本編
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放課後――人の口に戸は立てられぬとはこの事かとひかるはウンザリしていた。
何せ、昼休みの告白騒ぎの所為でひっきりなしに野次馬が訪れては遠巻きに好奇の目を向けてくるのだ。挙句の果てには何やら陰口めいたひそめきまで時折聞こえてくる。
その様にひかるが「あー…………ウザい……」と独り言ちれば「はは、おつかれ」と幼馴染の水戸洋平が憐れむように声を掛けてきた。
「ひかに告ってきたアイツ、どーやらすげーモテるみてーだからなァ」
「そなの?」
「あー、おまえ男バス見に来てねーから知んねーか。アイツ目当てに女どもが体育館にウヨウヨ群がるレベルだぜ」
「へー……人前で告ってくるような変人なのにね」
「挙句、告った相手がおまえだしな」
「どーゆー意味だよ」
「そのまんまの意味だよ」
「殴んぞ」
「いっで!そーゆーとこだっつーの!」
古馴染み故の遠慮の無さで二人がじゃれ合いに興じれば野次馬をかき分けて流川がヌッと顔を出す。
「おっ、ウワサをすればダンナの登場だ」
「ダンナじゃねーしトモダチだし!」
「あだっ!いちいち殴るんじゃねーよ!」
ひかるが洋平へとキツめの一撃を見舞えば「赤木ひかるサン……ちょっといいか?」と傍に寄ってきた流川におずおずと話しかけられた。
「いいけど…………なんでフルネームだよ」
「や……なんて呼べばいーかわかんなくて、」
「フツーでいーよフツーで」
「…………じゃぁ、ひかる……って呼んでもいいか」
「おう、じゃーあたしもアンタのこと流川って呼ぶわ。で、流川なんの用だよ」
「えっと……。…………部活、見に来ねぇ?」
トモダチなら……誘ってもいーかって思ったんだけどよ……と照れくささからか語尾を萎ませる流川にひかるは目を丸くして、それから「部活かぁ……」と小さく唸る。
「…………イヤか?」
「あー……違う。ちょっと気になるヤツもいるし……見に行ってみてーんだけど…………今日これからバイトなんだよ」
「気になるヤツ?」
「ただのダチなんだけどね。……ソイツが入部するキッカケ作ったの、半分くらいあたしの所為だったから、マジメにやってんのか気になってさ」
「………………。」
〝ただのダチ〟とは言うもひかるの言う〝気になるヤツ〟が気になって流川の眉間にシワが寄った。誰なんだソイツは。気にはなるがそれが誰なのかを聞いていいものかと流川が思い悩めば「…………15分くれーなら見れるかな」とひかるは呟く。
「15分」
「ま、それだとほんと一瞬顔出すだけなんだけどさ。……それでもいい?」
「ん。嬉しい。……サンキュ」
じゃ、体育館でと片手を上げる流川にひかるがヒラヒラと手を振り替えせば、洋平に「どーいった心境の変化だ?」と肩を叩かれた。
「何がだよ」
「いや、今まで花道からかいに行こうぜって誘っても頑なに見にこなかったじゃねーかよ、バスケット部」
「…………別に、単なる気まぐれだよ」
自分でも上手く言い表せない感情の変化を少し濁してひかるは席を立つ。
ただ……自分の中に有ったわだかまりを少しでも吹き飛ばしたのは……あの時流川に魅せられたダンクシュートの所為なのだろうな、とひかるは感じ取っていた。
ひかるが体育館を覗き込めばちょうど部員たちのランニングが終わってパス練を始めた頃だった。
周囲には自分以外にも女生徒が複数人居て、「流川クーン♡ガンバッテ!!」と黄色い声を飛ばしている。その光景にアイツがモテるっていうのはホントだったのか……とひかるは少々引いてしまった。
(当たり前だけど、流川はマジメに練習してんな)
集中してるなら余計な声掛けは不要か、と流川の事は見るだけに留め、悪友 はどうかね……とひかるがもう一人の目当てに視線を移そうとすれば「ひかちゃん!」と声を掛けられた。――従姉妹の赤木晴子の声だ。
「ひかちゃんが練習見に来るなんて珍しいわね!お兄ちゃんの応援?それとも桜木くん?」
「んー。応援っつーか。花道の様子見かな……マジメにやってんのかなーって」
