夏油 傑
▼ Name change!
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▼高専時代
▼悲恋
その日、その街中を歩いていたのは偶然だった。
雑踏の中、ここに居るはずのない姿を見かけた気がした。まさか、と思って歩いて走って辺りを見回して。でも探しても探しても、焦がれた姿は見つからない。
気のせいだったんだと、落胆し下を向く。
「ナマエ」
久しく聞いていなかったその声色に顔を上げると、さっきまで探していた姿が目の前にはあった。
「夏油…くん?」
「うん」
「本当に、本当に夏油くん?」
「本物だよ」
ほら、と私の手を取った夏油くんの手は冷たかった。
「夏油くん!私、夏油くんにずっと伝えたかったことが」
「ナマエ」
夏油くんの手を離すまいとぎゅっと握り返し、必死に言葉を紡ぐ。でもそれは、夏油くんの言葉に遮られた。
「私もナマエが好きだよ」
思いを寄せた相手からの望んだ言葉。それなのに何故こんなにも嬉しくないのだろう。
だって、まるで壊れ物を扱うかのように、そっと私の手を剥がして半歩後ろへ下がった夏油くんの顔は、とても悲しそうだったからだ。
「ナマエ、幸せになるんだよ」
そう言った夏油くんは、目の前から離れていく。追いかけようと一歩を踏み出したいが、足が動かない。伸ばした手も届かない。
「夏油くん…!」
何度読んでもその名前ももう、届かない。
私は人目も憚らず、大声を上げて泣いた。
もう会えないことなんて分かってるのに。ひどいよ、そんな言葉残していくだなんて。