本編
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「よーーーーし集合!!」と副主将の木暮が声を上げ、部員たちがゾロゾロと集合してゆく。流川もひかるに「じゃー、またあとで」と声を掛けその場を離れた。
……そこまでは、いつも通りの日常だった。
「ひかちゃん……アレ……!」
「っ!!」
青ざめた晴子がわなわなと指差す先には、ガラの悪い不良たちがニヤニヤと佇んでいて「――オレたちもまぜてくれよ、宮城」とあろうことか土足で体育館に上がり込んできた。それを見た瞬間、ひかるの頭にカッと血が上る。
「ちょっと!アンタら土足で何してんだ!!」
「あァ……?随分と威勢のいいガキンチョがいるな」
「だ、だーれがガキンチョだぁ!!」
「……威勢のいい女は嫌いじゃねーが、ションベンくせーガキは好みじゃねぇな」
長髪の男がハッと鼻で笑い、ひかるが「ンだとコラァ!!」と掴みかかろうとするのを「だっだめよひかちゃん!!」と晴子がしがみついて必死に止めた。
長髪の男――三井は宮城と事件を起こした因縁があるらしい。恨みをぶつけるかのように三井は「この場所をブッ壊しにきたんだよ」と徐にボールを掴み、傍にいる強面の男の吸っていたタバコをボールに押し付けさせ、火を揉み消させた。その様に花道が激昂して吠える。
ビリビリとした空気が、体育館全体を包み込む――一触即発だ。
しかし……ここで変に問題を起こせば地区予選は出場停止…………下手すれば廃部。バスケ部にとって窮地だと言わざるを得ない。
そんな中――勢いよくボールが空を裂いた。
「流川!」
「ちっ、はずれた」
……流川が狙ったのは三井だったようだが、三井がボールを避け、放たれたボールはその後ろの不良の頭にバゴッ!と当たる。
「頼むから引き上げさせてくれ」と宮城が懇願するも聞き分けるような奴らでもなく……花道や流川も混じっての乱闘になってしまった。
(え……ちょっと、)
乱闘のさなか、不良の一人からモップで殴られた流川の頭が血に染まり、ひかるの血の気が引いてゆく。
――このまま、もし腕を折られたら?
――このまま、もし足を折られたら?
止めなければ。けれど、自分の力では止められない。止まらない。ならばどうすればいい。どうすれば――
「っ、」
「ひかちゃん?!」
晴子の呼び声に振り返ることなく、ひかるは体育館に背を向けて一目散に駆け出していた。
(どこ……どこにいるのっ!)
全速力でひかるは走る。膝が痛むのもお構い無しだ。
はたして――目当ての人物は体育館の裏にいた。
友人である野間、大楠、高宮も……一緒にいる。
「洋平!!」
「ひか?おい……顔真っ青だぞ」
「ごめん……助けて…………あたし、アイツにまでバスケを失って欲しくない!!」
涙が滲んで声が震えた。
あんな悔しい思い――流川にも、他の部員たちにも味わって欲しくない。
助けを求めるなんて不本意だった。けれど――それしか手は浮かばなかった。
ひかるが裏口からひっそり体育館へと戻れば晴子に「どこ行ってたのひかちゃん?」と問われた。その問いかけにひかるは「味方……呼んできた」と上を指す。
すると、高宮がロープを使って「はいやーーーー」と飛びかかり………………不良たちではなく花道に激突した。
「ハッハッハッ、何やってんだバカもの!!」
「せっかくの登場シーンを!」
大楠と野間の声に花道が「おめーら!」と顔を上げる。
「正義の味方参上!」
ニッと笑う洋平の声を合図に、残りの三人もロープを用いて「はいやあああ」と飛びかかり、華麗な飛び蹴りを不良共に見舞った。
桜木軍団も交えての乱戦――洋平は三井と対峙する。
「なんなんだてめえは……!バスケ部でもねーのに……関係ねーだろ、てめーには!!」
「関係ならあるさ……妹分が半泣きで助けてって言ってきたんだ」
言いながら洋平は三井の顎を狙って強烈な右ストレートを放つ。
そんな中、血を流しすぎて倒れ伏す流川へとひかるは駆け寄った。
「流川!!」
「ひかる……?」
「じっとして!とりあえずタオルで止血しとくから!」
「アンタ……あのまま逃げとけば、」
「バカ!血まみれのアンタをほっとけるか!!」
