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▼ロー視点あり
「ナマエ、最近元気が無いんだ…トラ男、何か知ってるか?前はよく一緒にいただろ?」
前は。そう前まではよく一緒にいた、と思う。それが突然、ナマエから避けられるようになった。まるで、俺が麦わら屋の船に身を寄せた当初のように。
「いや…何も」
理由なんて、俺が聞きたいぐらいだ。
何も知らない俺は、情けないことにそう言うしかなかった。
日も沈んできた頃、昼間のトニー屋との話が気になって、森の方へ行ったという情報を頼りにナマエの姿を探す。
座っている姿を見かけ、声を掛けようとするより先に、ナマエの声が響いた。
「私、ローさんのこと好きなの、やめる」
どうしてだ、という俺の言葉を代弁するかのように、隣に居たトニー屋が同じくそう言った。
「報われない恋を追い続けたって仕方ないからさ。新しい恋でも探そうと思って」
「ナマエ…」
「やめるな」
そう思ったと同時に言葉と身体が出ていた。突然現れた俺に、ナマエもトニー屋も驚いてこちらを見る。
「トラ男!」
「ロー、さん…さっきの話、聞いて」
「トニー屋、席を外してくれるか」
「でも、」
心配そうな目でトニー屋がこちらを見る。
「ナマエを傷付けるようなことはしないと、約束する」
「…分かった!」
最後にナマエを一瞥し、トニー屋は村の方へと戻って行く。不安げな瞳を揺らしたナマエだけがそこに残された。
ゆっくりと近くに寄ってナマエの隣に座る。逃げ出せば捕まえる気ではあったが、びくりと肩を揺らしただけで、ナマエはそのまま俯いて座ったままだった。
「…さっきの話、聞かせてくれないか」
何でもないように、落ち着いて声を出したはずだが、どうにも少し震えてしまった。それがどうナマエに伝わっているかは分からないが。
***
聞かれてしまえば。聞かせて欲しいと言われてしまえば。もう言うしかない。
ぽつりぽつりとローさんへの想いを吐き出していく。何も言わずにローさんはただただ隣で、私の話を聞いている。
「どんどん欲深くなってしまうんです。私だけ特別扱いして欲しいなんて、そんなの…迷惑に決まってる」
「迷惑じゃねェ。好きな女に求められて迷惑な訳があるか」
「そういうもんですか…」
黙って聞いていたローさんがやっと口を開いた。男の人からの目線だとそういうものか。と納得して、一拍。
今なんて言ったこの目の前の人は。好きな…女?
「えっ!?ちょ、ちょっと待ってください!?」
まさか、きっと私の聞き間違いだ。都合が良いように聞こえてしまっただけに違いない。
そんな私の考えなんてお見通しなのか、「好きな女はお前のことだぞ」と先に釘を刺されてしまった。でも。
「…ローさんのはきっと、恋じゃないですよ。ほら、前にも言ってたじゃないですか。妹みたいだって」
「最初はそう思ってたよ」
ローさんの方なんて見る事が出来ずに俯いたままでいると、骨張った手が頬に伸びてくる。
そして、ゆっくりとローさんの方へと顔を向けさせられる。
そこには、真っ直ぐとこちらを見つめる瞳があって、どくんと心臓が大きく鳴った。
「でも、泣いた顔も笑った顔も俺にだけ向けられたい。お前を守るのも俺でありたい」
目の前の琥珀色の瞳に捕らえられて、逸らすことなんて出来やしない。
「そう思うのは…これが恋じゃねェなら、なんなのか教えてくれよ」
「…っ」
私はなんて答えたら良いのだろうか。彼の想いを私が、私の言葉で“恋”と言ってしまって良いのだろうか。
言い淀み、迷った思いが彼に伝わってしまったのか、ぎゅっと抱き締められる。
「別にお前が言わなくても、おれはとっくに分かってんだよ。ナマエ」
好きだ、と耳元で囁かれた言葉に、私は涙を流しながら、彼の背中に手を回してきつく抱き締め返した。