隠岐 孝二
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「なぁ、気のせいかなぁ?さっきからめっちゃトゲトゲした視線刺さる気するんやけど」
「気のせいじゃないです」
目の前の席に座る背中に恨めしい視線を向けていたのをどうも感じ取ったらしい隠岐は、ゆっくり後ろを振り向きながらそう言った。
「オキ、モテル、クヤシイ」
「また言うてるそれ〜。ほんまモテへんって」
隠岐は顔の前で片手を左右に振りながら否定する。ほんでなんでカタコトやねん、とツッコミも忘れずに続けた。流石関西人。
「隠岐はさ、知らないんだよ。こうやって隠岐と喋ってると女の子から飛んでくる嫉妬や羨望の眼差し。ランク戦で活躍すれば密かに黄色い悲鳴が。そして恋バナで必ず出てくる隠岐の存在」
「待って、その恋バナってミョウジちゃんの?」
おっと、余計なことを言ってしまった。スルーされるだろうと思えば、ピンポイントでそこを狙ってくる隠岐。伊達に狙撃手やってないな。
「引っかかるとこ、そこ?」
「当たり前やん。大事なとこやで」
「私のっていうか、友達との恋バナでだよ〜」
「ふ〜ん。まぁ俺の話題は出てるんやなぁ」
うん、なんとか誤魔化せた…のか。我ながら上手な嘘もつけず、下手くそな誤魔化し方だと思ったけれど。
これ以上聞いても答えてくれないと分かっているのか、隠岐も追求してこなくて助かった。
「はぁ…私もモテたい…」
両手で頬杖をつきながら、長いため息を吐く。
私もたくさんの男の子に可愛いとか想われたりしたら。そしたらこの目の前のモテ男も、少しは私に目を向けてくれるだろうか。
「え〜それは困るわぁ」
「なんだと!?私に何の恨みがある!?」
「恨みちゃうよ。純粋な好意やで」
「…はい?」
怪訝な目を向けていると、隠岐も同じように私の机の上に両手で頬杖をついてきた。ち、近い!
視界が隠岐でいっぱいになりそうな距離に思わず仰け反った。
「ミョウジちゃんモテてもうたら、俺とこうやって話すの少なぁなってまうやん。それに万が一、彼氏とか出来てもうたら困るんやけど」
「…その心は?」
「ミョウジちゃんの彼氏は俺がえぇなぁ」
それを聞いて全身がカッと熱くなるのを感じて、腕で顔を隠すように机の上に突っ伏した。絶対、顔真っ赤だ。恥ずかしい。
「大丈夫?」なんて言いながら、隠岐が頭をつついてくる。大丈夫じゃない。
「隠岐にモテ期だ…」
「ははっ、ほんまやなぁ」
少しだけ顔を上げて、隠岐をじろりと睨みつける。
なんだか余裕そうな笑みが憎たらしい。こういう時は「ダジャレやん」ってツッコむところでしょ。
「…余裕そうだね」
「そんなことあらへんよ。こう見えて心臓ドキドキやで」
そう言って隠岐は自身の胸に片手を当てた。そして、隠岐の纒う空気が一瞬変わった気がして。
真っ直ぐこちらを見る隠岐が少し首を傾げながら、口を開く。
「…なぁ、嬉しい?」
「………嬉しい」
「そうか、そらよかったわぁ」
隠岐はほっとしたように大きく息を吐いて、目尻を下げて優しく笑った。
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