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「マジ?…ミョウジ、俺のこと好きなの?」
バレないように、勘付かれないように気を付けていたはずなのに、ちょっとした気の緩みで知られてしまった私の気持ち。
先程まで話していた太刀川とのやり取りを見ていた友達が、ニヤニヤしながら茶化してきたまでは良かった。
私とは別方向に歩いて行ったはずの太刀川が、まさかこちらに来ているなんて思いもよらなかった。
私と友達の一部始終を聞いていたのであろう太刀川は、少し驚いたようにそう言ったのだ。
渇いた口からは言葉ひとつ出て来ない。
真っ直ぐとこちらを見据える太刀川の目を受け止めることなんて出来なくて、逃げるように背を向けて走り出した。
***
この後の予定が家に帰るだけだったのは不幸中の幸いだった。
逃げ出した先は、ボーダーが見渡せる高台。私のお気に入りの場所で、気分が落ち込んだ時などよく来るところだ。
柵に手をかけ、ボーダーを見ながらゆっくりと深呼吸をする。
「…ビンゴ。やっぱここだった」
2度、3度の深呼吸を終えたところで後ろから声が聞こえて振り向けば、そこには太刀川が居た。
ここはちょっとした公園になってはいるが、人通りの少ない場所だ。周りは木々に囲まれ、遠くからは誰がいるかなんて見分けようがない。
目的があって、確信があって、ここに来ない限り、居るなんて分かるはずもないのに。どうして。
「な、んで」
「前言ってたじゃん、ここお気に入りだって」
それは何ヶ月も前のこと。
飲み会が終わった後、酔っ払った太刀川の介抱を押し付けられた帰り道。
帰りたくないだの寄り道するだの子供みたいにぐずり始めた太刀川に面倒だと思いながらも、一緒に居られて嬉しいという気持ちをひたすらに隠して歩いていた。
そんな時に、ちょうど通りかかったお気に入りの場所。少し長い階段を抜けた先の高台にある公園。その一角から見渡せるボーダー。
少しでも太刀川の酔いを覚まさせようと立ち寄った。
「ここ私のお気に入りなの。何かあったらここ来ちゃうんだよね〜」
「ふ〜〜ん」
あの時、そう興味なさげに相槌を打った太刀川。まだ完全には酔いは覚めていなかったし、覚えてないだろうと思ってたのに。
「俺に教えてくれたの嬉しかったな〜」
ゆっくりと私の隣に来て、同じように柵に手をかけ、ボーダーを見ながらそう言った太刀川。
覚えていてくれたのは嬉しい…けれど、どんな気持ちでその言葉を聞けば良いのか分からず、何の返事もすることが出来なかった。
「…で、さっきのはマジ?」
こちらのことなんてお構いなしに沈黙を破ってくる太刀川。視線を感じるも目を合わすことが出来ない。
さっきのことが本当であれど、その気持ちは墓まで持っていくつもりだったのに。
「太刀川のことは…好きになっちゃいけないんだよ」
「ふーーん?なんで?」
「だって、聞いちゃったから。この前…」
それは大学で講義を終え、ラウンジで待つ友達の元へと向かった時のこと。
ラウンジに差し掛かるというところで聞こえた自分の名前。思わず立ち止まり、側にあった柱へと隠れてしまった。
そろりと声が聞こえた方を覗き込めば、そこには太刀川と太刀川の友達が居た。
「前から思ってたんだけどさぁ、太刀川、ミョウジさんと仲良いよな。付き合ってんの?」
「え〜ないない」
ズキンと大きく痛んだ胸。手をぎゅっと握り、痛む胸を押さえながら、慌ててその場を後にした。
これ以上、聞いていられなかった。『ない』その言葉だけで、全てが分かってしまったから。太刀川は私のことなんて。
「━って話してたの聞いたんだよ。だから…」
「あー?あー…そういう話もしたっけなぁ。え、もしかしてその後聞いてねぇ感じ?」
「その後?」
「肝心なとこ、聞いてねぇのな」
フッと意地悪そうな笑みを浮かべる太刀川。
その時のことを思い出すかのように、ボーダーを眺めながら口を開いた。
「そいつさ、じゃあオレが〜って立候補しようとすんの。お前の彼氏に。
だから、俺がずーっと狙ってたんだからダメって言ったんだぜ」
「なに、それ。でも、ないって…!」
「ジッサイ付き合ってはねーじゃん。狙ってはいたけど」
ボーダーに向けていた視線を私に合わせ、じっと見つめながら口角を上げて笑う太刀川に何も言えなくなる。
嬉しいやら、恥ずかしいやら。ぐるぐると気持ちが巡る。
「なぁ。俺、ミョウジのこと好きだよ。…ミョウジは?」
「わっ、分かってるくせに…!」
「言われねーと分かんねーもん」
な?と私の顔を覗き込む太刀川。
もうどこにも逃げ場なんてない。先程から真っ赤に染まっているであろう顔も、太刀川にずっと見られてしまっている。
「わ、私も太刀川のこと……好き」
「ん」
小さな返事が返ってくる。そして、目を細めて優しい顔をした太刀川に抱き締められた。
とくとくと伝わってくる太刀川の音と温もりが心地良い。
「はぁ〜、やっと俺のになった。ずっと……こうしたかった」
どこか切なさを孕んだ声でそう言った太刀川の私を抱き締める両の手が、ほんの少しだけ、強くなった気がした。
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