他愛ない雑談を交わしつつ、あの告白が仲の良い従姉妹の耳にはまだ入ってない様子でひかるはちょっとだけホッとした。
「桜木くん、ちゃんとマジメに練習してるわよう!ほら!」
晴子の指差す先を見れば体育館の隅っこでダムダムダムダムとドリブルの基礎練習に励む赤毛のリーゼントが目に入る。
「練習……してるはしてるけど……不満そうだなー」とひかるが苦笑を落とせば花道がそれに気づいたのか「げ!」と声を上げた。
「ひか!おめーなにしにきたんだよ!!」
「えー?花道をおちょく……いや、ガンバッテンノカナーって様子を見に?」
「あっテメ今おちょくりって言おうとしたな?!」
「ナンノコトヤラー」
雑な誤魔化しでひかるがうぷぷと笑えば花道はふんぬーと鼻息を荒くしたが、ひかるは「ほらほらー、腰が上がってるー。つーか無駄話しねーでちゃんとやれって」とそれを軽くいなす。
その様子を密かに眺めていた流川はダチってよりにもよってアイツかよ……と唇を尖らせた。
「あっ、やべ……あたしそろそろ行かなきゃだ」
「えっ、ひかちゃんもう行っちゃうの?」
「うん、今日あたしバイトなんだよね」
じゃーね晴ちゃん、と体育館を後にしようとすれば流川もそれに気づき小さく手を振ってきたのでひかるは控えめに手を振り返し、体育館を後にした。
(それにしても……花道思ったよりもマジメに練習してたな)
――中学卒業間際、告白した女子に『ゴメンなさい桜木君、あたしバスケット部の小田くんが好きなの』と振られて以来、落ち込みに落ち込んでバスケットを目の敵にしていた花道のことをひかるは不意に思い出す。
高校に入学して以降も立ち直れない花道に苛立ち混じりの煩わしさを覚えたひかるはならばショック療法だと晴子に花道のことを話し――晴子から花道をバスケット部に誘うように仕向けたのだが。
(まーさかあんなに上手くいくとは思わなかったよなー)
花道の好みがあまりにもわかりやすすぎる所為で上手くいった作戦だったかもなーとひかるは苦笑いを零した。
願わくば――今回こそは大事な悪友の想いが報われて欲しいところだが……それは花道次第なんだろうな、と思いながらひかるはバイト先へと足を運んだ。
何せ、昼休みの告白騒ぎの所為でひっきりなしに野次馬が訪れては遠巻きに好奇の目を向けてくるのだ。挙句の果てには何やら陰口めいたひそめきまで時折聞こえてくる。
その様にひかるが「あー…………ウザい……」と独り言ちれば「はは、おつかれ」と幼馴染の水戸洋平が憐れむように声を掛けてきた。
「ひかに告ってきたアイツ、どーやらすげーモテるみてーだからなァ」
「そなの?」
「あー、おまえ男バス見に来てねーから知んねーか。アイツ目当てに女どもが体育館にウヨウヨ群がるレベルだぜ」
「へー……人前で告ってくるような変人なのにね」
「挙句、告った相手がおまえだしな」
「どーゆー意味だよ」
「そのまんまの意味だよ」
「殴んぞ」
「いっで!そーゆーとこだっつーの!」
古馴染み故の遠慮の無さで二人がじゃれ合いに興じれば野次馬をかき分けて流川がヌッと顔を出す。
「おっ、ウワサをすればダンナの登場だ」
「ダンナじゃねーしトモダチだし!」
「あだっ!いちいち殴るんじゃねーよ!」
ひかるが洋平へとキツめの一撃を見舞えば「赤木ひかるサン……ちょっといいか?」と傍に寄ってきた流川におずおずと話しかけられた。
「いいけど…………なんでフルネームだよ」
「や……なんて呼べばいーかわかんなくて、」
「フツーでいーよフツーで」
「…………じゃぁ、ひかる……って呼んでもいいか」
「おう、じゃーあたしもアンタのこと流川って呼ぶわ。で、流川なんの用だよ」
「えっと……。…………部活、見に来ねぇ?」
トモダチなら……誘ってもいーかって思ったんだけどよ……と照れくささからか語尾を萎ませる流川にひかるは目を丸くして、それから「部活かぁ……」と小さく唸る。
「…………イヤか?」
「あー……違う。ちょっと気になるヤツもいるし……見に行ってみてーんだけど…………今日これからバイトなんだよ」
