トラファルガー・ロー
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▼学パロ
内申点を上げるために立候補した保健委員。
クラスの女子の半分くらいが、同じように手を上げていてびっくりした。
体育委員は絶対に嫌だし、あんまり忙しくなさそうだから、と選んだのに。
他の委員会に比べ、なぜこんなにも競争率が高いのか。
その理由は、超倍率の中、じゃんけんという運任せで得た保健委員。その委員会の集まりで分かった。
整った容姿に加え文武両道。そして、ご両親はどこかの有名な大学病院に勤めているだとか。
そんな噂を持つトラファルガー先輩が保健委員だからだ。どうやら毎期、保健委員になっているらしく、皆お近付きになろうとしているようだった。
私も噂は聞いていて、校内で見かけた時は格好良いなとは思ったけれど、人を寄せ付けないような雰囲気が怖くてどちらかと言うと苦手だった。
そう思っていたはずだったのに。
トラファルガー先輩は思っていたよりも面倒見が良くて。不器用ながらも優しいところがあって。好きになるのに時間は掛からなかった。
保健室の当番だって、私が1人の時にトラファルガー先輩が来てくれたこともある。
トラファルガー先輩が当番の時に、呼ばれたこともある。
そんなことが続いて、いつしかお互いの当番の日には保健室に向かい、一緒に過ごすようになるほどの仲にもなった。
そんな先輩との関わりも、もうすぐ終わってしまう。
集会を終え、先生に頼まれて2人並んで校内に配布する保健だよりの紙をまとめている。
これがきっと最後。今期の委員会の活動が今日で最後だから。
「おまえ、次も保健委員になるのか?」
「多分、無理かなぁと。今回も倍率すごかったので」
「なんだそれ」
紙の束を整えながら薄く笑う先輩。知らないんだろうなぁ。色んなクラスで保健委員争奪戦が繰り広げられているのを。
「次は図書委員でも入ろうかなぁと思います」
「…そうか」
「だから、先輩とは今日でお別れですね」
震えてしまいそうになった声を隠すように、私もトントンと紙の束を整えて音を被せた。
「寂しくなるな」
そう言った先輩は、私の髪を一房さらりと掬っていく。こちらを見つめる真っ直ぐな瞳と目が合って、心臓がひとつ大きな音を立てる。この瞳に何度ドキドキさせられたことだろうか。
「せ、せんぱい…?」
「揶揄う奴が居なくなる」
「もう!」
意地悪な笑みを浮かべた先輩の手元へと、まだ纏められていない紙の束を、嫌がらせのようにどかりと置いた。
「…トラファルガー先輩」
本当は今日、トラファルガー先輩に告白しようと思っていた。こんな2人きりのチャンスも貰えたのだし。
でも今の言葉で、この想いをうちに秘める決心が出来た。先輩にとって私は、ただの同じ委員会で仲の良い後輩なだけだ。
「また校内で会った時はよろしくお願いしますね」
頑張って笑みを浮かべて先輩を見る。そしてすぐ自分の手元へと視線を戻した。
「…あぁ」
そう言った先輩はどんな顔だったか分からないけれど。それはどこか寂しそうな声色にも聞こえた。
***
保健委員は相変わらずの倍率で。元より諦めていた私は無事に図書委員になることが出来た。
今日は新しい委員会活動の最初の集まりだ。
集会予定の教室に顔を出せば、すでに何人かは好きな場所へと座って、人が集まり話し合いが始まるのを待っていた。
誰にという訳でもなく、ぺこりと頭を下げながら窓際の席へと向かい、腰を下ろした。
今回はどんな人がいるだろうか。どんなことをしていくのだろうか。ワクワクもあり、ドキドキもある。
そこにトラファルガー先輩が居ないのは、少し寂しいけれど。
そんな寂しさと緊張を持ったまま、手持ち無沙汰にしていると、隣に誰かが座った。
他にも空席はあるのに、どうして私の隣に。と少しは思ったけれど。
もしかしたら知り合いなのかもしれない。声を掛けようと隣に顔を向ければ、そこにはトラファルガー先輩がいた。
「な、なんで、トラファルガー先輩がここに…!?」
「さぁ、なんでだろうな」
頬杖をついて、してやったりな笑顔を向けてくる先輩。周りはトラファルガー先輩が来たことに少しざわついていた。
「ここは図書委員の集まりですよ…?」
「間違ってねェよ。おれも図書委員だ」
「な、なんで…」
私が図書委員って言ったから、トラファルガー先輩も図書委員を選んでくれたのだろうか。
ここまでして来てくれる。もしかしたら、トラファルガー先輩も私と同じ気持ち、って思っていいのかな。
「ここ抜け出して、教えてやっても良いんだぜ」
「最初の集まりでそんなこと出来ませんよ」
「言うと思った」
「…真面目ですみませんね」
「おれはミョウジのそういうとこが気に入ってる」
揶揄ってるんだろうな、と思ってトラファルガー先輩を見るも、思いの外優しい目で見てくるものだから。あぁ、これは本当にそう思ってくれているんだなって。
気恥ずかしくなって、ゴホンと咳払いをひとつ。
「何はともあれ、後で質問攻めをさせて頂くとして…これからもよろしくお願いしますね、トラファルガー先輩」
軽く頭を下げて、トラファルガー先輩を見る。先輩は少しだけ目を丸くして、驚いている様に見えた。
「え、あれ?なんか間違えました?」
「合ってるよ。…おまえは意味深な言い方なんてしないもんな」
「はい?」
「いや。これからも、よろしくな」
トラファルガー先輩は薄く笑って、どこか含みのある言い方でそう言った。
その後始まった委員会の話し合いは、トラファルガー先輩との、この後のことが気になってしまって。
内容があまり頭の中に入って来ていないのは多分、隣のトラファルガー先輩にはバレている。
だって今もこちらを横目で見ては、ふっと笑っているから。
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「私が図書委員になれてなかったら、どうするつもりだったんですか」
「別に関係ねェよ。前みたく、当番の時にでも呼び出せば良いだけだろ」
「…そうですね、そうでしたね!」