本編
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「…………寝れねー」
土曜夜――流川は布団の中で一人むむむと唸っていた。
寝るのがシュミだと豪語するくらいには寝ることが好きな筈なのに眠れないとは。これまで小学校の遠足の前日だって、バスケットの試合の前日だって、布団に入れば秒で眠れたというのに。
ドキドキワクワクして眠れねーなんてコト、本当にあるんだな……と流川は布団で寝返りを打つ。成り行きとはいえ、知り合った当日にデートの約束までこぎつけるとは思わなかった。
明日はひかると何をしよう。膝が悪いというなら、走ったりしないでも楽しめるものがいいだろうか。そもそも、1on1は体格差でひかるが上手く楽しめなさそうだしな、と流川は考える。
(そうだ。フリースロー勝負とかいーかもしんねぇ)
――本当に明日が楽しみだ。
何だか自然と口元が緩んでしまう。そのまま流川はゆっくりと瞼を閉じた。――このままの気持ちで眠ればいい夢が見られそうだ。
そうして迎えた日曜日――待ちきれなくて約束の時間の一時間前から流川が一人シュート練習に励めば、十時丁度くらいにひかるが姿を現した。
「よう……ってアレっ、もしや結構待たせた?」
「そうでもねー」
「いや……既にだいぶ汗かいてんじゃん……?」
ひかるの言葉に流川は「気のせー」と言いつつ、Tシャツの袖で乱雑に汗を拭う。
いやそれ絶対気のせいじゃねーだろ、とひかるは思ったが……これ以上言及しないことにしておいた。
「で……何する?痛み止め飲んできたし、1on1もできなくはねーと思うけど」
「フリースロー勝負とか、どう」
「おっ、いーね。負けた方が昼飯でマック奢りとかどーよ」
「上等だ」
二人は互いに負けねーぞと言いながらどちらが先攻かを決めるジャンケンをする。――先攻はひかるだ。
「まずは――1点頂き!」
言いながらボールを構えるひかるの姿に、流川の目は釘付けになる。流れるように滑らかなシュートフォームはまるでスローモーションのように感じられ――とても綺麗だ。今まで遠くでしか見たことがなかった光景を間近で見られることに胸がギュッとなる。
そうして――放られたボールは放物線を描きシュパッとネットに吸い込まれて――
「……ナイッシュ」
「とーぜん!」
流川がハイタッチの構えを取ればその手は機嫌良くパチン!と打ち鳴らされた。
「いやー……負けたわ」
「トーゼンだろ。好きなヤツ相手でもバスケットで負けるつもりはねー」
勝負を終えて――二人は駅前のマクドナルドまで移動し、今はレジに並んで何を食べるかを思案している最中だった。
「――で、流川何食うの」
「オレはビッグマックのセットでコーラのLサイズと単品でチーズバーガー」
「ふぅん。じゃーあたしはテリヤキのセットでファンタグレープにしよーかな」
「そっちはオレが奢る」
「それじゃ賭けの意味ねーじゃん?!」
「好きなヤツのメシくれー奢らせろ」
それに、トータルで言えばオレのが高ぇと言いながら流川はとっととレジでテリヤキのセットを注文してしまった。
むぅ……とひかるは唸りつつも流川のビッグマックのセットとチーズバーガーを注文する。
二人の勝負は結局フリースローだけでは互角のままの平行線を辿り……痺れを切らしたひかるが流川に1on1を挑み、そして負けを喫する形で幕を閉じた。
「……負けた割には楽しそーだな、アンタ」
「だって、久しぶりのバスケットだったんだもん。――楽しくないワケがないじゃん」
席に着き、ひかるはガサガサとテリヤキバーガーの包みを剥くと、大きく口を開けてそれにかぶりつく。ジャンキーな甘辛い味が口いっぱいに広がってゆくのが堪らない。それに……思いっきり身体を動かした後に食べるテリヤキバーガーは格別だ。
そんなひかるへと、流川はポテトを頬張りながら「……バスケット、楽しめるなら……女バスに入部すんのもありじゃねーの、うちの女バス、結構ユルいってクラスのヤツが言ってたぜ」と語りかけた。
ひかるはその言葉に小さく首を横に振り、「……部活ってなったら、いくらユルくったって遊びじゃないじゃん」と否定を返すと流川の目を真っ直ぐに見つめる。
「それに……うちのガッコはユルいかもだけど、相手はそーじゃねーかもだし、全力を出せないなんて相手に対してとても失礼だ。何よりそんなの……あたしがあたしを許せない」
凛とした声に、周囲のざわめきが一瞬聞こえなくなる程だった。ひかるの目に宿るのは誇りと気高さ。それらに流川は一瞬圧倒された。
――あぁ、きっと……こういうところだ。オレがひかるに惚れて、惹かれたのは。
「…………ずりーな、アンタ」
「は?何が、」
「今の言葉で、ますます惚れた」
