本編
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日曜日、陵南高校体育館――既にギャラリーはガヤガヤとひしめいていた。
ひかるも、従姉妹の晴子やその友人たちと連れ立って見物人に混じっていた。多くは陵南――中でもエースの仙道を目当てにしているらしい。中には記者風の人まで見に来ている。
体育館へと足を踏み入れた流川が、ひかる見に来てんのかな……と視線を上に向ければ金色の髪が目に映った。居る。それだけで胸に暖かいものが込み上げて力が湧く心地だ。暫しそのまま見上げていればひかると視線がかち合って、照れくさそうにひかるが小さく手を振ってきた。それだけで何だかとても嬉しくなってしまって流川も小さく手を振り返せば、しんえーたいだとかを名乗る女共がキャー!と黄色い声で「流川クンが手を振ってくれたわー!!」と喚いたので流川は心の中で「おめーらにじゃねーよ」と悪態を吐いた。
「うー……ギリギリ間に合ったけど…………薬飲んでないからちょっと膝痛い……」
「ごっ、ごめんねひかちゃん!私、昨日楽しみすぎて眠れなくって……まさか寝坊するなんて……」
しょんぼりと謝罪を落とす晴子には申し訳ないと思いつつひかるは少しだけ渋い顔で膝を摩る。晴子の寝坊で駅から全力疾走する羽目になったのだ。薬を飲んでいないとこの程度で悲鳴を上げてしまう膝がイヤになる。
「ううん、晴ちゃんが悪いんじゃなくて。これ、あたしの膝の所為だからさ」
痛みを誤魔化すかのようにひかるはベンチにいる花道に「いっちょまえにユニフォーム貰ってんじゃーん!似合ってんぞー!!」と冷やかしの野次を飛ばしてみるも、誤魔化しの効果は薄く。
(……この膝じゃ、あたしがあの場所に戻るなんて夢のまた夢だな)
ティップオフ――そして、ボールが弾む音、バッシュが床を擦るスキール音。それら全てが自分が見てきた景色よりも遠い。
試合は見るのも好きだが……本音を言うなら自分だってガムシャラにボールを追いかけたい。けれど、それはもう叶わぬ夢だ。
――努力に、自分の夢を壊されるなんて思わなかった。過度な努力が、自分の膝を壊した。
膝よりも、胸が軋んだ。――傷は、そう簡単に塞がってくれないらしい。
白熱した前半戦の20分はあっという間に過ぎ去って滾る後半戦が始まった。一時は19点差だった中、その差5点にまで追い上げる猛攻を湘北が見せた。
そんな中――晴子がそういえば、」と口を開く。
「――流川くんとひかちゃん、どこか似てるわね」
「えっ。晴ちゃん、あたしあんなに無愛想じゃないよ?!」
「そうじゃなくて――バスケットしてる姿よう」
「うーん……。似……てるかなぁ……」
「えっと……上手く言えないんだけど、ボールへの執着心っていうのかしら。あと……ドライブが……見ていてひかちゃんがプレイしていた時の姿と重なるのよね」
「…………。」
不意に過ぎるのは「アンタがバスケットをする姿がずっと好きだった」というあの告白。
少し……頬が火照る。「今のオレがいるの、アンタのおかげ」とも言っていた流川は、いつから自分を見ていたのだろう。
(――あたしが、アイツのキッカケを作ったのかな)
マッチアップで仙道に食らいつく流川を見ながらひかるはキュッと唇を噛む。
――胸が、高鳴るのがわかった。
(い、いや……これは、試合の行方にドキドキしているのであって……けして流川にドキドキしてるわけじゃ……!)
