トラファルガー・ロー
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▼ハートの海賊団クルー夢主
あちこちでお酒を酌み交わし、どんちゃんと盛り上がっていく宴。場の雰囲気に流され、飲め飲めと勧められて飲んだお酒の酔いがそろそろ回ってきた。
火照った頬を冷まそうと、人のいない場所へと歩みを進める。船の2階部分はあまり人がおらず、騒ぐ宴を一望出来て少し落ち着ける場所だった。
そう言えばキャプテンはどこに行ったのだろう、と柵に手を掛け、目で探していると、輪の中心からほんの少しだけ離れたところで、ロビンさんとキャプテンが話をしているようだった。
おそらく難しい話をしているのだろう。その2人以外、同じテーブルに付いている人はいなかった。
…そして私から見る2人はとても、とてもお似合いに見えた。キャプテンには、聡明で強くてスタイルの良くて美人な女性が隣に立つに相応しい、と思う。
それでも、私を選んでくれたのはキャプテンだということも理解している。
ふつふつと黒いモヤが浮かんでは、それを振り払う。何度か分からない自問自答のループから抜け出すように、目を瞑り下を向いた。
「大丈夫かい?」
はっと声がした方へと顔を上げると、そこにはサンジさんがいた。
「まだ飲むかと思ったんだけど…、水の方が良さそうかな」
そう言って彼は、両手に持っていたグラスの片方を差し出してくれた。お礼を言って受け取り、グラスに口をつける。水の冷たさと彼の優しさが胸に沁みた。
もう片方のお酒が入っていたであろうグラスは、サンジさんが口をつけていた。
「浮かない顔をしてるね。何かあった?」
「いえ、大したことではないですよ」
「トラ男のことかな」
ぴくりと肩が震えてしまった。我ながら分かりやすい反応をしてしまったと思う。それにサンジさんが気付かないはずもなく。やっぱり、と言って少し笑った。
ここで誤魔化すのも悪いかと思い、正直に話す。まだ酔いは覚めていないせいか、今は口が軽くなってしまっているようだ。
「…お似合いだな、って見てたんです」
「いや!ロビンちゃんにトラ男は合わない!合うわけない!」
ふん、と勢いよく鼻息を出して否定するサンジさんを見て、笑ってしまった。
「…そんなに心配しなくても、トラ男はナマエちゃんと1番お似合いだと思うよ。お互いがお互いを気にかけてるっていうか…キミのことちゃんと見てるし」
「えっ」
「ナマエちゃん、まつ毛付いてるよ。ちょっと目を瞑って」
急に変わった話に慌てながら、目を擦ろうとすれば、ダメだよ、と止められる。まつ毛を付けたまま話していたのか私は。恥ずかしい、と小さく呟いて目を閉じた。
「ちょっと待っ」
不自然に途切れたサンジさんの言葉に目を開けると、そこにはサンジさんの姿はなく、不機嫌そうな顔をしたキャプテンがいた。
「あいたっ!」
そして額を思い切り弾かれる。じんじんと痛む額を撫でながら、何が起こったのかとキャプテンが元居た場所を見れば、そこにはサンジさんが。
なんと切り替えの早いことか、すでにロビンさんにハートを飛ばしていた。ロビンさんと目が合えば、軽く手を振られたので、私も振り返す。
シャンブルズ使いましたね、キャプテン。
「迫られてんじゃねェよ」
「せま…違いますよ。まつ毛付いてたみたいなんで取ってもらおうと」
「んなモン付いてねぇよ」
顔を覗かれた後、目の下を親指で軽く擦られる。思ったより優しい手つきで、少しだけ胸が高鳴った。
というか何で迫られる、いや迫られていたわけではないけれど。それをキャプテンが知っているのか。
「というか、見てたんですか?」
「たまたま視界に入っただけだ。…あまり隙を見せんじゃねェ」
「えーなんで、サンジさんは良い人ですよ」
「アイツは男だ」
「キャプテンもしかして…嫉妬してくれました?」
「調子に乗るな」
大きなため息をつかれ、また額を弾かれる。先程と寸分違わず同じ場所だった。痛い。
そして、先程サンジさんが言っていた『キミのことちゃんと見てるし』という言葉がふと蘇った。
もしかして、これはサンジさんの計画通り?そう思って彼の方を見れば、次はナミさんに向けてお酒を差し出して、またもやハートを飛ばしているところだった。
アイコンタクトを取ろうにも目が合わない。真実はサンジさんのみぞ知る、というやつだ。
「それで、何話してた」
えー、それまで言わないとダメですか。そう思ってしばし口を噤んでいると、早く言えと言わんばかりの鋭い視線を向けられたので観念する。
「どうせくだらねェことでも考えてたんだろうが」
流石はキャプテン。お見通しなわけだ。
まぁでも別に隠す必要もない。私が少し惨めな思いをするだけで。
わいわいと騒ぐ宴を眺めながら、ぽつぽつと胸の内を話すと、隣からはまた大きなため息が降って来た。
「俺はお前だから良いんだ。そこにお似合いだとか、他人の目なんて関係ねェ」
柵に肘をかけ、宴を眺めながらそう言ったキャプテンとは目が合わない。でもその声色からは、こちらを気遣ってくれているのがよく分かる。滅多にそんなことを言ってくれないのに、場の雰囲気かお酒のおかげか。
直球、とまではいかないけれど。それでも悶々と考えていた私を元気付けるには、充分すぎる言葉だ。
キャプテン、と言いかけた言葉を慌てて閉じる。
「…ロー、大好きだよ」
「…知ってる」
そう言って彼は目を伏せ、ゆるりと口角を上げながら、ふっと鼻で笑った。そこにからかいや呆れは感じられず、ただ穏やかな優しさだけがあった。
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