本編
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「――で、結局あの人バスケ部に戻ったんだ」
「あァ。恥も外聞もかなぐり捨ててな」
「フーン……いいな…………三井センパイは戻れたのか」
三井によるバスケ部襲撃事件から数日経った昼休み――流川とひかるは二人で弁当を広げながら雑談に興じていた。
「でも――戻れたなら良かったよね」
「意外だな。アンタがアレを許せるなんて」
「許せるか許せねーかで言ったらあの事件は許せねーけど。罪を憎んで人を憎まずって言うじゃんか」
言いながらひかるは唐揚げを口に放り込み「とりあえずあたしはアンタが無事にバスケットできるならそれでいーよ」と続けて白米を口にする。
「……で、どーよ」
「?」
「弁当。ちゃんとうまい?」
「……うますぎてうめぇって言うの忘れてた」
「なんじゃそりゃ」
流川って結構天然ボケだよなーとひかるが笑えば教室の扉がコンコンと鳴り、「……赤木いるか?」と唐突に呼ばれた。
「はぁい……って三井センパイ」
「…………よぉ」
ひかるが教室の入口まで駆け寄れば先程まで話題にしていた三井寿がそこに立っていた。――長かった髪はバッサリと切ってスポーツマンの相貌になっている。
「…………なんの用っすか」
思った以上に不機嫌な声がひかるの口から飛び出した。口では許せると言ったが……それはそれとしてわだかまりが全部消えたわけじゃない。すると三井は「……謝罪しにきたんだ」と若干気まずさの残る声で告げた。
「あん時はすまなかった」
言いながら頭を下げる三井にひかるはム、と眉間にシワを寄せる。
「……言う相手間違っちゃいねーっすか。それを受け取るのは洋平たちやバスケ部のみんなっすよ」
「他のヤツらには謝罪は済ませた。あとはアンタだけだ」
「つっても……あたしは別に……」
「いやだって、アンタ泣いてたらしーじゃねぇか」
「な?!なななな泣いてねーし?!」
「ともかく……悪かったって思ってるのはホントだしよ……」
バツが悪そうにガリガリと頭を搔く三井にひかるは「もーいっすよ。あたしもセンパイの気持ちはわからないワケでもないですし」とため息混じりに返したのだが……三井はそんなひかるに「それじゃオレの気がすまねーんだ。だから……アンタ、オレを思いっきり殴れ」ととんでもない事を言い出してきて。ひかるは思わず「は?!」と目を丸くして三井を見上げてしまった。
「これは男のケジメみてーなもんだ」
「あたしそーゆー趣味はねーですけど?!」
「オレだってそーゆー趣味はねーよ!!」
「えー……マジで、ですか」
公衆の面前で殴れと言われて正直ドン引きせざるを得ないひかるだったが、三井は「オレは大マジだ」と真顔である。
暫し間が空き……三井の言葉がマジの大マジだと悟ったひかるは「わかりましたよぉ……」と渋々ながら了承した。
「センパイ……目ェつぶってしゃがんでもらえます?」
「おぅ、」
ひかるの言葉に素直に応じた三井に対してやる気のない棒読みで「んじゃ、いっきますよー」とひかるは声を掛け……そして――、
「ッ!!」
――渾身の力を込めて三井の額をビシィ!!とデコピンで弾いてやった。
「……ビンタとか、あたしの手が痛くなるんで。コレで勘弁願えません?そもそも……あたしがぶん殴りたかったのは今のセンパイじゃねーですし」
三井は無言のまま赤くなった額を摩りつつひかるを見つめる。
「でも……そっすね、もし……バスケ部のみんなにまた迷惑をかけるようでしたら、そんときゃ本気の平手打ち……お見舞いしますよ」
ニッと笑う彼女の生意気な顔に一瞬だけ三井の心臓が跳ねた。しかし――流川から睨まれている事に気づいてしまった所為でその動悸はすぐに収まった。
ひかるは「じゃ、センパイ。用が済んだならあたしはこれで失礼します」と踵を返して教室に戻ってゆく。
(……ただのガキかと思ってたら……案外イイ女じゃねーか)
