夏油 傑
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▼高専時代
昼から駆り出された任務に少し手こずり、高専に帰って来たのが21時過ぎ。
ご飯を食べて、お風呂に入って、ベッドに飛び込むように寝転んだ。
うとうとしていると、ピロンと携帯が鳴る。時刻を見ると、23時を越えていた。
『窓の外、見てごらん』
メールの差出人は傑だった。何かあったのだろうか、とカーテンを開け窓の外を覗き込む。
室内の灯りに照らされ、黒い影が落ちていく。雨かと思ったけれど、その速度はゆるやかだ。
よく見ると、白い小さな粒。雪だ。雪が降っている。
傑に返事を返そうと、携帯の返信ボタンを押した途端に鳴る着信音。慌てて拒否のボタンを押してしまいそうになったのを済んでのところで止め、応答ボタンを押した。
「もしもし!」
『その様子じゃ見てくれた?』
「見た見たー!教えてくれてありがと!」
傑に教えられずあのまま寝入ってしまっていたら、雪を見ることは叶わなかっただろう。次の日に降っているとも積もっているとも限らないから。
『…外で見てみる?』
「え、見たい!」
『じゃあ、10分後に寮前に』
暖かくしておいで、と言って傑は電話を切った。
急いで少し髪を整えて、上にコートを羽織り、マフラーを巻いた。
寮前に行けば、ダウンを羽織り暖かい服装をした傑が待っていた。傑も寝るところだったのだろうか、その髪は結われていなかった。
「少し歩くかい?」
「うん!」
「少しだけ、ね」
くすくすと笑った傑は一歩を踏み出した。珍しく揺れるその髪に一瞬だけ見惚れ、慌ててその後ろを付いていくように私も歩き始めた。
「これじゃあ、明日は積もらないかなぁ」
「ちょっと難しそうだね」
「皆とかまくら作ったり、雪合戦したかったなぁ」
立ち止まって上を向く。吐いた白い息が夜空へと昇っていく。
積もるにはいささか頼りない程に、静かに雪が降っている。
あ、と傑が何かに気付いたように声を上げた。
「クリスマスだよ」
その言葉に携帯を確認する。日付がちょうど変わった頃だった。
「えーっとなんだっけ…あ!ホワイトクリスマスだね!」
「残念。積もってないとホワイトクリスマスって言わないそうだよ」
「え、そうなの」
それでもこうやって、隣で傑と一緒に雪を、夜空を見上げている。日付を跨いでのクリスマス。
なんだか特別なような気がして、それを思うままに伝えると、傑は「そうだね」と微笑んでくれた。
「そろそろ、寮に戻ろう」
風邪を引くといけないから、とそう言った傑は私の手を取って、ダウンのポケットに自身の手と一緒に入れた。
「冷たいね」
傑はそう言うけれど、私は手も身体も熱く感じて仕方なかった。
夜空に2人分の白い息が混ざって溶けていく。
次の日、降った雪が溶けて地面が少し凍っていたぐらいで、やっぱり雪は積もってなかった。
悟と硝子に雪が降っていたことを話そうとしたら、人差し指を口に当てしーっと傑に止められた。
「2人だけの秘密だよ」