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▼A.R.B2023クリスマスイベネタ
「(クリスマスの予定、聞かれなかったな…)」
銃兎さんと付き合ってから迎える初めてのクリスマス。
一緒に過ごしたいなぁ、と考えていなかった訳ではないけれど、年末に向けて忙しそうにしている銃兎さんに言うことも出来ず。あちらから予定を聞かれることもなかった。
クリスマス当日。
街中で人だかりが出来ており、興味本位で遠目から見ていれば、その中心にはサンタクロースの格好をしている銃兎さんが居た。
銃兎さんの隣には、ラップバトルで見かけたことのある人が他に2人。多分、ナゴヤディビジョンの人だったかと思う。
ラップバトルに関する催しだろうか、意外な組み合わせだ。
そして、ふと思った。もしかしたら、銃兎さんはあのサンタクロースの格好をした姿を見られたくなかったのかもしれない。
クリスマスの予定を聞いてしまえば、もちろん自分の予定も話さないといけない。そりゃあ、聞かれない訳だ。
なんだか新鮮だなぁ、と遠くから銃兎さんを眺めていれば、目が合ってしまった。気がする。
見てませんよ、と言わんばかりにそっと視線を外して、その場を後にした。
***
家に帰って、あとは寝るだけ。でも寝るにはまだ早く、手持ち無沙汰にスマホを弄っていると、突然インターホンが鳴った。
こんな夜遅くに誰だろうと思えば、ドアの向こうに居たのは銃兎さんで、慌ててドアを開けた。
途端に一歩踏み出した銃兎さんに気押され後ずさると、パタンと後ろ手に銃兎さんが扉を閉めた。
「じ、銃兎さん?どうしたんで
「先程、隣に居た方は誰ですか」
私が言い終えるよりも早く、銃兎さんが口を開いた。やっぱり気付いてたんだ。
銃兎さんの言う“隣に居た方”。それは、クリスマス直前になって彼女に振られてしまった弟。
そんな弟から連絡があり、暇なら一緒にご飯でも行かないかと言われたのだ。そして彼氏がいるのにクリスマスの予定がない寂しい姉。誘いを断る訳もなく。
じっとこちらを見据える瞳は、怒りや焦りを含んでいるようにも見えた。
それに、銃兎さんを見上げなければいけないことも相待って、少し怖い。
一文字に結ばれた口を見て、彼はきっと私が口を開くまでこのままなんだろうなと思った。
「…銃兎さん、さっき一緒に居たのは私の弟です」
「おと、うと…」
それを聞いた銃兎さんは安心したように大きな息を吐き出して、私の肩に頭を預けた。
「じ、銃兎さん?」
「クリスマスに恋人と過ごすことも出来ない私を見限ったのかと…」
「そういうことする女に見えます?」
それを聞いた彼は誤解だと慌てるように姿勢を直し、私と向き直った。
「いえ、貴方がという訳ではなく!私が…」
「ふふ、大丈夫です。そんなことしませんから。私も、銃兎さんも、ね」
「…はい」
薄く微笑んだ銃兎さんは、私の背に手を回しそっと抱きしめてくれた。
私もその背に手を回す。私よりも大きな身体に触れることはまだ恥ずかしいけれど、その温もりは心地良い。
「ちなみにさっきのはあれですか?ラップバトルの宣伝的な…?」
「違います。上司からのお達しがあって、地域住民とのクリスマスふれあい会の一環です」
「あ、警察のお仕事でしたか」
「ええ。なので、すみません。クリスマスを一緒に過ごすことが出来ず…」
「いえ!その、本音を言えばちょっと寂しかったですけど、銃兎さんがお仕事で忙しいの、分かってますから」
その言葉を聞いた瞬間、私を抱き締める力が少し強くなった、気がした。
「…理解が良いのも困りものですね」
ぽつりと耳元で呟かれた言葉。それからそっと身体を離され、両肩に手を置かれ見つめ合う形になる。
「会いたいなら、会いたいと。もっと我儘を言ってくれていいんですよ。すぐに…というわけにはいきませんが、必ず都合は付けますから」
「でも迷惑じゃ…」
「そう思ってるなら、こんなこと最初から言いません」
疲れているところに迷惑をかけたくない、嫌われたくない。そんな気持ちから、ここ最近は私から銃兎さんへ連絡をすることが少なくなっていた。
でも、こう言ってくれているんだ。これからはもう少し、素直に気持ちをぶつけても良いのかもしれない。
おずおずと頷いて「銃兎さんも、ですよ」といえば、ふっと優しく笑い頷いてくれた。
「えと、じゃあ、早速いいですかね…?」
「ええ、もちろん。喜んで」
「…私が寝るまで、一緒に居てくれませんか?」
それを聞いた銃兎さんは一瞬だけ目を丸くして、それからまた優しく笑った。
「寝るまでとは言わず…朝まででも」
***
「さて、この後一杯奢ってくれるんだったよな?」
「すみません。それはまたの機会にして頂けますか?」
「なんだ、結局また面倒なこと手伝わせるつもりだったか?」
「そういう訳ではありません。何よりも優先しないといけないことが出来てしまったので」
「…ったく、しょうがねぇな」
「恩に着ます」
はやく。はやく、彼女の下へ。
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title:icca
男と一緒にいる彼女を見かけた銃兎さん、その後仕事どころではなくなったら良い。
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