弓場 拓磨
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「なかなか連絡出来なくて悪い」
「ううん。拓磨くん忙しいの分かってるから」
久々に会った恋人の拓磨くん。今日は大学が終わり防衛任務までに少し時間があるようで、カフェで一緒に過ごしていた。
大学にボーダーにと、拓磨くんは忙しい身である。
ボーダーに関しては機密事項もあるようで詳しくは知らないけれど、隊長を務めていると聞いたことがある。それに加えて防衛任務もあるというのなら、それはもう忙しいに決まっている。
加えて私も仕事があって、2人の空き時間が合うことはなかなかに難しい。
「それは…そうなんだけどよォ」
珍しくなんだか歯切れの悪い拓磨くん。何か言いたいことがあるのかもしれない、と引き続き拓磨くんが口を開くのを待った。
「…寂しくねェか?」
「…拓磨くんは?」
自分の気持ちは言わずに拓磨くんに委ねるような、我ながらずるい返事だと思った。動揺を悟られたくなくて、先程買っておいた手元のミルクティーに口をつける。
寂しくないわけない。ここ最近は特に連絡もままなならず、会うことさえなかなか出来なかった。
寂しいと言えば、拓磨くんは無理にでも時間を作ってくれるだろう。そういう人だ。
そんな時間があれば、私は拓磨くんにゆっくりと休んで欲しい。私の我儘で拓磨くんを困らせたくない。
「…寂しくねェわけねェだろ」
「悪いけど忙しくてそれどころではない」と否定されるか。「俺が聞いてるんだ」とまたこちらに返されるのか、そう思っていた。
そのどちらでもない言葉に少しだけ驚いて拓磨くんを見つめる。
拓磨くんはテーブルに肘を付いて、口元を手で覆いながら目を逸らした。
「…拓磨くんもそんなこと思うんだ」
「当たり前だ。俺をなんだと思ってんだよ」
「いや…ドライな方だと…」
「おめェーなァ…」
「ふふ、ごめんごめん」
拓磨くんも寂しいって思ってくれるんだ。その言葉をゆっくりと咀嚼する。じわりと温かい気持ちが広がっていくようだった。
「私も…言っても困らない?」
「一人で抱え込まれてる方が困る」
「…そっか」
忙しい合間を縫って、私のことも大切に考えてくれている。こちらを真っ直ぐと見ている拓磨くんに、そんな片鱗を見た気がして頬が緩む。
「私も本当は寂しいよ」
「…おぅ」
「…だから、些細なことでも連絡してもいい?」
「返事が遅くなるかもしれねェが必ず返すし、俺もする」
「うん、嬉しい」
そう笑えば、拓磨くんもどこかほっとしたように目を伏せて薄く笑った。
その日の夜、早速何か送ろうとメッセージアプリを開く。
『今日のカフェまた行こうね』とか。『拓磨くんは晩御飯何食べたの?』とか。色々と悩んだ末に、面と向かって言うのは恥ずかしい言葉にした。
今日改めて近付いた距離に、気持ちを伝えたくて。
『拓磨くん大好きだよ』
そう送ると、すぐに既読が付いた。拓磨くんも何か送ろうと思ってメッセージアプリを開いてくれていたのだろうか。
でも些か反応が早すぎる。なんて返ってくるだろうとそわそわしていれば、すぐに電話の着信を知らせる画面に切り替わる。
待って。まだ心の準備が出来てないよ。心臓がばくばくと波打つまま、もしもしと電話に出た。
「…そういうのはよォ、直接言ってくれ」
いつもより少し小さな声に照れているのかな、なんて考えて。いたずら心が湧いて来る。
「誰かさんは忙しいみたいだから、ね」
「…近々、ぜってェー意地でも予定空ける」
先程よりも力強い返答に思わず笑ってしまった。
「ふふ、待ってるね」
「おう、首洗って待ってろ」
それじゃあ果たし合いになっちゃうよ、拓磨くん。
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