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「……夢、か」
 嫌な夢を見た。昔の夢だ。
 汗をかき着心地の悪くなった服を着替える。
「今更そんな夢なんか見なくても、忘れたことなんてあるかっての」
 洗面所の鏡を見る。青緑のレンズのゴーグル。左の髪の一房から下がる橙の職布。忘れようにも忘れることなどできるものか。それ以上見るのが嫌になり、彼はゴーグルを外し洗面台に水を溜める。ゆらゆら自分の赤い髪が水面に映って不愉快だ。すぐそばの柱からかさかさと音がする。彼はお構い無しに顔を洗い、タオルで顔を拭う。
 そして顔を上げ、柱を見やると__
 

 ネズミの身体からぱき、と軽い音が鳴り、血が噴き出した。
 ぼたりと落ちたネズミの死骸を摘み、青年は溜息をつく。
「上の奴ら、またサボったな」
 どうしたものかと頭を抱える青年の元に、近づいてくる足音が一つ。
 
  __蒼穹の刃
 __其の世界、業の裏に在り。
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