ひかるの小さな背を見つつ三井は思う。……だからと言って、流川のあの目を見てまで手を出すつもりにはならないが。
「あァ。恥も外聞もかなぐり捨ててな」
「フーン……いいな…………三井センパイは戻れたのか」
三井によるバスケ部襲撃事件から数日経った昼休み――流川とひかるは二人で弁当を広げながら雑談に興じていた。
「でも――戻れたなら良かったよね」
「意外だな。アンタがアレを許せるなんて」
「許せるか許せねーかで言ったらあの事件は許せねーけど。罪を憎んで人を憎まずって言うじゃんか」
言いながらひかるは唐揚げを口に放り込み「とりあえずあたしはアンタが無事にバスケットできるならそれでいーよ」と続けて白米を口にする。
「……で、どーよ」
「?」
「弁当。ちゃんとうまい?」
「……うますぎてうめぇって言うの忘れてた」
「なんじゃそりゃ」
流川って結構天然ボケだよなーとひかるが笑えば教室の扉がコンコンと鳴り、「……赤木いるか?」と唐突に呼ばれた。
「はぁい……って三井センパイ」
「…………よぉ」
ひかるが教室の入口まで駆け寄れば先程まで話題にしていた三井寿がそこに立っていた。――長かった髪はバッサリと切ってスポーツマンの相貌になっている。
「…………なんの用っすか」
思った以上に不機嫌な声がひかるの口から飛び出した。口では許せると言ったが……それはそれとしてわだかまりが全部消えたわけじゃない。すると三井は「……謝罪しにきたんだ」と若干気まずさの残る声で告げた。
「あん時はすまなかった」
言いながら頭を下げる三井にひかるはム、と眉間にシワを寄せる。
「……言う相手間違っちゃいねーっすか。それを受け取るのは洋平たちやバスケ部のみんなっすよ」
「他のヤツらには謝罪は済ませた。あとはアンタだけだ」
「つっても……あたしは別に……」
「いやだって、アンタ泣いてたらしーじゃねぇか」
「な?!なななな泣いてねーし?!」
「ともかく……悪かったって思ってるのはホントだしよ……」
バツが悪そうにガリガリと頭を搔く三井にひかるは「もーいっすよ。あたしもセンパイの気持ちはわからないワケでもないですし」とため息混じりに返したのだが……三井はそんなひかるに「それじゃオレの気がすまねーんだ。だから……アンタ、オレを思いっきり殴れ」ととんでもない事を言い出してきて。ひかるは思わず「は?!」と目を丸くして三井を見上げてしまった。
「これは男のケジメみてーなもんだ」
「あたしそーゆー趣味はねーですけど?!」
「オレだってそーゆー趣味はねーよ!!」
「えー……マジで、ですか」
公衆の面前で殴れと言われて正直ドン引きせざるを得ないひかるだったが、三井は「オレは大マジだ」と真顔である。
暫し間が空き……三井の言葉がマジの大マジだと悟ったひかるは「わかりましたよぉ……」と渋々ながら了承した。
「センパイ……目ェつぶってしゃがんでもらえます?」
「おぅ、」
ひかるの言葉に素直に応じた三井に対してやる気のない棒読みで「んじゃ、いっきますよー」とひかるは声を掛け……そして――、
「ッ!!」
――渾身の力を込めて三井の額をビシィ!!とデコピンで弾いてやった。
「……ビンタとか、あたしの手が痛くなるんで。コレで勘弁願えません?そもそも……あたしがぶん殴りたかったのは今のセンパイじゃねーですし」
三井は無言のまま赤くなった額を摩りつつひかるを見つめる。
「でも……そっすね、もし……バスケ部のみんなにまた迷惑をかけるようでしたら、そんときゃ本気の平手打ち……お見舞いしますよ」
ニッと笑う彼女の生意気な顔に一瞬だけ三井の心臓が跳ねた。しかし――流川から睨まれている事に気づいてしまった所為でその動悸はすぐに収まった。
ひかるは「じゃ、センパイ。用が済んだならあたしはこれで失礼します」と踵を返して教室に戻ってゆく。
(……ただのガキかと思ってたら……案外イイ女じゃねーか)
ひかるの小さな背を見つつ三井は思う。……だからと言って、流川のあの目を見てまで手を出すつもりにはならないが。