宮地 清志
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『みーやーじー!』
昼休み、隣のクラスである宮地に、いつものように会いに行く。
休み時間はもう、宮地へのアプローチの時間のようなものだ。
好きになったきっかけは何だっただろうか。凄く些細な事だったと思う。
それから、たくさん話して、たくさん知って、もっと好きになって。
「また来たのかよ」
『そんなこと言ってー、実は
「勘違いすんな、轢くぞ」
まぁこの通り、宮地はまったく振り向いてくれないけれど。
でも、高望みはしない。こうして話すことが出来るだけでいいと、今この時を大事にしよう…と思い始めた矢先だった。
ある日の放課後、教室に1人残って日直の仕事をしていた。
1人残ってると言うのも、同じ日直の子は仕事も忘れて、そそくさと帰ってしまったからだ。宮地風に言うと、ほんと「轢くぞ」だ。
心の中で文句を言いながらも、せっせと仕事を片付けていく。
早く終わらせて宮地に会いに行くんだ。
黒板消しを取り、窓際の機械で綺麗にする。手を動かしながら、ぼーっと外を見ていると宮地が目に入った。あの髪の色、間違うはずがない。
でも、その数歩先で1人の女の子が歩いていた。
宮地もそれについて行っているようで、しかもどんどんと人気のない方へ進む。
途端に身体中を巡る嫌な予感と冷や汗。
気付いた時には足が動き出していて、一心不乱に駆け出した。
『ここ…かな…』
辺りを見渡し2人の姿を探す。
体育館裏を曲がったところで、2人を見つけた。けど、すぐに隠れた。いや反射的に身体がそう反応したんだ。
だって女の子が宮地を抱き締めていたから。
あー、そういうことだったんだなって。そりゃ私に振り向いてくれない訳だ。
何故か心は落ち着いていた。分かってたのかもしれない。こんな事があるかもって。
重い足取りで教室に戻り、一番に目に飛び込んできたのは、さっき綺麗にした黒板。
妙に憎たらしくて、大きく「宮地のバカ」と書いた。
教室の後ろからその黒板を眺める。じわじわと緩む涙腺に、あぁ今頃さっきの事を自覚し始めたんだと気づく。
大きく、大きく、息を吸って止める。そして、黒板の文字をそのまま大声で叫ぶ。
少しだけだけど心がすっきりして、黒板の文字を消そうとしたとき、教室の後ろのドアが大きな音を立てて開いた。
ゆらめくのは、夕焼けに照らされて輝く金色の髪。そんな人を私は1人しか知らない。
息が上がって、頬に流れる汗を制服の袖で拭う宮地がそこに居た。
「お前、喧嘩売ってんのか。轢くぞ」
その言葉にハッとする。
何でここに来たのかとか、さっきまで体育館裏に居たじゃないかとか、聞きたいことは山ほどあるけど、何より優先すべきなのは、黒板の文字を消すことだと思った。
急いで黒板を消そうと、手を全力で動かしていく。
すると、私の手に宮地の手が覆い被さった。男の人の手にドキッと心臓が高鳴る。
後ろには宮地の気配がする。どうやら黒板と宮地に挟まれたようだ。
「…お前のが馬鹿だ」
小さく耳元で呟かれた言葉に、黒板の文字の返事だと気付く。
「あれだろ、大方さっきの見てたんだろ。誰かに見られてんなって…お前だと思ったわ」
『う、あーそうですよ。だから早く彼女さんのところに』
「あ、いねぇよ彼女なんて」
『え、でもさっき抱きしめられてて』
「でも俺からは抱きしめてないし、彼女でもなんでもない」
そんなの!
屁理屈じゃない…と声が小さくなる。後ろから、大きなため息が聞こえてビクッとなる。
「俺と今、ここにいるのはお前だ。それで充分だろ」
その言葉に大きく心臓が飛び跳ねた。でも、ちゃんと言ってくれなきゃ分からない。
「分かんない。ズルい」
そう小さく呟くと、ゆっくりと後ろを向かされた。宮地と向かい合う形になる。
いつも以上に真剣な宮地の目には、私の顔が映っていた。
近付く距離に、私はそっと目を閉じた。
足りない言葉は
(態度で示して)