夏油 傑
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▼高専時代
「なら、私と付き合えばいいのに」
ざわついていた空気が一瞬静まったと同時に、隣からそう呟かれた言葉。だから、私の耳にも届いてしまった。
その呟いた本人も、まさかと思ったのか驚いた様子を見せた。目があったのも一瞬、口元を手で覆いながら、すぐに逸らされてしまった。
思わず持っていたパックジュースが手から滑り落ちた…が、すんでのところで悟がそれをキャッチし、呑気に口笛を吹いてみせた。
「お邪魔虫は退散しま〜す!」
そう言って、ニコニコと笑いながらパックジュースを傑に渡し、去っていった。おのれ悟。それにそのジュースは私のだ。
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「五条先輩とミョウジ先輩って付き合ってるんですか?」
後輩のこの一言がきっかけだった、と思う。
「は?」と同じリアクションをしている悟と共に、怪訝な顔を後輩に向けた。
「あれ?仲良いなぁと思ってたんですけど…」
確かに悟とは仲が良いと思う。一緒に悪ふざけをして笑い合ったり、喧嘩をした時には決まって傑が間に入って仲裁をしてくれる。だからそれを言うなら、傑とも仲が良いのだ。
「誰がこんなヤツと付き合うかよ」
「あ、言ったなー!私だってアンタみたいなヤツは願い下げですよーだ!」
そして始まる口喧嘩。その間に原因の元となった後輩は、そそくさと逃げるかのように去って行った。
「彼、もう行ってしまったよ」
「本当だ。あの子、どこをどうみて、そう思ったんだろうねー」
「目が腐ってんじゃねぇの」
「ひっどい!ほんとなんでこんなヤツと。誤解されるなら、傑の方がいいわ」
「なら、私と付き合えばいいのに」
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「悟のこと好き?」
少しの間流れた気まずい空気を、傑から切ってきた。悟に渡されたジュースを、そう言いながら、私に返してくれた。
「好き…だけど」
「…それは友としてかな?」
「…うん」
「なら、良かった」
そっと手を取られ、向かい合う形になる。
傑は優しい顔で私を見ていて、それがなんだか気恥ずかしくて、悪いと思いながらも今度はこちらが目を逸らす。
しかし、それが仇となった。
耳元に寄せられた唇。囁かれた言葉。
「私のこと、好きになって欲しいな。もちろん、友ではなく男として、さ」
傑と本当に付き合って、悟がニヤニヤと茶化してくるようになったのは、また別の話。
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