短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
元々、空模様は怪しかった。予想は的中して部活が始まるや否やゴロゴロと雷鳴が轟き出し。あー……そういや傘がねーな……なんて思いつつストレッチを始めれば赤木主将に「おい、」と肩を叩かれて。オレは「なんスか、キャプテン」と主将の方へゆっくりと振り返る。
「今日、ひかはお前と一緒に来てないのか?」
「あー……なんか、日直があるから先に行っててって言われたっす」
「そうか……」
妙に神妙な顔をする赤木主将に「?どうかしたんすか」と尋ねれば、主将は「いや……、」と一瞬言い淀んだあと、ガリガリと頭を掻きながら再度口を開いた。
「ひかのやつ……小さい頃から雷が大の苦手でな」
「ニガテ…………」
「あぁ。昔は雷が鳴り出すとびーびー泣いてしがみついてきたんだが……もう高校生だしな……まぁ、心配しないでもだいじょ、」
「キャプテン」
「何だ?」
「オレ、腹イテーんで今すぐ便所に行きてぇっす」
大丈夫と言いかけた赤木主将の言葉を半ば遮るようにして、オレはこの場を離れてもいいかとウソの言葉で伺いを立てる。
主将は一瞬目を丸くした後フハッと笑って「ウンコか?」と聞いてきたので、それには「……っス」と頷きだけを返した。
「…………わかった。ゆっくりしてこい」
「あざっす」
ペコリと赤木主将に一礼を返してオレは一気に体育館から駆け出した。
便所は体育館の中にもあるのだから、主将にウソはバレてるだろーけど……主将のあの言い方は「ひかるのことを任せたぞ」って言ってる風にも聞こえたし。……アイツのことを優先してもいいってことだろ。多分。
息せき切って一年七組のドアを開ければ、一見アイツの姿は無かった。
けど……どこかヘンだ。誰もいねー教室なのに、明かりはまだついたまま。中に入ってアイツの机を確認すれば、日誌は置きっぱなしだし、横にはカバンもかかってる。はて……と首を捻れば、ガラガラピシャーン!と派手な雷鳴と稲光に混じって聞こえてきた小さな悲鳴。悲鳴が聞こえてきたのは……教卓からか。
「……………………ひかる?」
「っ、流川……?!」
そっと名前を呼びながら教卓を覗き込めば、真っ青な顔をしたひかるが縮こまって蹲っていた。そうしているとただでさえ小せぇ身体が余計小さく見えるな……と思ったけど、これを言ったらコイツはプンスカ怒るだろうから一応言わないでおく。いや……もしかしたらあえて怒らせた方が気が紛れて好都合か?なんて考えながらひかるに合わせてしゃがみこんだら「流川、アンタ……部活は?」とひかるが震える声で聞いてきた。
「……赤木キャプテンがアンタのことを心配してたから、オレが念の為に様子を見にきた」
ま、ウソは言ってねーだろ。主将がコイツを心配してたのは本当だ。
「ぐ……たけにぃめ、余計なことを…………」
「余計?」
「だって、悔しいじゃんか。アンタに限らず人に弱いところを知ら――ひゃぁ?!」
むくれるひかるの言葉を遮るようにしてまた雷が鳴る。
目をギュッと綴じて怯えるその様は、小動物的な何かを思わせるというか……えーと、なんだ、ヒゴ欲?ってやつを掻き立てられるというか。
……守ってやりてーな、なんて自然と思った。だから、オレは両手を拡げて「ひかる、」と名前を呼んで促してみたんだが……どーもコイツに意図は伝わらなかったようで。「…………なに?」となんだか怪訝な瞳をこっちに向けてくる。
「アンタさ、オレにしがみついとけばいいんじゃねーの」
「な……!」
「キャプテンが言ってたぜ、小さい時のアンタは雷が鳴る度にびーびー泣いてしがみついてきたって」
赤木主将に聞いたままの言葉をさらっと述べればひかるは「あああああもうたけにぃってば一体あたしが何歳の頃の話をしているんだあああああ!!」と喚いたが、何度目だかわからない雷鳴が耳を劈くと同時に「ぎゃん!」と鳴き声にも似た悲鳴をあげてひかるはすっかり沈黙してしまった。
「……なぁ」
「…………。」
「無理すんなよ」
「ムリしてないもん。ヘーキだもん」
「……ウソこけ」
「…………。」
わしゃ、と金色の短い髪を撫でてやれば小さな身体がびくりと跳ね上がる。脱色しているその髪は少しパサついていて、けれども撫でていて何だかとても心地よい。ひかるも、オレの手を跳ね除けることはしなかった。
「あ、」
「?」
暫くの間、そうやってひかるの髪の感触を楽しんで思いついた妙案。
オレはひかるの頭から手を離すと、細い腕をおもむろに掴んで、小さな身体をぐいっと強引に引き寄せる。
「?!ちょ、ちょっと流川!?」
「……オレが、アンタを抱きしめてみたくなった」
「は?!」
「そーいうことにしといてやるから。アンタはもうそのまま大人しくしとけ」
そう言って背中をポンポンとさすってやれば「うぐぅ〜〜……!」とどこか悔しそうな呻き声が聞こえてきたがそれもいつしか聞こえなくなり。
