トラファルガー・ロー
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▼麦わらの一味夢主
ローさんがサニー号を降りてから、行く先々の島で彼の姿を探すのが癖になってしまった。
港に船は無くとも、彼の船は潜水艦なので、港からは見えないよう泊めているかもしれない。もしかしたら、ばったり会えるかもしれない。
居ないのは分かっていても、そんなかもしれない事ばかりを考えて、彼の姿を探しては他人の空似に落胆するばかりだった。
「ちょっと買いすぎちゃったな…」
久々に降り立った島で、買い出しついでにと街を見て回れば、目に映る服や小物が可愛くて買いすぎてしまった。両手に紙袋がいっぱいだ。
もちろん、美味しそうなスイーツも見つけたので、仲間へのおみやげもばっちりだ。
そろそろ船へ戻るかと港へ続く道を歩いていれば、前から柄の悪そうな輩が何人か歩いてくる。
なるべく目は合わせないようにしつつ、通り過ごそうかと思えば、その中の1人がわざとらしく肩にぶつかってきた。うわ、面倒くさい。
「いってェな!」
「これ骨折れてんじゃね?」
「慰謝料もらわねェとなァ?」
口々に何かを言っている男達。ぶつかってきたのはそっちじゃないか。いや、今時そのセリフを言う人がまだいるのか、と少し笑いそうになったのを我慢する。
ここで騒ぎを起こせば最悪の場合、海軍を呼ばれる可能性もある。仲間に迷惑をかける訳にもいかない。ここは、
「逃げるが勝ち!」
男達の間をすばやく駆け抜ける。こんなことになるなら、サンジくんと一緒にいれば良かった。女性物を買うから、時間が掛かるから、と別れたのが失敗だったか。
人気の少ない路地裏に駆け込んで、息を整える。私を探す連中の数が、先程より増えている気がする。
流石にこの大量の荷物を持って走るのは無理があるか。でも、置いていくのは勿体無いしなぁ。運良くサンジくんと出会えれば良いんだけど。
と考えていると、青い空間が目の前に広がる。その後には独特の浮遊感。まさか、と心臓が否が応でも騒ぎ出す。
次に目を開けた時には、いつかと変わらない眉間に皺を寄せた顔で、ローさんが目の前に立っていた。
「なん、で」
「お前こそ何してんだ」
「あ、えっと、ちょっと面倒くさいのに引っかかりまして…」
相変わらずお前のところはトラブルだらけだな、とローさんはため息をついた。そのため息でさえも、聞くのはいつぶりだろうか。
「ローさん、この島に来てたんですね」
「ついさっきだ。ついでに麦わら屋の船が港に泊まってるのを見かけた」
「それで街に?ルフィに用事でも?」
「…お前が居るかと思ったんだよ」
もしかして。もしかして、ローさんも私と同じように島に来ていないかと、街で見掛けないかと、思ってくれていたのだろうか。
「…私を探してくれたんですか?」
「…散策ついでにな」
さっきまで合っていた目が、ふと逸らされる。これは図星なのかな。やっぱり私を探してくれていたのだろうか。それなら、嬉しい。
「私も行く先々でローさんのこと探してたんですよ。今日…会えて良かったです」
「…いつまでこの島にいる?」
「えっと、明日の朝には出るかと」
「そうか…船まで送る」
「え、いや、ローさんも用事が」
「お前一応追われてるんだろうが。それに、俺の用はもう済んだ」
ローさんに会えた喜びで、自分が追われているという状況をすっかり忘れていた。そうでした、と口を開こうとしたけれど、最後のローさんの言葉が引っ掛かった。
「やっぱり。ついでじゃなくて、私に会うのが用だったのでは…」
「うるせェ。黙って歩け」
そう言って私の荷物を半分ほどひったくり、ローさんは歩き出した。その後ろを付いて歩く。
港への道すがらは、お互いの近況を話し合ったりした。ローさんは自ら話すことは少ないけれど、私の質問には答えてくれるし、話も聞いてくれた。
そんな心地良かった空間も、あっという間に終わりを告げる。この道を曲がって歩いていけば、船のある港だ。
「ローさん、港はこっちですよ」
曲がらなければならない道を、ローさんは曲がらずにまっすぐ進む。ゾロみたいに方向音痴ではないとは思うけど。
引き止めるように声を掛けると、こちらを向かずにぴたりと歩みを止めた。
「知ってる。…もう少しいいだろ」
さっきの奴らが先回りしているかもしれねェ、と言い訳じみたことを言って、ローさんはまた歩き出す。
もう少し一緒にいたいと思ってくれているのかな。はい!と勢いよく返事をして、ローさんを追いかける。同じ気持ちだと伝われば良いんだけれど。
ローさんと私は足の長さも違えば、歩幅も違う。
それでも並んだ足並みに、彼が私の歩くペースに合わせてくれているのだと気付く。
そういえば、さっきもそうだったな。嬉しくて思わず顔を綻ばせていると、ニヤニヤするな、と怒られてしまった。
誰のせいですか、誰の。