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「丁度一人、余っているのよ」
 レティの目が見開かれ、一歩踏み出し何かを言おうとした刹那、隣にいたディエゴが制止する。レティがディエゴを見上げると、彼は唇に人差し指を当て無声音で囁いた。
「そういうお達しが来ていることは知っていた筈だ。仕方がない事なのだから口を開くな、レティ」
 萎れるレティ。その様子を見、リデルは茶化すように注意する。
「こら、ディエゴにレティ、私の話はちゃんと聞くのよ」
 ハルは彼らに気づいてはいないようだった。
「さて、話を戻すわね。一人丁度余っているのよ」
 レティは俯いたままだ。ディエゴは目を逸らし、アルフレドは腕時計を見て、カルロスは曇った顔をしている。誰もリデルを見ようとしない。
 誰も少年を見ようとしない。
「前の相棒が不慮の事故でね。子供が好きだからきっと面倒見は良いわよ」
 リデルの笑みが深くなった。
「名前はアマネセル。四年前からここで働いているわ。
 きっと貴方も好きになると思うけど……ディエゴ、案内してあげて頂戴」
 ディエゴはぼそっと返事をし、ハルを促す。部屋を出る間際振り返ると、リデルは満面の笑みでいってらっしゃいと言うように手を振っていた。
 相棒の居る部屋は相当地下深くにあるようで、ハルとディエゴは階段を何周も降りなくてはならなくなった。
「悪いな、昇降機は壊れてるんだ」
 アルフレドは使わないで行くぞと言っていたけど、そもそも壊れていたのでは元も子もないなとハルは独りごちた。
 何周降りたかもわからなくなり、随分暗くなった頃にディエゴが口を開いた。
「ハル、と言ったか。お前は……」
 しかし、何かを思い出したように言葉が途切れる。
「……いや、何でもない。__着いたぞ」
 そこにあったのは、リデルの部屋よりも大きく重たげな、金属板をそのままくっつけたような扉だった。ドアノブのある筈の場所には歯車が二つ付いていて、扉の周りにある機関で開くようになっているらしかった。
「これがお前の相棒の部屋だ。ドアノブは大きい歯車を反時計回りに二回、小さいのを時計回りに三回転すれば開く」
 それだけ伝えると、そそくさと背を向ける。
「俺は戻る。仕事が一応あるのでな」
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