高尾 和成
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やたらと話の長いHRに嫌気が差して、気分転換にと窓の外を見た。
空には一面、青とかすかなオレンジが広がっていた。空を見るだけで、少し気持ちが軽くなる。
校庭では、早くにHRを終えたのだろう人達が、もうそれぞれの部活の準備に取りかかっていた。
私も早く行きたい、と部活のことばかり考えていた。
「ナマエ?」
そう呼ばれた方を向けば、高尾が心配そうにこちらを見ていた。
いつの間にかHRが終わっていたのか、周りは帰り支度を始めていた。
「もうHR終わったぜ」
『みたいだね』
「どうかしたか?」
『ん、何でもない』
「さっきの話、ちゃんと聞いてたかー?」
『聞いてなーい』
「おまっ」
そう言うと、先程先生が話していたと思われる内容を軽く説明してくれた。
明日の連絡事項と、最近この辺りで不審者が出るという話。
「…みたいだからさ。気をつけろよ」
『私なんて襲う奴いないよ』
「見境無い奴いるって!」
『どういう意味さ』
「お前が男に見えて襲う奴もい
『歯食いしばれよ』
「ちょ、タンマタンマ!嘘だって!」
ははーって笑う高尾に少しばかりため息をついて、いざ飛び出さんとする手を引っ込める。
「でもさ、まじ気をつけろよ」
『分かった、分かった』
こんな見た目も男みたいな私を襲う奴なんて居るはずないだろう…、と軽んじていた私がバカだった。
いつもより少し遅めに終わった部活。外を出ると結構暗くなっていた。
途中までは同じ部活の子と帰ってたけど、別れてから少し経って後ろに何か気配を感じるようになった。
誰かに付けられているような。
ま、まぁ帰り道が同じ方向なだけだろうとポジティブに考えて歩を進めた。
家まで後少しと言うところで、誰かに後ろから抱き締められた。暗闇で見えなくも、耳にかかる息の荒い呼吸に知り合いじゃないと分かる。と同時に鳥肌が立つほどの嫌悪感。
普段口では何とでも言えるけど、いざとなれば思ったように身体は動かない。こんな時だけ女々しいだなんて。
私の身体をまさぐる手はエスカレートしていった。声も出ない、身体も動かない。
ただ誰かの助けだけを求めて、ぎゅっと目を瞑った。
「なーにしてんの、オ ニ イ サ ン ?」
聞き慣れた声と、身体から離れた手に安堵する。そして声がした方を見ると、やはり高尾が居た。
「い、いや別に彼女が…」
「ふーん。涙目の彼女が…なんだって?」
「き、君には関係な
「あるんだよ」
そう言って高尾は男を殴りつけた。一発で伸びた男は倒れ込み、高尾は携帯を取り出して警察へと掛けていた。
緊張の糸がとかれた私は、その場へとへたり込んだ。
同時に電話を掛け終わった高尾が、ずんずんと近付いてきた。
なんだ、と思う間もなくぎゅっと抱き締められた。
「よかった…マジでよかった…」
一言一言吐く度に、私を抱きしめる力が強くなっていった。
『ご、めん』
「だから言ったろ?気をつけろって」
『うん、うん…』
徐々に緩んでいく涙腺。いつの間にかポロポロと涙が流れていた。
「あぁ、泣くな泣くな」
『た、かお』
「ん?」
『ありがと…』
「…おう」
高尾は優しく頭を撫でてくれた。
そして、私はそっと高尾の制服の裾を掴んだ。高尾は黙ってその手を握り締めてくれた。
ほどなく男は警察に連行されて行った。その頃には私も大分落ち着きを取り戻していた。
「居たな、お前襲う奴」
『だね。男に見えなかったのかな…』
「充分、女だよ。ナマエは」
『は!?』
普段聞かないセリフに、反射的に高尾から距離を取ろうとした。が、見事に手を掴まれ、逆にまた高尾の腕の中に閉じ込められてしまった。
「無理してんじゃねーよ」
高尾は気付いてたんだろう。私の虚勢を。まだ少し震える身体を。
『ごめん』
「あー謝んなって。…俺がもっと早く駆けつけてれば」
『……来てくれただけで、良い』
「…あの、さ」
『ん?』
「これからも俺に守られてよ」
あまり意味の分からない言葉にキョトンとしていると、耳元で「俺と付き合ってよ」と囁かれた。
守ってくれると、
(君が言うから)
『な、なな!』
「えーダメー?」
『ダメ、じゃない、けど』
「…その返事で充分だわ」