トラファルガー・ロー
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▼ハートの海賊団クルー夢主
▼ゾウ編あたり
▼ゾウ編あたり
彼の姿を、ローの姿を見た途端、涙が溢れ出した。すぐにでも駆け寄って抱き締めたかった。彼とは恋人同士で、それはクルーも承知の上だ。何もおかしいことはない。
それでも駆け寄らなかったのは、一瞬合ったはずの目が逸らされたからだ。
彼が船を離れると言った時、他のクルーはいつものことだと思ったかもしれない。でも私は、ただならぬ雰囲気を感じた。結局彼はちゃんとした理由を教えてくれなかったけど、私はいつまでも待っていると言った。彼は待たなくていいと言った。
言葉はなかったが、私たちの関係はきっとあの時に終わったのだ。いつまで経っても、目が合わないのがその証拠。
長い間、麦わら達の船に身を寄せていたともなれば、まぁそういうこともあるかもしれない。と頭はどこか冷めていても、ちくちくと突き刺すような痛みが胸には走る。
「行かなくていいのか?」
キャプテンを取り囲むクルーの様子を少し後ろから眺めていると、我先にとキャプテンの元へと飛んでいったペンギンがひとしきり絡み終えたのか、私のところまで来て声を掛けてきた。
「うん、ここからでいい」
「そんなこと言うなよ。キャプテンもお前と話したいだろうに」
「…そうかな」
そうだよ、とペンギンは言ってくれる。そうだといいな、と返せばペンギンは言葉なしに、頭をわしわしと撫でてくれた。察して気遣ってくれているんだろう。痛んだ胸にペンギンの優しさが沁みて、少し泣きたくなった。
***
「話がある」
夜も更けた頃、キャプテンから声を掛けられた。あぁ、改めて別れ話でもされるのだろうか。それとも船長として何か命令があるのだろうか。船を降りることも覚悟しないとなぁ。
「分かりました」
もやもやとした考えが頭をよぎりながらも、そう答えれば、キャプテンは少しだけ目を見開いて踵を返した。敬語だったことにでも、驚いたのだろうか。
キャプテンの後ろを付いていけば、そよ風のふく島の、ゾウの端。そこは星空と私たちだけのような感覚に陥る、開けた場所だった。
景色は綺麗でも、どこか気まずい雰囲気が流れる。半歩後ろから彼をちらりと見ても、彼はまっすぐと前を見据えたままだ。
切り出しにくいのだろうか。それなら私から言った方が良いか、と重い口をなんとか開く。
「あの、別れ話なら承りますので。…船を降りろと一言仰ってくだされば、降ります」
それを聞いた彼は、ものすごい勢いでこちらに振り向いた。怒りと悲しみが混じったような瞳が揺れている。
「何を、言ってる」
「私はもう、必要ないかと」
「…他に誰かいいヤツでも出来たのか」
「それはキャプテンの方では?」
「は?」
そう言えばキャプテンは頭を抱えて、大きなため息をついた。
「どうしてそうなる」
「え、違うんですか」
「…お前は昔から、どうも思い込むクセがあるな」
キャプテンの長い指が私の髪をさらっていく。
「いや、悪いのはオレか。長らく船を開けて、お前を蔑ろにしたオレの」
キャプテンの瞳が慈しむように私を映している。
「今なら言える。今までも、これからも、生涯お前だけだ」
「そんなの…ずるいよ」
「なんとでも言え」
今日は泣いてばかりだ。ぽろぽろと溢れてくる涙を手で拭おうとすれば、その手を取られ、ローの腕の中へと閉じ込められる。
伝わる体温と鼓動が、彼が本当にここにいるのだと教えてくれる。そのことにまた涙が溢れる。
「…おかえりなさい」
「あぁ、ただいま」
広い背中に腕を回し、ぎゅっと抱き締める。それに応えるように、彼も私をより強く抱き締めてくれた。
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title:icca
※一瞬目が合って逸らしてしまったのは、どんな顔をすればいいのか分からなかったローさん。