふいっと顔を背けるかっちゃんだけど、小さく「しょーがねぇな」なんて聞こえた気がした。
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