傘を忘れて
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「あっちゃー……雨だったかあ。」
うっかり天気予報を見忘れた私を待ち受けていたのは生憎の雨で。
家から出る時にもしかして、と思っていたけれど結局なにもしてこなかったのだ。
「……まあ。そんな遠くないし、なんとかなるかな。」
鞄を頭の上に乗せ、一歩踏み出そうとした手を誰かに掴まれる。
「おい苗字、まさかそれで帰ろうとしてんの?」
振り返れば、呆れたように私を見て笑う菅原先輩がいて。
「あ、あはは……傘を忘れてしまって。」
「んじゃ、これ使いなよ。苗字より俺の方が家近いだろー。」
そう言って傘を渡すとじゃあ、と手を上げ去って行こうとする先輩の手を今度は私が取って。
「え、えっと、一緒に入れば……いいじゃないですか、?」
様子を窺うように顔を覗き込めば、仄かに赤く染まる先輩の顔。
その表情も束の間、今度は様子を窺うような、躊躇うような目で私を映す。
「……俺、多分今汗臭いよ。」
「いい……です、先輩、だし。」
「……いいの、それ。期待しちゃうよ。」
「……その気がなかったら、端からこんなこと言わないです。」
その後の先輩の様子、気持ちなんて知る余裕もなくて。
結局傘の中、鼓動だけを響かせてお互い肩を濡らして帰った。
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