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短編小説


情事の後、ベッドで二人微睡むこの時間が好きだ。
ぼんやりと気持ち良くて、遊佐さんを眺めていても怒られないから。

「どうしたの?」

あまりにも長々と見つめていると気がつかれる。
それでも見つめていると、彼は照れたように微笑んで、僕をそっと撫でてくれるんだ。
されるがままに撫でまわされながら、幸せに浸る。
遊佐さんの手が、珍しく温かい。
素肌に、髪に触れる優しい感触がとても気持ち良くて。
いつまでも撫でていて欲しくなる。

「明日は何して過ごそうね」

珍しく二人揃っての休みは、たった1日。
ずっと一緒にいようと、彼は幸せそうに笑ってくれた。

「食事に出かけたいです。」
「良いね。昼間から二人で飲みにでも行こうか」

言いながら抱き寄せられて、すっぽりと腕の中に納められてしまう。
静かに上下する胸と、僕よりほんのちょっと大きい手しか見えなくなって。
頭の上で遊佐さんが静かに笑う。

「飲ませて、酔わせて、明るいうちからセックスするの」

楽しそうでしょう?と。
つむじにキスが降る。
やっと落ち着いて来ていた鼓動がまた早くなった。

「いつもと違う所でしてもいいね」

ソファとか、お風呂とか、キッチンとか…
家中を列挙する遊佐さんが、今日も意地悪そうな声で言う。

「この家のどこに居ても、僕のこと思い出すように…」

ほんのちょっとだけ想像して、ゾクリと快感が走った。
彼の居ないこの部屋で、一人欲情する自分を思い浮かべて。
どこに行っても彼との思い出があって、それが全部みだらな事だとしたら。

「そんなのツライです…」

遊佐さんの体に腕を絡ませながら、精いっぱいの甘え声で言う。
抱きついた体が揺れて、笑い声。

「そうやって欲情する君は素敵だけどなぁ」

笑う遊佐さんを、腕に収められたまま見上げる。
どんな顔で言ってるのだろうと思ったのに、そっと手で目隠しをされて。

「ほら、目を閉じて、キスするから」

もう一度しようか、そう言って遊佐さんはまた笑う。
明日の朝はゆっくりになりそうだ。
僕は言われるままに目を閉じて、そっと受け入れた。
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