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ずっと七海のことが好きだった。
高専の時も、高専を卒業した後も、呪術師を辞めた後も、戻ってきた時も、ずっと。
それでも、この想いを言葉にすることは出来なくて、胸の内に仕舞ったままだった。
「七海は今、彼女いないの?」
高専関係者での飲み会。いつの間にやら五条先輩から逃げて来て、隣に座った七海に聞いてみる。チラリと見た左手の薬指に、指輪はなかったので、結婚はしてない…と思う。
未練がましい私は、やっぱり七海の今が気になって仕方なかった。
いると言われても、いないと言われても、どうすることも出来ないけれど。
「そんな人いませんよ」
「そうなんだ。七海、モテそうなのに」
「…忘れられない人がいるんです」
そう目を伏せてお酒を口にした七海に、私は、そっか、と呟くような返事しか返せなかった。
七海にそんなに想われてる人は羨ましいな。その間に入る余地なんて、ない。
これなら、私も諦められそうだ。
「あれー?なになに、恋バナ?僕も混ぜてー!」
私達の前に、勢いよく現れたのは五条先輩だった。いつもより高いテンションに、少し赤くなった頬、どうやら酔っ払っているらしい。
誰だこの人にお酒を飲ませたのは、と辺りを見回すと伊地知と目があった。伊地知の身振り手振りする様子を見ていると、どうやら五条先輩が自分から飲んだらしい。
今までこの酔っ払いの相手をしていたのか、伊地知の顔はいつもより疲れているような気がした。ねぎらいの気持ちを込めて、片手を上げた。お疲れ様、伊地知。
「あ〜!伊地知とアイコンタクトなんかしちゃって!七海がヤキモチ妬いちゃうよ〜?」
五条さんの朗らかな声とは異なり、七海は五条さん、と低い声で諭すようにその名を呼んだ。
私はその言葉の意味を上手く飲み込むことができず、ただ目を丸くすることしか出来ない。
「あれ?まだ七海、告白してないの?」
え、と口を開いたが、声にはならなかった。
五条さんにそう言われ、七海に視線を向ける。七海はお酒の入ったグラスに口をつけようというところで、固まっていた。ぴくりとも動かない。
そんな七海と私を、交互に五条先輩は見る。
「あれれー?ミョウジもまだ好きって言ってないの?」
その言葉に今度は私が固まる番だった。
何でこの人が知ってるんだ、と思うよりも、それを聞いた七海がどんな反応をしているのか気になった。
そっと横目で見た七海の顔は、少し驚いているように見えた。
「早くくっつきなよ君たち〜!ってことで、邪魔者は退散しま〜す!」
そう言って五条さんは、また勢いよく立ち上がり、ふらふらしながら伊地知のいる方へと戻って行った。
七海と私の間には、嵐の過ぎ去ったような静けさが流れていた。周りの騒がしさなんて聞こえないぐらい。
七海に何て言えばいいのか分からない。何を聞けばいいのか分からない。
少し落ち着こうと、水の入ったコップを取ろうとした手を七海に取られた。そのまま、テーブルの下に持っていかれ、優しく重なり合う手。
「…そろそろ、2人きりになりたいものですね」
薄く滲んだ笑みを見せた七海に、私は静かに頷き返すことしか出来なかった。
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