ひかるは制服が汚れるのもお構い無しで流川の頭部にタオルを当ててどうにか出血を止めようと奮闘する。
三井はムキになって尚も洋平に殴り掛かっているが……既にボロボロで息も上がっていた。
そんな中……木暮が二人の間に割って入り、三井を睨みつける。
「ど……どいてろ木暮ぇ!!」
三井が木暮の頬を張り、木暮のトレードマークたる眼鏡が飛ぶ。それでも木暮は三井から目を逸らさなかった。
「大人になれよ……三井……!!」
木暮は滔々と三井の過去を語る。
――元々三井はバスケ部員だった。
中学MVPで、安西監督に憧れて湘北バスケ部に入部した彼は、膝の故障でバスケ部を離れて行ったこと……彼が執拗に宮城を狙ったのは、単に宮城が生意気だったからだけではなく、バスケ部期待の新人で嫉妬してのこともあったのだろう。
「………………。」
木暮の語る三井の過去を聞きながら、ひかるは複雑な気持ちでいっぱいになっていた。
「…………なにそれ。ムカつく」
近くにいる流川の耳にも届かないくらいの呟きが、ひかるの口から零れ落ちる。
三井の気持ちは痛いくらいにわかる。――だからって、こんなの……許されることじゃない。
胸に苦々しいものが広がるのは三井も同じで「木暮……関係ねーことをベラベラベラベラ喋りやがって…………!!」と木暮のことを睨みつける。
周囲から本音は戻りたいんじゃ……と突きつけられる三井だが――「バッカじゃねーの!?」とそれを突っぱねた。
「……バカなのは、そっちじゃん」
「ひかる?」
「戻れるくせに戻らないなら、そっちの方がバカだ」
「…………。」
ひかるの苦い呟きは、今度は流川の耳にも届いた。
そうこうしているうちにゴン……ゴン……と静かなノック音が響き……「私だ……開けて下さい」と穏やかな声が聞こえてきた。その声に彩子が慌てて体育館の扉を開ける。
入ってきたのは安西監督――三井の憧れの人だ。
『あきらめたらそこで試合終了だよ』
三井がかつて安西に言われた言葉。それが三井の中に蘇る。
忘れてはいけなかった、無くしてはいけなかったものを思い出して三井は膝から崩れ落ちる。
「安西先生……!!バスケがしたいです」
涙と共に零れ落ちた三井の本音が、シンとした体育館に響きわたり――諍いは終わりを迎えた。
……そこまでは、いつも通りの日常だった。
「ひかちゃん……アレ……!」
「っ!!」
青ざめた晴子がわなわなと指差す先には、ガラの悪い不良たちがニヤニヤと佇んでいて「――オレたちもまぜてくれよ、宮城」とあろうことか土足で体育館に上がり込んできた。それを見た瞬間、ひかるの頭にカッと血が上る。
「ちょっと!アンタら土足で何してんだ!!」
「あァ……?随分と威勢のいいガキンチョがいるな」
「だ、だーれがガキンチョだぁ!!」
「……威勢のいい女は嫌いじゃねーが、ションベンくせーガキは好みじゃねぇな」
長髪の男がハッと鼻で笑い、ひかるが「ンだとコラァ!!」と掴みかかろうとするのを「だっだめよひかちゃん!!」と晴子がしがみついて必死に止めた。
長髪の男――三井は宮城と事件を起こした因縁があるらしい。恨みをぶつけるかのように三井は「この場所をブッ壊しにきたんだよ」と徐にボールを掴み、傍にいる強面の男の吸っていたタバコをボールに押し付けさせ、火を揉み消させた。その様に花道が激昂して吠える。
ビリビリとした空気が、体育館全体を包み込む――一触即発だ。
しかし……ここで変に問題を起こせば地区予選は出場停止…………下手すれば廃部。バスケ部にとって窮地だと言わざるを得ない。
そんな中――勢いよくボールが空を裂いた。
「流川!」
「ちっ、はずれた」
……流川が狙ったのは三井だったようだが、三井がボールを避け、放たれたボールはその後ろの不良の頭にバゴッ!と当たる。
「頼むから引き上げさせてくれ」と宮城が懇願するも聞き分けるような奴らでもなく……花道や流川も混じっての乱闘になってしまった。
(え……ちょっと、)
乱闘のさなか、不良の一人からモップで殴られた流川の頭が血に染まり、ひかるの血の気が引いてゆく。
――このまま、もし腕を折られたら?
――このまま、もし足を折られたら?
