日記

寒い夜だから

2025/02/25 19:01
今夜はとても、とても寒い。

窓の桟には白い雪が綿のように積もり、暖炉の薪をいつもより多めに焚べても、部屋の空気はなかなか暖気で満たされず、どこかひんやりしている。

姫様、そのように窓際におられますとより一層冷えます。こちらへいらっしゃいませんか、わ、わ、わたしの……そばへ。

窓の傍らに立って、空から降り落ちる雪を飽きずに眺めているアリーナ様に呼び掛けても、にこにことほほえむだけでちっともわたしのもとへいらしては下さらない。

白くうつくしい雪が、大好きなのだ。北方の王国サントハイムでは珍しくもない、毎年のように山ほど降り積もる雪を、アリーナ様はいつも楽しそうに、嬉しそうに見つめている。

「こっちにおいでよ、クリフト。まっしろできよらかで、とてもきれいよ。

まるで、お前みたい。きれいすぎてずっと見ていられるの」

それは一体、どういう意味なのだろう?

わたしは椅子から立ち上がり、彼女の隣にそっと寄り添う。心臓の動悸がとたんに早まる。部屋の中なのに、吐く息はほんのり白い。窓の外の雪は、絶え間なく降り注いでいる。

こんなにも冷えるのならば、来年からはもっと大きな暖炉に替えなければ。姫様がお風邪を引いてはいけない。寒さのどさくさにまぎれて、いつもよりぴたりと身を寄せてみる。アリーナ様は何も言わず、わたしの肩にことんとほほをくっつける。

耳のそばで、どきどきと鼓動が高鳴る音がした。わたしはぎゅっと目を閉じた。いとしい、なによりもいとおしいこのお方が、わたしのぬくもりですこしでも温まりますように。だって、こんなにも寒い夜だから。

白い雪が冴えざえと光る。夜は長い。春は遠く、雪は降りしきり、サントハイムの冬はまだまだ続くのだ。

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