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GHとクロスオーバー。旧校舎の調査に駆り出される話。
高2の春だとこんなこと付き合わなそうだから高1かもしれない。…でも麻衣ちゃんに雪村先輩とか言わせたい。細かくは考えてない。
キャラが出る前に力尽きた。
「あれ時人、どこ行くのよ」
「都内の高校。ボロボロの旧校舎で幽霊騒ぎが起きて、壊したくても壊せないんだってさ」
「はあ?」
気持ちはわかる。めいっぱい顔を顰め、胡散臭いと目で言う時音にこっちもため息をついた。俺だってそんな馬鹿らしいことに付き合いたくない。
「好きで行くんじゃない。昼間、理事長がうちに来ておばあちゃんに頼んだんだってよ、学生時代の後輩が校長をしてる学校に出る霊をなんとかしてくれって。前から色んな噂があって取り壊しの延期が重なってたけど、昨日巫女にお祓いをしてもらった矢先にガラスが割れて校長が怪我をしたそうだ。その巫女はお祓いする前に土地の精霊のしわざだって言ってたらしい。」
「へえ‥‥うさんくさい」
「同感だ」
「....」
「....」
しばし目を合わせ、どちらともなく指先を額にやりハァ、と息を吐く。意識していなかったが、これは俺と時音の癖かもしれない。どっちが先かは知らないが。「‥‥そういえば、お母さんが玉ねぎ買い忘れたって言ってたわ」「ああ、さっき言われた。夕飯には間に合わないだろうけど帰りに買ってくる」「そう」雪村家の玄関に流れたなんとも言えない空気を払拭するように平和的な会話をする。制服のままなので通学用の靴に足を入れ、ポケットに入れた財布を確認する。生活範囲が学校と家とスーパー、時々裏山のお寺くらいなので電車に乗るのは久しぶりだ。裏会の仕事は迎えが来るので除外する。そもそも結界師の装束で電車なんて使えない。
「ま、嘘にしろ本当にしろ、わざわざおばあちゃんに頼むことじゃないだろ。たかが霊なんかではた迷惑な…」
「‥‥その顔なんとかしてから行きなさいよ。烏森の理事長だって、あたしたちの家業に協力してくれてるんだから」
「先に烏森学園ができたわけじゃないんだし当然だろ」
吐き捨て、靴を履き立ち上がる。既に修行着に着替えている時音は「日本最古の学校だって200年前よ」、と呆れていた。400年前の烏森城と比べるなと言いたいようだ。それもそうだけど。
毎夜の妖退治の家業は確かに烏森学園に夜間警備やらがされていないから成り立っていることだが、そもそも学校が立つよりも百年単位で先にここに住み守ってきたのが雪村と墨村だ。妖が寄ってくる原因は学校とは関係ないので感謝なぞ求めないが、邪魔をしないのは当然だろう。
余談だが、雪村家と墨村家の両家の存在を知っている理事長がうちを頼ったのに深い意味はないと思う。邪推するなら女当主の方が話が通ると舐められたか。祖母として師として時子を尊敬し慕う時人の声に怒りが滲む。顔にも出ていたらしい、苦言した従姉妹に時人はにこりと笑った。ご近所さんや教師に向ける時人の『外面』だ。
「じゃあ行ってくる。この顔なら問題ないだろ?」
「気持ち悪いくらいよ。いってらっしゃい」
「ハハ、いってきます」
最後まで顔を顰めた時音に見送られ、着いた件の学校はなんてことはない普通の高校だ。中学とも提携した中高一貫校のようで、都内にしてはやや広い印象だが金をかけた私立という風でもない。校舎も綺麗すぎず古すぎず、平日の放課後らしく部活に励む学生でそこそこ賑わう至って普通の公立校だった。
(こっちに来ると人気がないな。普段は立ち入り禁止にしているらしいけど)
この学校の校長に会い、やれ旧校舎にどれだけ手を焼いているかやら昨日は散々な目にあったやらぐだぐだと続く話を切りさっさと席を立った時人は現在その旧校舎前に居る。話の通りボロボロの木造の校舎はいかにもといった雰囲気を持っており、学生の怪談話にされるのも納得の風貌だ。年季の入った外壁は雨風でささくれ酷く痛んでいるし、ひびの入ったガラスに申し訳程度のテープが貼られている窓がいくつもある。時人はそれをしげしげと眺め、元々なかったやる気が消えていくのを感じた。
(怪談話なんて…うちには七十七不思議があるぞ。狂い桜以外は知らないけど。)
校舎というのだから、古いながらそれなりの大きさのある建物だと想像していたしコンクリート校舎に比べれば遥かに小さいが正直面倒だ。ここにいるかも分からない霊を探せと言われても「はあ?」と睨みたくなる。自分の学校の噂話を調べた方がまだ楽しそうだ。実際七十七もないだろうが。
「ハァ‥‥」
小さく息を吐き、自然な動作で式の紙を空に放る。無造作に散らされた長方形の紙たちはしばし風に煽られ、ふいにその姿を消す――視える者は、ポンッという音と少しの白煙と共に現れた白い鳥たちに驚くだろう。胸に黒い正方形を刻んだ白いカラスは雪村家の式神だ。自分で校舎内を全て見て回るのは面倒なので式に任せようという魂胆だ。時人はさっさと帰りたかった。
「外を一周して何かいないか探して。それ以外は中の探索。来い」
歩きながら指示した時人に三羽のカラスが従順に飛び立つ。角を曲がり見つけた校舎の玄関口は校長の言っていた通り、まだ新しい割れたガラス片が残っていたためすぐ分かった。縁に鋭利に尖った硝子を残した扉を静かに開け、「何か見つけたらすぐに知らせろ」と残りの式へ告げようとした口を閉じる。‥‥扉の先でこちらを向いたカメラと目があった。
「‥‥‥」
パキリと踏んだガラスに気を取られたふりをして顔を伏せ、時人の両肩にいる式に目で行くよう伝える。バサバサと翼を鳴らし飛んで行った白烏たちを見送り、ゆっくりと玄関を見回した。
(何でこんっな本格的なカメラがあるんだ‥‥!?)
間違っても自称霊能力()が持つような代物じゃない。三脚で立てられ、ものものしくこちらを捉える大型カメラ。家庭用の可愛らしいハンディなんかじゃなく、テレビ局で使われそうな本格的なゴツいフォルムだ。いくらするのか想像もつかず迂闊に近寄りたくない。点滅する光から撮影中だと思われる。
内心妙な冷や汗をだらだら垂らしながら、慎重にカメラの横を通り抜けた。廊下のど真ん中に堂々と鎮座しているものだから、どこへ行こうにも高価そうなカメラを避けては通れないのだ。
(巫女や坊さんがこんなの持参するのか…?)
続かない。
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