――流川の言葉に、ひかるの飲んでいたファンタグレープがゴフッと犠牲になった。
土曜夜――流川は布団の中で一人むむむと唸っていた。
寝るのがシュミだと豪語するくらいには寝ることが好きな筈なのに眠れないとは。これまで小学校の遠足の前日だって、バスケットの試合の前日だって、布団に入れば秒で眠れたというのに。
ドキドキワクワクして眠れねーなんてコト、本当にあるんだな……と流川は布団で寝返りを打つ。成り行きとはいえ、知り合った当日にデートの約束までこぎつけるとは思わなかった。
明日はひかると何をしよう。膝が悪いというなら、走ったりしないでも楽しめるものがいいだろうか。そもそも、1on1は体格差でひかるが上手く楽しめなさそうだしな、と流川は考える。
(そうだ。フリースロー勝負とかいーかもしんねぇ)
――本当に明日が楽しみだ。
何だか自然と口元が緩んでしまう。そのまま流川はゆっくりと瞼を閉じた。――このままの気持ちで眠ればいい夢が見られそうだ。
そうして迎えた日曜日――待ちきれなくて約束の時間の一時間前から流川が一人シュート練習に励めば、十時丁度くらいにひかるが姿を現した。
「よう……ってアレっ、もしや結構待たせた?」
「そうでもねー」
「いや……既にだいぶ汗かいてんじゃん……?」
ひかるの言葉に流川は「気のせー」と言いつつ、Tシャツの袖で乱雑に汗を拭う。
いやそれ絶対気のせいじゃねーだろ、とひかるは思ったが……これ以上言及しないことにしておいた。
「で……何する?痛み止め飲んできたし、1on1もできなくはねーと思うけど」
「フリースロー勝負とか、どう」
「おっ、いーね。負けた方が昼飯でマック奢りとかどーよ」
「上等だ」
二人は互いに負けねーぞと言いながらどちらが先攻かを決めるジャンケンをする。――先攻はひかるだ。
「まずは――1点頂き!」
言いながらボールを構えるひかるの姿に、流川の目は釘付けになる。流れるように滑らかなシュートフォームはまるでスローモーションのように感じられ――とても綺麗だ。今まで遠くでしか見たことがなかった光景を間近で見られることに胸がギュッとなる。
そうして――放られたボールは放物線を描きシュパッとネットに吸い込まれて――
「……ナイッシュ」
「とーぜん!」
流川がハイタッチの構えを取ればその手は機嫌良くパチン!と打ち鳴らされた。
「いやー……負けたわ」
「トーゼンだろ。好きなヤツ相手でもバスケットで負けるつもりはねー」
勝負を終えて――二人は駅前のマクドナルドまで移動し、今はレジに並んで何を食べるかを思案している最中だった。
「――で、流川何食うの」
「オレはビッグマックのセットでコーラのLサイズと単品でチーズバーガー」
「ふぅん。じゃーあたしはテリヤキのセットでファンタグレープにしよーかな」
「そっちはオレが奢る」
「それじゃ賭けの意味ねーじゃん?!」
「好きなヤツのメシくれー奢らせろ」
それに、トータルで言えばオレのが高ぇと言いながら流川はとっととレジでテリヤキのセットを注文してしまった。
むぅ……とひかるは唸りつつも流川のビッグマックのセットとチーズバーガーを注文する。
二人の勝負は結局フリースローだけでは互角のままの平行線を辿り……痺れを切らしたひかるが流川に1on1を挑み、そして負けを喫する形で幕を閉じた。
「……負けた割には楽しそーだな、アンタ」
「だって、久しぶりのバスケットだったんだもん。――楽しくないワケがないじゃん」
席に着き、ひかるはガサガサとテリヤキバーガーの包みを剥くと、大きく口を開けてそれにかぶりつく。ジャンキーな甘辛い味が口いっぱいに広がってゆくのが堪らない。それに……思いっきり身体を動かした後に食べるテリヤキバーガーは格別だ。
そんなひかるへと、流川はポテトを頬張りながら「……バスケット、楽しめるなら……女バスに入部すんのもありじゃねーの、うちの女バス、結構ユルいってクラスのヤツが言ってたぜ」と語りかけた。
ひかるはその言葉に小さく首を横に振り、「……部活ってなったら、いくらユルくったって遊びじゃないじゃん」と否定を返すと流川の目を真っ直ぐに見つめる。
「それに……うちのガッコはユルいかもだけど、相手はそーじゃねーかもだし、全力を出せないなんて相手に対してとても失礼だ。何よりそんなの……あたしがあたしを許せない」
凛とした声に、周囲のざわめきが一瞬聞こえなくなる程だった。ひかるの目に宿るのは誇りと気高さ。それらに流川は一瞬圧倒された。
――あぁ、きっと……こういうところだ。オレがひかるに惚れて、惹かれたのは。
「…………ずりーな、アンタ」
「は?何が、」
「今の言葉で、ますます惚れた」
――流川の言葉に、ひかるの飲んでいたファンタグレープがゴフッと犠牲になった。