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(また臓物臭くなれってか、冗談じゃない)
 結局やってもらえなかったネズミの後始末をしながら、唇を噛み締めた。
 (死刑なら死刑らしく、見せしめにでも地上でやりゃあ良いものを)
「……そりゃまずいか」
 ふと頭上のカメラに気づく。いつも見ているものだったが、今日は何故かその存在の訴えかけてくる何かが酷く気に障った。
 (あー怪しい怪しい、上の奴らは何考えてんだか。俺の行動も全て記録しちゃってさぁ)
 ゴーグルを外す。青緑のフィルタが外れ、残酷なほど鮮明な視界が心地よい。カメラを睨みつけると、ぴしりと小さな音がした。
 (どっちが罪人だよ)
 お構い無しに睨みつける。今度ははっきりとミシ、バキとカメラが震えるのがわかる。
 (情報が回らないということは、限られた情報を盲信しやすくなる。自由を檻に入れれば__)
 カメラが耐えきれないと言わんばかりに破裂した。
 (__ヒトは玩具に成る)
 カメラのレンズをつまみあげ、覗いてみる。ヒビが細かく入って磨りガラスの曇った風景が見える。
 (……曲馬団の獅子と同じかな)
 指で弾くと、脆いガラスは綺麗に砕けた。
 (気でもふれたか)
 ふと視線を感じ、棚の上の写真立てを見る。
 古びた写真の中の少女の記憶が、今でも色褪せず心の底に沈んでいる。
「……ごめんな」
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