止めなければ。けれど、自分の力では止められない。止まらない。ならばどうすればいい。どうすれば――
「っ、」
「ひかちゃん?!」
晴子の呼び声に振り返ることなく、ひかるは体育館に背を向けて一目散に駆け出していた。
(どこ……どこにいるのっ!)
全速力でひかるは走る。膝が痛むのもお構い無しだ。
はたして――目当ての人物は体育館の裏にいた。
友人である野間、大楠、高宮も……一緒にいる。
「洋平!!」
「ひか?おい……顔真っ青だぞ」
「ごめん……助けて…………あたし、アイツにまでバスケを失って欲しくない!!」
涙が滲んで声が震えた。
あんな悔しい思い――流川にも、他の部員たちにも味わって欲しくない。
助けを求めるなんて不本意だった。けれど――それしか手は浮かばなかった。
ひかるが裏口からひっそり体育館へと戻れば晴子に「どこ行ってたのひかちゃん?」と問われた。その問いかけにひかるは「味方……呼んできた」と上を指す。
すると、高宮がロープを使って「はいやーーーー」と飛びかかり………………不良たちではなく花道に激突した。
「ハッハッハッ、何やってんだバカもの!!」
「せっかくの登場シーンを!」
大楠と野間の声に花道が「おめーら!」と顔を上げる。
「正義の味方参上!」
ニッと笑う洋平の声を合図に、残りの三人もロープを用いて「はいやあああ」と飛びかかり、華麗な飛び蹴りを不良共に見舞った。
桜木軍団も交えての乱戦――洋平は三井と対峙する。
「なんなんだてめえは……!バスケ部でもねーのに……関係ねーだろ、てめーには!!」
「関係ならあるさ……妹分が半泣きで助けてって言ってきたんだ」
言いながら洋平は三井の顎を狙って強烈な右ストレートを放つ。
そんな中、血を流しすぎて倒れ伏す流川へとひかるは駆け寄った。
「流川!!」
「ひかる……?」
「じっとして!とりあえずタオルで止血しとくから!」
「アンタ……あのまま逃げとけば、」
「バカ!血まみれのアンタをほっとけるか!!」
ひかるは制服が汚れるのもお構い無しで流川の頭部にタオルを当ててどうにか出血を止めようと奮闘する。
三井はムキになって尚も洋平に殴り掛かっているが……既にボロボロで息も上がっていた。
そんな中……木暮が二人の間に割って入り、三井を睨みつける。
「ど……どいてろ木暮ぇ!!」
三井が木暮の頬を張り、木暮のトレードマークたる眼鏡が飛ぶ。それでも木暮は三井から目を逸らさなかった。
「大人になれよ……三井……!!」
木暮は滔々と三井の過去を語る。
――元々三井はバスケ部員だった。
中学MVPで、安西監督に憧れて湘北バスケ部に入部した彼は、膝の故障でバスケ部を離れて行ったこと……彼が執拗に宮城を狙ったのは、単に宮城が生意気だったからだけではなく、バスケ部期待の新人で嫉妬してのこともあったのだろう。
「………………。」
木暮の語る三井の過去を聞きながら、ひかるは複雑な気持ちでいっぱいになっていた。
「…………なにそれ。ムカつく」
近くにいる流川の耳にも届かないくらいの呟きが、ひかるの口から零れ落ちる。
三井の気持ちは痛いくらいにわかる。――だからって、こんなの……許されることじゃない。
胸に苦々しいものが広がるのは三井も同じで「木暮……関係ねーことをベラベラベラベラ喋りやがって…………!!」と木暮のことを睨みつける。
周囲から本音は戻りたいんじゃ……と突きつけられる三井だが――「バッカじゃねーの!?」とそれを突っぱねた。
「……バカなのは、そっちじゃん」
「ひかる?」
「戻れるくせに戻らないなら、そっちの方がバカだ」
「…………。」
ひかるの苦い呟きは、今度は流川の耳にも届いた。
そうこうしているうちにゴン……ゴン……と静かなノック音が響き……「私だ……開けて下さい」と穏やかな声が聞こえてきた。その声に彩子が慌てて体育館の扉を開ける。
入ってきたのは安西監督――三井の憧れの人だ。
『あきらめたらそこで試合終了だよ』
三井がかつて安西に言われた言葉。それが三井の中に蘇る。
忘れてはいけなかった、無くしてはいけなかったものを思い出して三井は膝から崩れ落ちる。
「安西先生……!!バスケがしたいです」
涙と共に零れ落ちた三井の本音が、シンとした体育館に響きわたり――諍いは終わりを迎えた。