二宮 匡貴
▼ Name change!
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
連絡を取るのは、大体いつも私からだった。
それは付き合う前も付き合ってからも変わらなかった。
些細な近況から大学のこと、次はいつ会えるのか。
匡貴の方から連絡が来ることは…うん、履歴を遡ってみても数える程しかない。
きっと匡貴は私がメッセージを送らなくなっても、変わらず日常を過ごしていくんだろうなぁ。
そう思ったら、なんだか悲しくなって。でも少しでも気にかけてくれるのか、試してみたい気持ちもあって。
頻繁に送っていたメッセージを送るのをやめた。
そして1週間も立たないうちに、大学で匡貴から声を掛けられた。少し機嫌が悪そうに見える。
「この後は?」
「今日はもう終わりだけど…」
「なら、家に来い」
「ボーダーは?」
「休みだ」
まだ行くとは言っていない。けれど、有無を言わせないように手を掴まれ、あれよあれよと匡貴の家へと招かれてしまった。
久々の匡貴の家なのに、甘い雰囲気なんて欠片もない。
「何故、連絡を寄越さない?」
家に着くや否や落ち着く暇もなく、リビングまで歩き振り返った匡貴がそう切り出した。
「だって…特に用事も無かったから…」
「何もなくても送って来てただろうが」
「…もしかして、心配してくれた?」
肯定も否定もせず、コーヒーを入れ始める匡貴。見るに私の分も作ってくれている。
一つは私に渡してくれた。そして、もう一つのコーヒーに何も言わないまま口をつけた匡貴。それはもう、肯定してるようなもんだよ。
「いつもどうでもいい事でも連絡してくるヤツから連絡が来なくなったら、何かあったかと思うだろうが」
「…じゃあ、どうしたのって匡貴から連絡してくれたらいいじゃん」
「俺は…送れる時間が定まってないから適してない」
「…私もこうみえて忙しいんだからね!」
嘘。匡貴に連絡を送るぐらいの余裕はある。今までもそうだったし。
だって会えないことが多いなら、少しでも匡貴を感じたいから。でも匡貴はそうじゃないのかな、やっぱり。
「そもそもお前が…」
ああ言えばこう言われ、堂々巡り。私が匡貴に口喧嘩で勝てるわけ無くて。
「なんで、私がそんなに責められなきゃいけないの」
だんだん悲しいのと怒りが混ざって来て、鼻の奥がツンとする。久々に会ったというのに、何をしているんだろう。
「ああもう…私ばっかりじゃん。こんなに好きで…苦しいの。ぜんぶぜんぶ匡貴のせいだ」
悔しい。苦しい。私ばっかり匡貴でいっぱいで。匡貴のこと考えて一喜一憂して、なんだかバカみたい。
一度溢れた涙は止まらなくて、手で拭っていると匡貴にその手を優しく掴まれ止められた。
「そうか…悪くないな」
「な…んで!?そこは俺のせいにするなって怒るところじゃないの!?」
「それだけ俺のこと考えているんだろ。なら、いい」
「そ、そーだバーカバーカ!」
予想外の答えにあれだけ流れていた涙なんかいつの間にか引っ込んでいて、やけくそになって返事をすると「バカなのはお前の方だ」と返されてしまった。そこは律儀に返さなくていいよ、ちくしょう。
そして、未だに掴まれている手が離れない。もう涙は止まっているのに。
離してもらおうと自分の身体の方へ小さく引こうとすると、反対に手を引かれ飛び込んだ先は匡貴の胸の中。
「ま、匡貴?」
「それにしてもお前は…さっきからどういうこと言ってるか自覚はあるのか?」
「はい?」
「相当な殺し文句だぞ、それは」
匡貴の大きな両手が私の首と耳の間に触れる。ぞわりと身震いして、抗議の声を上げようとして口を開いた途端に、彼の唇が重なった。
「そうやって、俺のことだけ考えていろ」
熱のこもった瞳と、ほんの少しだけ上がった口角に、結局白旗を上げるのは私の方だった。