いつか星が降れば
(神よ、教えて下さい)
まるで解けない魔法にかかったように、心をさらわれたと感じた9才の時から、十字架を前にするたび、一日に一回は必ず自問し続けている答えのない迷い。
いや、本当は答えなんて簡単に出ているのかもしれない。
(わ、わたしは……ヘンタイなのでしょうか)
(自分よりずっと小さな、小ウサギのように無垢な女の子に、もう長いこと恋をしているのです)
(わたしは尊き神の倫理に反している、堕落した存在なのでしょうか……?)
アリーナと同じ年頃の、幼い子供を見ても、当然ながらなにも感じない。
神学校で顔を合わせる、既に女性らしさをたたえはじめた華やかな少女たちにも、眩しさや面映ゆさを感じる事はあっても、胸がときめくような恋心を抱くことは全くない。
共に学ぶ少年たちが、時に色めき立って娘たちの品定めをしたり、好きな相手について、熱心に語り合ったりしているのは知っていた。
けれどそこに一緒に混じって、最もらしい恋愛論をたたかわす気にもなれず、あの娘が可愛い、あの娘は気立てがいいと好き勝手に言い合う友人たちを、クリフトはいつも黙って遠巻きに眺めていた。
第一まだたった10才の、しかもこの国の王女に恋をしているなんて言おうものなら、皆がどんなに驚き呆れ、クリフトを気味悪い奴として扱うようになるか、想像しただけでも恐ろしい。
(ああ、アリーナ様、早く大きくなって下さい)
その日の夜更け、教会の奥に与えられた自分の部屋のベッドに寝そべりながら、仲睦まじく寄り添う自分と少女の姿を、クリフトはぼんやりと脳裏に思い描いた。
例えば自分が17才、アリーナ12才だとしたら。
駄目だ駄目だ、まだまだヘンタイの匂いはぷんぷんする。
じゃあ、20才と15才なら?
うーん、周囲の目がまだ若干気になる、微妙な年頃だと言えるだろう。
ならば、22才と17才。
うん、いけるんじゃないだろうか。
「あと7年の我慢だ、クリフト。
大丈夫、これまでだってもう6年近くも、ずっと片思いして来たんだから」
「何を我慢するの」
その時、背後から幽霊のようなか細い声が聞こえて来て、クリフトはぎょっとした。