心で否定はすれど、目は自然と流川を追ってしまう。真剣な眼差しでボールを追いかける姿はそこにいる誰よりも眩しくて……目が離せない。あぁ……見れば見るほどに全身が焦げ付くように熱くなるのは何故だろう。
「んぐ〜〜……!」
……なんだか、見ている内に頬の火照りが酷くなった気がしてひかるは思わず唸ってしまった。
「?どうしたの、ひかちゃん」
「な…………なんでもない」
流川の所為で顔が熱いなんて晴子にはとても言えなくて。ひかるは柵に上半身を凭れさすと篭った熱を逃がすかのように大きく息を吐いた。
ひかるも、従姉妹の晴子やその友人たちと連れ立って見物人に混じっていた。多くは陵南――中でもエースの仙道を目当てにしているらしい。中には記者風の人まで見に来ている。
体育館へと足を踏み入れた流川が、ひかる見に来てんのかな……と視線を上に向ければ金色の髪が目に映った。居る。それだけで胸に暖かいものが込み上げて力が湧く心地だ。暫しそのまま見上げていればひかると視線がかち合って、照れくさそうにひかるが小さく手を振ってきた。それだけで何だかとても嬉しくなってしまって流川も小さく手を振り返せば、しんえーたいだとかを名乗る女共がキャー!と黄色い声で「流川クンが手を振ってくれたわー!!」と喚いたので流川は心の中で「おめーらにじゃねーよ」と悪態を吐いた。
「うー……ギリギリ間に合ったけど…………薬飲んでないからちょっと膝痛い……」
「ごっ、ごめんねひかちゃん!私、昨日楽しみすぎて眠れなくって……まさか寝坊するなんて……」
しょんぼりと謝罪を落とす晴子には申し訳ないと思いつつひかるは少しだけ渋い顔で膝を摩る。晴子の寝坊で駅から全力疾走する羽目になったのだ。薬を飲んでいないとこの程度で悲鳴を上げてしまう膝がイヤになる。
「ううん、晴ちゃんが悪いんじゃなくて。これ、あたしの膝の所為だからさ」
痛みを誤魔化すかのようにひかるはベンチにいる花道に「いっちょまえにユニフォーム貰ってんじゃーん!似合ってんぞー!!」と冷やかしの野次を飛ばしてみるも、誤魔化しの効果は薄く。
(……この膝じゃ、あたしがあの場所に戻るなんて夢のまた夢だな)
ティップオフ――そして、ボールが弾む音、バッシュが床を擦るスキール音。それら全てが自分が見てきた景色よりも遠い。
試合は見るのも好きだが……本音を言うなら自分だってガムシャラにボールを追いかけたい。けれど、それはもう叶わぬ夢だ。
――努力に、自分の夢を壊されるなんて思わなかった。過度な努力が、自分の膝を壊した。
膝よりも、胸が軋んだ。――傷は、そう簡単に塞がってくれないらしい。
白熱した前半戦の20分はあっという間に過ぎ去って滾る後半戦が始まった。一時は19点差だった中、その差5点にまで追い上げる猛攻を湘北が見せた。
そんな中――晴子がそういえば、」と口を開く。
「――流川くんとひかちゃん、どこか似てるわね」
「えっ。晴ちゃん、あたしあんなに無愛想じゃないよ?!」
「そうじゃなくて――バスケットしてる姿よう」
「うーん……。似……てるかなぁ……」
「えっと……上手く言えないんだけど、ボールへの執着心っていうのかしら。あと……ドライブが……見ていてひかちゃんがプレイしていた時の姿と重なるのよね」
「…………。」
不意に過ぎるのは「アンタがバスケットをする姿がずっと好きだった」というあの告白。
少し……頬が火照る。「今のオレがいるの、アンタのおかげ」とも言っていた流川は、いつから自分を見ていたのだろう。
(――あたしが、アイツのキッカケを作ったのかな)
マッチアップで仙道に食らいつく流川を見ながらひかるはキュッと唇を噛む。
――胸が、高鳴るのがわかった。
(い、いや……これは、試合の行方にドキドキしているのであって……けして流川にドキドキしてるわけじゃ……!)
心で否定はすれど、目は自然と流川を追ってしまう。真剣な眼差しでボールを追いかける姿はそこにいる誰よりも眩しくて……目が離せない。あぁ……見れば見るほどに全身が焦げ付くように熱くなるのは何故だろう。
「んぐ〜〜……!」
……なんだか、見ている内に頬の火照りが酷くなった気がしてひかるは思わず唸ってしまった。
「?どうしたの、ひかちゃん」
「な…………なんでもない」
流川の所為で顔が熱いなんて晴子にはとても言えなくて。ひかるは柵に上半身を凭れさすと篭った熱を逃がすかのように大きく息を吐いた。