「気になるヤツ?」
「ただのダチなんだけどね。……ソイツが入部するキッカケ作ったの、半分くらいあたしの所為だったから、マジメにやってんのか気になってさ」
「………………。」
〝ただのダチ〟とは言うもひかるの言う〝気になるヤツ〟が気になって流川の眉間にシワが寄った。誰なんだソイツは。気にはなるがそれが誰なのかを聞いていいものかと流川が思い悩めば「…………15分くれーなら見れるかな」とひかるは呟く。
「15分」
「ま、それだとほんと一瞬顔出すだけなんだけどさ。……それでもいい?」
「ん。嬉しい。……サンキュ」
じゃ、体育館でと片手を上げる流川にひかるがヒラヒラと手を振り替えせば、洋平に「どーいった心境の変化だ?」と肩を叩かれた。
「何がだよ」
「いや、今まで花道からかいに行こうぜって誘っても頑なに見にこなかったじゃねーかよ、バスケット部」
「…………別に、単なる気まぐれだよ」
自分でも上手く言い表せない感情の変化を少し濁してひかるは席を立つ。
ただ……自分の中に有ったわだかまりを少しでも吹き飛ばしたのは……あの時流川に魅せられたダンクシュートの所為なのだろうな、とひかるは感じ取っていた。
ひかるが体育館を覗き込めばちょうど部員たちのランニングが終わってパス練を始めた頃だった。
周囲には自分以外にも女生徒が複数人居て、「流川クーン♡ガンバッテ!!」と黄色い声を飛ばしている。その光景にアイツがモテるっていうのはホントだったのか……とひかるは少々引いてしまった。
(当たり前だけど、流川はマジメに練習してんな)
集中してるなら余計な声掛けは不要か、と流川の事は見るだけに留め、
「ひかちゃんが練習見に来るなんて珍しいわね!お兄ちゃんの応援?それとも桜木くん?」
「んー。応援っつーか。花道の様子見かな……マジメにやってんのかなーって」
他愛ない雑談を交わしつつ、あの告白が仲の良い従姉妹の耳にはまだ入ってない様子でひかるはちょっとだけホッとした。
「桜木くん、ちゃんとマジメに練習してるわよう!ほら!」
晴子の指差す先を見れば体育館の隅っこでダムダムダムダムとドリブルの基礎練習に励む赤毛のリーゼントが目に入る。
「練習……してるはしてるけど……不満そうだなー」とひかるが苦笑を落とせば花道がそれに気づいたのか「げ!」と声を上げた。
「ひか!おめーなにしにきたんだよ!!」
「えー?花道をおちょく……いや、ガンバッテンノカナーって様子を見に?」
「あっテメ今おちょくりって言おうとしたな?!」
「ナンノコトヤラー」
雑な誤魔化しでひかるがうぷぷと笑えば花道はふんぬーと鼻息を荒くしたが、ひかるは「ほらほらー、腰が上がってるー。つーか無駄話しねーでちゃんとやれって」とそれを軽くいなす。
その様子を密かに眺めていた流川はダチってよりにもよってアイツかよ……と唇を尖らせた。
「あっ、やべ……あたしそろそろ行かなきゃだ」
「えっ、ひかちゃんもう行っちゃうの?」
「うん、今日あたしバイトなんだよね」
じゃーね晴ちゃん、と体育館を後にしようとすれば流川もそれに気づき小さく手を振ってきたのでひかるは控えめに手を振り返し、体育館を後にした。
(それにしても……花道思ったよりもマジメに練習してたな)
――中学卒業間際、告白した女子に『ゴメンなさい桜木君、あたしバスケット部の小田くんが好きなの』と振られて以来、落ち込みに落ち込んでバスケットを目の敵にしていた花道のことをひかるは不意に思い出す。
高校に入学して以降も立ち直れない花道に苛立ち混じりの煩わしさを覚えたひかるはならばショック療法だと晴子に花道のことを話し――晴子から花道をバスケット部に誘うように仕向けたのだが。
(まーさかあんなに上手くいくとは思わなかったよなー)
花道の好みがあまりにもわかりやすすぎる所為で上手くいった作戦だったかもなーとひかるは苦笑いを零した。
願わくば――今回こそは大事な悪友の想いが報われて欲しいところだが……それは花道次第なんだろうな、と思いながらひかるはバイト先へと足を運んだ。