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其の五 Listen to ミネア



こ、こんにちは。

どうも……はい、わたしがミネアと申します。

先ほど姉さんに話は伺いました。あなたは吟遊詩人さんなのですね。

なんでも歌の題材探しのために、わたしたち全員に話を聞いているとか。

申し訳ないのですが、わたしは喋るのが苦手で……。折角ですけれどお役には立てないと思いますわ。

ところで、姉はなにかおかしなことをあなたに言いませんでしたか?

そうですか、だったらいいのですが。

考えるより先に口に出してしまう性格の姉なので、彼女の言うことはあまり真に受けないでくださいね。

えっ、わたしが自分に嘘をついていると言っていた?

な、な、なんのことでしょうか。

曲がりなりにもわたしは人々の心の真実を見抜く、占い師を生業として生きる者ですよ。

そんなわたしが、自分に嘘なんてつくわけがないじゃありませんか。

いやだわ、もう。姉さんたら余計なこと言って。あとでバギクロスですね、本当に。

………。

え、目が泳いでるですって?そ、そんなことはありません!

誰も、今でもクリフトさんのことが忘れられなくて、時折水晶玉を使ってはこっそり彼の動向を窺っているなんて、そんなことしていませんから!

……はっ!?

いやあああ!!わたしったらなんてことを!

誰にも言ったことなかったのに!やだ!いやだわ!なんてはしたない……!

お願いです、詩人さん!

今のお話、絶対にみんなには言わないで!

あ、ありがとうございます……。

……そうですわね、こうしてお知り合いになれたのも何かのご縁。

これまでだれにも打ち明ける事が出来なかった胸の内を、今日あなただけに懺悔致しますわ。

実はわたし、つい最近までとある殿方に恋をしていたんです。

そのお方は優しく、慎ましく、いつも穏やかで控えめな物腰を崩さないのですが、ひとたび戦いとなるとその表情はがらりと変わり、蒼いまなざしには不屈の炎が宿り、

聖杖を振りかざし唱える呪文は、生と死を司る大いなる白魔法、彼の通った後には魔物の遺骸すら残らぬという、まことに常人たらざる力をお持ちの方なのです。

ええ、そう!顔もかっこいいんですよ!

勇者さまのような、寸分の隙もない完全無欠の美少年タイプより、わたしはあの方のように、にっこり笑うと優しく目尻が下がる可愛い系のお顔のほうが好みなんです。

背もすんなりと高くって、足も長くって、声も柔らかくって。

まつ毛が長いから、うつむくといつもちょっと眠そうにみえる、後ろ斜め45度からのお顔も素敵。

それにですね詩人さん、聞いて下さいますか?

以前とあるいきさつでお願いしてからというもの、あの方はわたしにだけ、敬語を使わずにお話しになるんです!

わたしにだけですよ!

うふふふふ。

最近はあのかたのお声が聞きたくて、やたらと意味もなく話しかけてしまい、

「ミネアさん、あなたは近頃少しおかしいね」って言われたりもするんですけどね。

でも構いません。

なんの面白みもない記憶に残らない人間であるより、あの方の記憶にしっかりと刻まれる、少しおかしな女のほうがいいんですもの。

そう、引っ込み思案のわたしも、恋をして変わることが出来たんです。

それだけでも、たとえ叶わなくても、人を想うことには大きな価値がある。

詩人さんもそう思われませんか?

そういうわけで、わたしが自分に嘘をついているというのは間違いですわ。

ところであなたのほうこそ、ご自分に嘘をついているということはありませんか?

話を聞いて下さったお礼に、よければわたしが占って差し上げましょう。

ええ、今なら無料で構いませんよ。

さあ、目を閉じて、手を出して。

あなたの心の深淵を覗きます。

隠したって駄目。

このわたしには全てが見える。

神に託されし霊能で、潜めた本音も消せない嘘も、鏡のように全てを見透かす、


天の声聞く千里眼の占い師、ミネア。





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