諏訪 洸太郎
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「諏訪ー!お前、彼女出来たなら言えよ!」
少し離れたところから聞こえた声。
それに目を向ければ、ちょうど諏訪もこちらを向いたようで一瞬だけ目が合った。
それも束の間すぐに逸らされて友達の方へ顔を向け直した諏訪が、大きく口を開けて何かを言っていた。
そりゃ諏訪にも好きな人の1人や2人…いや2人居たらまずいけど。とうとう、この時が来たかと思った。
私は諏訪に想いを寄せてたけど、それをひた隠しにして、友達としてボーダーの同僚として仲良くしていた。
2人でご飯も行ったり、雨の日なんか諏訪に車で送ってもらったりしたこともあったなぁ。
他の女の子よりは仲良くしてもらってた方…だと思う。思いたい。
友人が多い諏訪のことだから、他の女の子にも私と同じような接し方してたかもしれないけど。
それでも、諏訪の好きな人が自分であったらいいな、なんて恋する女の子みたいなことを考えたこともあったなぁ。
そんな淡い思い出が思い浮かんでは消えていく。やっぱり恋の神様はこちらに微笑んでくれないらしい。
一際目立つ、前の方に座る金髪頭。目立つのはきっと私が意識して見てるからで。
じーっと諏訪の後ろ姿を見る。授業中だから黒板を見るふりをすれば、友達にも先生にも気付かれるはずもない。
諏訪も彼女に好きって言ったりするんだろうなぁ。手を繋いだり…その先だって。
でもその隣にいるのは私じゃない誰かで。そう考えては、ぎゅっと胸が締め付けられた。
涙は出なかった。でも胸が苦しくて苦しくて、板書をする利き手とは反対の手を胸元でぎゅうと握り締めていた。
「おい!」
授業が終わり、友達に別れを告げる。今日は夜の防衛任務に備えてはやく帰るかと、とぼとぼ歩いていたら。
急に後ろから肩を強く掴まれ、驚いて振り向くと少し焦った顔をした諏訪がいた。
「な、なに!?」
「なに、じゃねぇよ。人が話しかけてんのに無視すっから」
「あ、ごめん。考え事してて…」
「大丈夫か?ぼーっとしてんぞ」
少し屈んで覗き込むようにこちらを見てくる諏訪。目が合わせられなくて、前髪を触りながら俯いて「大丈夫」と誤魔化した。
「今日、防衛任務って言ってたよな?」
「うん、夜から。諏訪は?」
「任務は入ってねーけど、顔出すつもり」
「そうなんだ。じゃあまたね」
「あーおいおい、ちょっと待てって。時間あんなら飯行こうぜ」
何度か諏訪と2人でご飯に行ったことがある。なんなら昨日も。ご飯…という程でもないけど、カフェで少し話をした。
もしかしたら彼女が出来たって報告したかったのかな。なんだかんだ言えなかったから今日…ってことなのかな。
でも諏訪に彼女が出来た今、彼女じゃない女の子…私と2人でご飯なんてよくないよね。
「諏訪、彼女出来たんでしょ?もう2人でご飯とかしちゃダメだよ。彼女さん妬いちゃうよ?」
自分で言ってて、なんだか悲しくなった。なんでもないように努めて笑って言ったつもりだけど、上手く笑えていないかもしれない。
「はぁ?彼女?…あぁ、あれか今日アイツら言ってやつか」
顎に手を当てて考え込んだ諏訪。心当たりがあったのかすぐに納得したように軽く頷いて、こちらに向き直った。
「あれだよ。昨日お前とあそこの…カフェ行っただろ?それをアイツら見ててそう言ってただけ」
「えっ!?うわぁ…恥ずかしい。ごめん、勘違いしてて。あと友達に勘違いさせてて」
諏訪に彼女は出来てない。それに喜んで良いものの、勘違いのきっかけが自分だったなんて。
なんだか複雑で恥ずかしくて、諏訪から見られないように両手で顔を隠す。ひぃ、顔が熱い。
「…別に。本当のことにすりゃいんじゃねーの」
その言葉に少しだけ顔をあげて、諏訪を盗み見る。目が合った諏訪は、首の後ろに手を当てて明後日を向いてしまった。
「言っとくけどな、俺は気のない女と2人で飯行く程暇じゃねーし。あと車にも乗せねぇから」
「すっ諏訪の…友達と恋人に向ける距離感の違いなんて知らないもん…」
拗ねるようにそう言えば、ふっと鼻で笑う諏訪。そして、なんだか余裕そうな笑みを浮かべて口を開いた。
「お前に向けてたのは、全部好きなヤツに向けるやつだっつの」
自分でそう言っておきながら諏訪は照れたのか、「察しとけ、バァカ」と照れ隠しをするように私の額を小突いた。
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title:icca