宍戸 亮
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その先輩を見かけたのは2回。
1回目は、長髪が印象的で綺麗だと思った。
2回目は短髪になっていて、最初は誰か分からなかったけど長髪の人だって分かった。
見かけたのはその2回だけなのに、ギャップにやられたのもあって、私はその人が好きになった。
友達に聞くと「あんた知らないの!?」と目を見開きながら、テニス部で有名な「宍戸亮」という先輩だと教えてくれた。
テニス部とか興味がなくて何も思わなかったけど、あんな格好いい人が居たんだって初めて知った。
だけど親しくなりたいからと言って、後輩の私が急に話しかけたってどうせ相手にされない。
何もする勇気のない私は憧れるだけで終わるのかもしれない、と思った矢先だった。
お昼休み、友達は部活の集まりに行ってしまい、暇だったので屋上に向かった。
屋上の梯子を登った給水タンクの前、密かにお気に入りのその場所は今日は見知らぬ誰かに取られていた。
それが宍戸先輩だと頭で理解するまで、30秒はかかったと思う。
宍戸先輩は寝転がって、いつも被っているだろう青い帽子を、顔に被せて寝ている。
少しだけなら…と隣に座った。心地の良い風が吹いて眠気を誘われる。さすが私のお気に入りの場所。
それから5分くらい経っただろうか。
さすがに違う場所に移ろうかなと立ち上がろうとした瞬間、ビュウッと強い風が吹いた。
宍戸先輩の青い帽子が目の前を横切った。
飛んで行ってしまう、と帽子を掴んだのは良いが前のめりになり、視界には数メートル下のコンクリート。
あぁ、私このまま…と思ったのも束の間、後ろから強い力で腕を引かれて、誰かに軽く抱きしめられた。
「なっ…にしてんだ!馬鹿野郎!」
私を助けてくれたのは、先程まで寝ていたはずの宍戸先輩だった。
「お前…こんな所で自殺なんてやめろよ!」
『…と、飛んでいった先輩の帽子を掴んだら、お、落ちそうになったんです』
「自殺しようとしたんじゃないんだな?」
『だ、断じて違います…!』
はぁ…とため息をついた先輩は、どこか安心したようだった。
そりゃ、目の前で死なれちゃ後味悪いもんね。
『あ、あの先輩これ…』
と言って私は、先輩の帽子を差し出した。
「お前…これのために死にそうになってたのか?」
『そう…なりますかね』
「…サンキューな」
そう言った先輩は、私の頭を撫でてくれた。
その瞬間、私は緊張の糸が切れたのか涙が溢れた。九死に一生を得たのが、結構堪えたのだろう。
私が泣き止むまで、先輩はずっと頭を撫でていてくれた。
3回目の出会いは
「はぁ…よくやるよな、まったく」
『私も咄嗟でしたので…』
「…今度、何か奢ってやるよ」
『いや、申し訳ないですよ』
「こういう時は素直に甘えとけ」
『りょ、了解しました』
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