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「刑部さんって、彼女とかいるんですか?」
以前から気になっていたこと。コンサートに向けての練習に付き合ってもらった後、思い切って聞いてみた。
こうやって頻繁に寮に訪れては練習に付き合ってくれるので、いないのかな…とは思うけれど。それは私の願望も少し入ってしまっている。
刑部さんのことだ、誰にも知らせてない密やかな交際をしていてもおかしくはない。
「…どう思う?」
「今はいない…けど、今までに2・3人とは付き合ってそうなイメージはあります」
それを聞いた刑部さんはクス、と笑った。
「いない、のはアタリ。でもその後のイメージは…ハズレかな」
「え、刑部さんモテそうなのに」
「…好意を寄せられたこともあったけれど、俺の家のことを知れば皆、自ずと離れていったよ」
なんでもないような、いつかの寂しい笑顔を見せた刑部さん。こうやって恋も、夢も、諦めてきたのだろうか。そんなの、
「家なんて関係ないのに…気持ちの方が大事じゃないですか…」
ぽつりと零れ落ちた本音。刑部さんも何も言わず、訪れた静寂に無神経なことを言ってしまった、と俯いていた顔を勢いよく上げた。
「す、すみません。軽々しく言っていいことじゃないですよね」
「俺のことを思っての君の本心だろう?構わないよ」
そう言った刑部さんは穏やかにそう笑って見せた。先程の寂しさなんて、ひとつも感じられない。その様子に、ほっと胸を撫で下ろした。
「それに、そんなに心配することはないよ。家のことや俺の裏の顔を知っても、側にいてくれる子が出来たからね」
「そうなんですか!」
驚きと共に、ズキンと傷んだ心は知らないフリをして。
「彼女がいるかどうか聞いてきたから、脈なしではないと思うんだけどね」
「…刑部さんの恋の話なんて、聞いちゃっていいんでしょうか」
刑部さんにそんな素敵な人が出来た。喜ぶべきなのだろう。でも、これ以上聞きたくない自分もいる。知らないフリをした心は、勝手にズキンズキンと胸を締め付ける。
「…誰のことか分からないかい?」
分からないです、その声は言葉にならなかった。
私の髪を刑部さんの大きな手が優しく掬い上げる。熱のこもった瞳が、仕草が、それは私だと言っている。こんなことをされてしまったら、否が応でも分かってしまう。
「きっと、後にも先にも君だけだよ」
これだけ本気になったのは、そう言った刑部さんの手から私の髪がするりと滑り落ちる。射抜くような視線は私を捉えたままだ。
この瞳からはもう逃げられない。