コイツ……あったけーなー……と伝わる体温に微睡めば「………………ありがと、流川」と蚊の鳴くような声で礼を述べられた。
「今日、ひかはお前と一緒に来てないのか?」
「あー……なんか、日直があるから先に行っててって言われたっす」
「そうか……」
妙に神妙な顔をする赤木主将に「?どうかしたんすか」と尋ねれば、主将は「いや……、」と一瞬言い淀んだあと、ガリガリと頭を掻きながら再度口を開いた。
「ひかのやつ……小さい頃から雷が大の苦手でな」
「ニガテ…………」
「あぁ。昔は雷が鳴り出すとびーびー泣いてしがみついてきたんだが……もう高校生だしな……まぁ、心配しないでもだいじょ、」
「キャプテン」
「何だ?」
「オレ、腹イテーんで今すぐ便所に行きてぇっす」
大丈夫と言いかけた赤木主将の言葉を半ば遮るようにして、オレはこの場を離れてもいいかとウソの言葉で伺いを立てる。
主将は一瞬目を丸くした後フハッと笑って「ウンコか?」と聞いてきたので、それには「……っス」と頷きだけを返した。
「…………わかった。ゆっくりしてこい」
「あざっす」
ペコリと赤木主将に一礼を返してオレは一気に体育館から駆け出した。
便所は体育館の中にもあるのだから、主将にウソはバレてるだろーけど……主将のあの言い方は「ひかるのことを任せたぞ」って言ってる風にも聞こえたし。……アイツのことを優先してもいいってことだろ。多分。
息せき切って一年七組のドアを開ければ、一見アイツの姿は無かった。
けど……どこかヘンだ。誰もいねー教室なのに、明かりはまだついたまま。中に入ってアイツの机を確認すれば、日誌は置きっぱなしだし、横にはカバンもかかってる。はて……と首を捻れば、ガラガラピシャーン!と派手な雷鳴と稲光に混じって聞こえてきた小さな悲鳴。悲鳴が聞こえてきたのは……教卓からか。
「……………………ひかる?」
「っ、流川……?!」
そっと名前を呼びながら教卓を覗き込めば、真っ青な顔をしたひかるが縮こまって蹲っていた。そうしているとただでさえ小せぇ身体が余計小さく見えるな……と思ったけど、これを言ったらコイツはプンスカ怒るだろうから一応言わないでおく。いや……もしかしたらあえて怒らせた方が気が紛れて好都合か?なんて考えながらひかるに合わせてしゃがみこんだら「流川、アンタ……部活は?」とひかるが震える声で聞いてきた。
「……赤木キャプテンがアンタのことを心配してたから、オレが念の為に様子を見にきた」
ま、ウソは言ってねーだろ。主将がコイツを心配してたのは本当だ。
「ぐ……たけにぃめ、余計なことを…………」
「余計?」
「だって、悔しいじゃんか。アンタに限らず人に弱いところを知ら――ひゃぁ?!」
むくれるひかるの言葉を遮るようにしてまた雷が鳴る。
目をギュッと綴じて怯えるその様は、小動物的な何かを思わせるというか……えーと、なんだ、ヒゴ欲?ってやつを掻き立てられるというか。
……守ってやりてーな、なんて自然と思った。だから、オレは両手を拡げて「ひかる、」と名前を呼んで促してみたんだが……どーもコイツに意図は伝わらなかったようで。「…………なに?」となんだか怪訝な瞳をこっちに向けてくる。
「アンタさ、オレにしがみついとけばいいんじゃねーの」
「な……!」
「キャプテンが言ってたぜ、小さい時のアンタは雷が鳴る度にびーびー泣いてしがみついてきたって」
赤木主将に聞いたままの言葉をさらっと述べればひかるは「あああああもうたけにぃってば一体あたしが何歳の頃の話をしているんだあああああ!!」と喚いたが、何度目だかわからない雷鳴が耳を劈くと同時に「ぎゃん!」と鳴き声にも似た悲鳴をあげてひかるはすっかり沈黙してしまった。
「……なぁ」
「…………。」
「無理すんなよ」
「ムリしてないもん。ヘーキだもん」
「……ウソこけ」
「…………。」
わしゃ、と金色の短い髪を撫でてやれば小さな身体がびくりと跳ね上がる。脱色しているその髪は少しパサついていて、けれども撫でていて何だかとても心地よい。ひかるも、オレの手を跳ね除けることはしなかった。
「あ、」
「?」
暫くの間、そうやってひかるの髪の感触を楽しんで思いついた妙案。
オレはひかるの頭から手を離すと、細い腕をおもむろに掴んで、小さな身体をぐいっと強引に引き寄せる。
「?!ちょ、ちょっと流川!?」
「……オレが、アンタを抱きしめてみたくなった」
「は?!」
「そーいうことにしといてやるから。アンタはもうそのまま大人しくしとけ」
そう言って背中をポンポンとさすってやれば「うぐぅ〜〜……!」とどこか悔しそうな呻き声が聞こえてきたがそれもいつしか聞こえなくなり。
コイツ……あったけーなー……と伝わる体温に微睡めば「………………ありがと、流川」と蚊の鳴くような声で礼を述べられた。