夏油 傑
▼ Name change!
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
▼高専時代
「お、終わった…」
課題で出されていた問題の回答を全て埋められたか軽く再度確認して、ペンを投げるように置いた。
夏油くんに教えられるまま問題を解いて、答えを書いていったけれど…全然頭に入って来なかった。きっと身にもなっていないと思う。
せっかく教えてくれたのに、ごめん夏油くん。
だって、触れた唇が気になって。何度夏油くんの唇を見てしまったか。
また見てしまいそうになったのを誤魔化して、両手を上げて、うんと背伸びをする。
「お疲れ様」
「夏油くん、ありがとう!助かったよ」
夏油くんも少し疲れたのか、ふぅと小さくため息を吐いた。
「ナマエ、さっきのことなんだけど」
そう言われ、思わずまた夏油くんの唇を見てしまった。せっかく見ないようにしてたのに。
さっきのこと、なんて言われれば、私は事故チューのことしか浮かばない。
でも、夏油くんは違うかもしれない。解き終えた課題のことかも。
「さっきのこと、って?」
「キス…のことなんだけど」
その言葉に体が固まる。そっと夏油くんの方を見れば、少し困ったような顔に見えた。
夏油くん、優しいから気にしてるのかな。
「あ〜大丈夫だよ!ちょっと触れただけだし、ね!キスって言うほどのことでもないよ!」
「…そっか、そうだね」
そう言って夏油くんは、軽く私の頬に手を添えた。真剣な顔をした夏油くんと目が合う。そして重なった唇。
それからそっと離れた夏油くんを、私はぱちぱちと目を瞬かせて見ることしか出来ない。
そんな私を夏油くんはくす、と少し笑って、また口付けて来た。今度は軽くリップ音を立てながら。
「…これはちゃんとキスに入るよね?」
静かにこくりと頷いた私に、夏油くんは良かった、と安堵のため息を漏らした。
「あの時にちゃんと話せれば良かったんだけど。…余裕がなくてさ」
格好悪いよね、と夏油くんは困ったように笑う。けれど、今も今までも余裕がないなんて、そんな風には見えなくて。
「…全然、そんな風に見えないよ」
「君の前では格好つけたがりなんだよ」
頬を軽く撫でられ離れていく夏油くんの手に、少し寂しさを覚えた。
「…それで、君のファーストキスが私だったら嬉しいんだけど」
どうなのかな?と夏油くんは机に肩肘をつき、少し首を傾げて聞いて来た。
やっぱり余裕がないなんて、嘘だ。
私はまだ頬の熱も引かず、いっぱいいっぱいだというのに。
なんだか悔しくなって、今度は私から触れた唇。
「…夏油くんが初めてだよ」
いつもの三白眼は大きく見開いて、その頬は少し色付いたように見える。
夏油くんは大きな息を吐き額に手を当て、敵わないな、と笑った。