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「……げ、もうこんな時間かよ……」
重い頭を起こし時計を見上げれば短針は二時を指している。
カーテンから射す陽の光を浴びれば考えるまでもなくそれは午後を示すだろう。
「……スゲー絵に描いた『ダメな大学生』だな……」
己と隣でまだ寝息を立てている彼女は一糸を纏っておらず、二日酔いか寝過ぎからきているのかぼんやりと鈍痛が頭を過ぎる。
とりあえず、と起き上がり下着だけ身に付ける。もたもたとキッチンの換気扇の元へ向えばいつものように箱から一本煙草を取り出した。
格好をつけて買った安物のジッポで火を炊き、咥えた煙草にそれを灯す。
肺へ運んだ煙を溜息と共に換気扇へ浮かべる。
「随分慣れちまったなァ……」
緩々と昇る煙をぼんやり見上げていれば俺のTシャツを纏った彼女が寝室からひょっこり顔を出していた。
「黒尾〜私も……」
「はいはい」
あ、と口を開ける名前に新たに取り出した煙草を咥えさせ、ジッポの火を差し向ける。
指で煙草を挟み支えながらフィルター越しに息を吸い込み、煙を吐き出した。
「ふい〜……寝起きにヤニが染みる……」
「ふは、色気もなんもねえ。」
満足気に息を吐いては俺に凭れ掛かってくる。見た目に似合わずオッサン臭い呟きに思わず笑いを零しながら少し抱き寄せた。
「なんかイイと思ったんだよね、付き合ってみない?」と何ともあっさりした告白を受けた俺は、文字通り悪くないと言う理由だけでそれを了承した。
最初は近過ぎず遠すぎない距離感は物凄く心地よくて、それでも時折見せる弱さや甘さにグッと来てしまった俺は「悪くない」からすっかり「名前じゃなきゃいけない」になってしまった。
そんな俺をわかっているのか、もしくは俺と同じになってしまったのか。名前は今ではすっかり俺にベッタリ甘えるようになっていた。し、多分俺もそう。
それに、俺を一番グッと言わせたのはこんな可愛らしい見た目をしていて酒と煙草をかなり嗜むというところだ。所謂ギャップ萌え。
実際昨晩は「夏休み前にパーッと飲みに行こうぜ!」と収集された飲み会に、俺と名前は割安飲みホで酒が飲める上に喫煙席完備という理由だけで参加した。
酒を煽るとチェーンスモーカーになるらしい彼女は、灰皿に塵を増やしながら潰れた同級生を横目にグラスを空けまくる。イマドキの大学生らしい緩く巻かれた茶髪や、小振りのバッグからは想像できないほど飲むし煙草が出てくる。これで酔うペースや消臭までちゃんと気を配っているらしいから擬態は完璧だ。
『んじゃお疲れ様あ〜!』
『ういーお疲れ。』
『ふい〜楽しかった!』
『お前ホントその体のどこにアルコールとニコチンしまってんだよ……』
『ザルなんですよ黒尾クン~~、それよりさあ。』
流石にちょっと酔っちゃったなあ?
なんて、甘えた声で甘い煙草の香りを寄せてくる。
一度だけコイツの泥酔を見たことあるが「好きな物は酒!煙草!セックス!あっははは!」などとほざいていたので昨晩も気分がよかったのだろう、酒の勢いに任せたのか、酔ったフリをしていたのか。
ともかく俺の足を寝室に向かわせるには充分だった。
そして今。
「……どうせだったらもうちょい飲んどけばよかったなあ……」
「ナニ、あんな飲んどいてまだ足んなかったの?」
「だって昨日は!なんかこう……ムラッときちゃって!途中から集中できんかった!」
「そりゃ俺としては光栄デスケド。」
「……今日飲み直」
「さない。」
「ケチ!ひ弱!」
「お前の肝臓が強靭すぎんだよ!」
今日もダメな大学生達は煙を燻らせていた。