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男の霊力は雪のようにまっさらな、白く穢れのないものだった。音を吸い込んだように重く冷たく、それでいて目を瞠る美しさがあった。山奥で密かに湧くとびきり清澄な泉を見つけたような、得も知れぬ高揚感と優越感が生まれた。伸ばされた手に持ち上げられ、山姥切国広は男の霊力に包まれる。ふっ、と冬の空気に触れたような静けさを感じた。そして鉄の身が温度を持ち、花弁を舞わせて顕現する。口上を述べる間もさらりとした霊力は山姥切を包み、僅かばかり四肢を冷やした。得たばかりの生の身が引き締まる。
「俺は雪村時人と言う。よろしく頼む、山姥切国広。」
「・・・・ああ」
名を名乗られる。姿勢の良い、瞳に知性的な光と強かな意志を灯した若い男だった。優男のような風貌をしているが立ち姿は凛々しく隙がない。口元の笑みは鋭さを和らげるために作られたようだった。男が視線だけで刀を見やる。腹の内を隠すことに長けていそうだと漠然と感じた。
己の手を見下ろす。山姥切国広である黒い打刀をしっかりと握っており、はめ込まれたように手に馴染んだ。不思議ものだ。目の前の男は黙りこくった山姥切に一声かけてから白の羽織を翻し、後ろに控えていた刀剣男士二振りを振り返った。あっさりと向けられた背に驚く。山姥切国広は、たった今戦場で拾い顕現したばかりだというのに。豪胆なのか傍の二振りを信頼しているのか。或いは印象とは違い間抜けなのか。
早くも主となった人間に平静を乱される。いや、男が近寄った時にはもう、胸中は波打っていた。「一先ず本丸に戻る。詳しい話はそこでだ。」聞き取りやすい声が投げられる。短く是と答え、黒い目を見返す。感情は何も読み取れなかった。長けていそう、ではなく間違いなく長けているな。山姥切は心の中で断じた。
ーーーだが。身体を薄くまとう霊力へ意識を向ける。変わらず少しひやりと冷たい。清らかだがそれだけではない、太く揺るぎない芯のあるものだ。この霊力に男の本質を垣間見た気がした。
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続かない。山姥切くんは初期刀ではないです。