本編
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コンビニでのバイトを終えて「おつかれっしたー」とひかるが外に出れば足元から「おう。おつかれ」と聞き覚えのある低音が耳に届いて。ひかるは思わず「おゎっ?!」と素っ頓狂な声を上げてしまった。
「るっ流川?!なんっでアンタがココにいるんだよ?!」
「……赤木主将にアンタのバイト先聞いた」
「たっ、たけにぃ……!」
あたしのプライバシーを軽々しく話すな!とひかるの従兄弟であり、流川たちの主将でもある赤木剛憲の所業に頭を抱えつつ、「で、今度は何の用だよ…………」とコンビニ前でしゃがみこんでいる流川にひかるがジトっとした視線を送れば、流川は腰を上げながら事も無げに「迎えにきた」と返してきて。
「…………迎え?」
「こんな時間にアンタ一人で帰んの、あぶねーだろ。十時過ぎだし」
「いや……子どもじゃねーんだし……」
「子どもじゃなくても女だろ」
「まぁ…………それはそうだけどさぁ……」
これは……何を言っても折れなさそうだ。流川楓という人間は頑固であるらしい。
ひかるは深くため息を吐くと「うち、コッチ。流石に道までは知んねーだろ」と諦めて送ってもらうことにした。
「そういやさぁ、昔の歌で男は狼なのよ♪ってあったけど……、アンタが送り狼になるなんてオチじゃねーだろうなぁ?」
「アンタに好かれてーのに嫌われるコトなんてするワケねーだろ。まー、オレ以外の男はオオカミかもしんねーけど」
春先、夜風はまだ少々冷たいが、軽口を叩き合うこの空気感は妙に心地よい。
最初の告白こそ最悪ではあったが……実はそんなに悪いヤツでもないのだろうか。でも。
「……ヘンなヤツだよなぁ」
「誰がだ?」
「アンタ以外に誰がいる」
「……初めて言われた」
「あたしの幼なじみ曰く、あたしに惚れてる時点で変わってるってよ」
実際、告白なんて初めてされたのだ。どちらかと言えば男勝りで言動も乱暴、しかもつるんでるのは洋平や花道といった強面の不良たちじゃそりゃ並大抵の男は寄ってこないよなという自覚はひかるにもあった。
しかし流川は「そんなことねーだろ」とサラッと返す。
「ひかる、すげーかわいーってオレは思う」
「…………初めて言われたわ」
「そうか?」
「どっちかってーとかわいげがねーってよく言われるけどな」
「フーン……そいつら見る目ねーな」
……今が夜で良かったとひかるは心底思った。顔が熱い。「かわいい」というたったひと言で逆上せるくらい顔が熱くなるなんて思わなかった。何だかむず痒い気持ちだ。どうにもいたたまれなくなってしまったひかるは「つーか、今日の部活ってどーだった?」と半ば無理やりに話題を切り替えた。
「……あの後、上級生と一年生で試合したんだけどよ……桜木のやつ、赤木主将の頭にダンクシュートぶちかましてた」
「マジ?!なにそれ超ウケんだけど!えー、見たかったなー!」
ひかるがお腹を抱えてケラケラと爆笑すれば流川は「……ほら。やっぱかわいーじゃねーか」と言い出して。
「何言ってんだよ……っ」
「……笑った顔。めちゃくちゃかわいー」
「うぐ……あんまかわいーかわいー言うな…………恥ずかしくなる」
「ナルホド……照れた顔もかわいーんだな」
「言ってるそばからまた言うか?!」
「だって、ホントのコトだしよ」
切り替えたつもりが切り替わらなかった話題に#ひかるがぐぬぬ……と唸れば唐突に流川が「トモダチって、いーもんだな」と言い出した。
「い、いきなり何」
「いや……試合見てるだけの時だけじゃ知らなかったひかるの顔いっぱい見れるから。何か得した気分だなーってよ」
「……そーかよ」
今のこの真っ赤になっているであろう顔は見られたくねーんだけどな、とひかるは素っ気なく返す。
すると、流川は「……トモダチってことは、遊びに誘ってもいーんだよな?」と唐突に切り出してきた。
「えっ。あー……まぁ、いーけど」
「そしたら、明後日の日曜日とかどう」
「うん、空いてる。……何して遊ぶ?」
どっか行きてー場所とかあんの、とひかるが問いかければ流川は声を詰まらせる。
「…………考えてなかった」
「詰めが甘くねぇ?」
「や……オレ、今までバスケットばっかで…………トモダチと遊ぶってコト、あんましてこなかったからよ……」
「一周まわって面白いな、アンタ……割と嫌いじゃねーわ。じゃーさ、バスケットでいーじゃん」
「え?」
「バスケットゴールがある公園で遊ぼうぜ。やだ?」
「イヤじゃねぇけど……いーのか?」
ひかるの膝を気遣ってるのか、流川は神妙な面持ちで伺いを立てる。ひかるはそんな流川の心情を見透かすようにハッと一笑に付した。
「……遊びだし。膝に負担かかんねー程度にやるからヘーキだよ。ぶっちゃけ、今日の部活見て久しぶりにボール触りたくなったんだ」
……言いながらひかるの中に、思いっきり動けないあたしに幻滅するならすればいい、などという底意地の悪い考えが湧き上がる。
出会ったばかりだというのに、気持ちはどこか彼に傾きつつあった。だからこそ――傷を負うなら浅い方がいいとひかるは自分の膝に視線を落とす。
(取り返しがつかないのは――もうゴメンだ)
それからぱっと顔を上げて「あたしんち、もうすぐそこだからさ、ここまででいーよ。日曜日は十時に公園でよろしく!」と自分の感情を隠すように明るい笑顔を作ると家へと駆け出した。
後に残された流川は一瞬その笑顔に違和感を覚えるも、違和感の正体まではわからないままだった。
「るっ流川?!なんっでアンタがココにいるんだよ?!」
「……赤木主将にアンタのバイト先聞いた」
「たっ、たけにぃ……!」
あたしのプライバシーを軽々しく話すな!とひかるの従兄弟であり、流川たちの主将でもある赤木剛憲の所業に頭を抱えつつ、「で、今度は何の用だよ…………」とコンビニ前でしゃがみこんでいる流川にひかるがジトっとした視線を送れば、流川は腰を上げながら事も無げに「迎えにきた」と返してきて。
「…………迎え?」
「こんな時間にアンタ一人で帰んの、あぶねーだろ。十時過ぎだし」
「いや……子どもじゃねーんだし……」
「子どもじゃなくても女だろ」
「まぁ…………それはそうだけどさぁ……」
これは……何を言っても折れなさそうだ。流川楓という人間は頑固であるらしい。
ひかるは深くため息を吐くと「うち、コッチ。流石に道までは知んねーだろ」と諦めて送ってもらうことにした。
「そういやさぁ、昔の歌で男は狼なのよ♪ってあったけど……、アンタが送り狼になるなんてオチじゃねーだろうなぁ?」
「アンタに好かれてーのに嫌われるコトなんてするワケねーだろ。まー、オレ以外の男はオオカミかもしんねーけど」
春先、夜風はまだ少々冷たいが、軽口を叩き合うこの空気感は妙に心地よい。
最初の告白こそ最悪ではあったが……実はそんなに悪いヤツでもないのだろうか。でも。
「……ヘンなヤツだよなぁ」
「誰がだ?」
「アンタ以外に誰がいる」
「……初めて言われた」
「あたしの幼なじみ曰く、あたしに惚れてる時点で変わってるってよ」
実際、告白なんて初めてされたのだ。どちらかと言えば男勝りで言動も乱暴、しかもつるんでるのは洋平や花道といった強面の不良たちじゃそりゃ並大抵の男は寄ってこないよなという自覚はひかるにもあった。
しかし流川は「そんなことねーだろ」とサラッと返す。
「ひかる、すげーかわいーってオレは思う」
「…………初めて言われたわ」
「そうか?」
「どっちかってーとかわいげがねーってよく言われるけどな」
「フーン……そいつら見る目ねーな」
……今が夜で良かったとひかるは心底思った。顔が熱い。「かわいい」というたったひと言で逆上せるくらい顔が熱くなるなんて思わなかった。何だかむず痒い気持ちだ。どうにもいたたまれなくなってしまったひかるは「つーか、今日の部活ってどーだった?」と半ば無理やりに話題を切り替えた。
「……あの後、上級生と一年生で試合したんだけどよ……桜木のやつ、赤木主将の頭にダンクシュートぶちかましてた」
「マジ?!なにそれ超ウケんだけど!えー、見たかったなー!」
ひかるがお腹を抱えてケラケラと爆笑すれば流川は「……ほら。やっぱかわいーじゃねーか」と言い出して。
「何言ってんだよ……っ」
「……笑った顔。めちゃくちゃかわいー」
「うぐ……あんまかわいーかわいー言うな…………恥ずかしくなる」
「ナルホド……照れた顔もかわいーんだな」
「言ってるそばからまた言うか?!」
「だって、ホントのコトだしよ」
切り替えたつもりが切り替わらなかった話題に#ひかるがぐぬぬ……と唸れば唐突に流川が「トモダチって、いーもんだな」と言い出した。
「い、いきなり何」
「いや……試合見てるだけの時だけじゃ知らなかったひかるの顔いっぱい見れるから。何か得した気分だなーってよ」
「……そーかよ」
今のこの真っ赤になっているであろう顔は見られたくねーんだけどな、とひかるは素っ気なく返す。
すると、流川は「……トモダチってことは、遊びに誘ってもいーんだよな?」と唐突に切り出してきた。
「えっ。あー……まぁ、いーけど」
「そしたら、明後日の日曜日とかどう」
「うん、空いてる。……何して遊ぶ?」
どっか行きてー場所とかあんの、とひかるが問いかければ流川は声を詰まらせる。
「…………考えてなかった」
「詰めが甘くねぇ?」
「や……オレ、今までバスケットばっかで…………トモダチと遊ぶってコト、あんましてこなかったからよ……」
「一周まわって面白いな、アンタ……割と嫌いじゃねーわ。じゃーさ、バスケットでいーじゃん」
「え?」
「バスケットゴールがある公園で遊ぼうぜ。やだ?」
「イヤじゃねぇけど……いーのか?」
ひかるの膝を気遣ってるのか、流川は神妙な面持ちで伺いを立てる。ひかるはそんな流川の心情を見透かすようにハッと一笑に付した。
「……遊びだし。膝に負担かかんねー程度にやるからヘーキだよ。ぶっちゃけ、今日の部活見て久しぶりにボール触りたくなったんだ」
……言いながらひかるの中に、思いっきり動けないあたしに幻滅するならすればいい、などという底意地の悪い考えが湧き上がる。
出会ったばかりだというのに、気持ちはどこか彼に傾きつつあった。だからこそ――傷を負うなら浅い方がいいとひかるは自分の膝に視線を落とす。
(取り返しがつかないのは――もうゴメンだ)
それからぱっと顔を上げて「あたしんち、もうすぐそこだからさ、ここまででいーよ。日曜日は十時に公園でよろしく!」と自分の感情を隠すように明るい笑顔を作ると家へと駆け出した。
後に残された流川は一瞬その笑顔に違和感を覚えるも、違和感の正体まではわからないままだった。