ストレートラッシュ / 白石
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あれから月日が経って、部活を引退した。
結果は全国大会ベスト4。やっぱり上には上がおるっちゅー話や。あ、誰かさんのマネやないで。
男子もウチらと似たような結果やったみたい。
大会に関しては全力で挑んだし、別に後悔はしてへん。けど、部活が無くなって数日、心に穴が空いたようやった。
自分にはやっぱりテニスやと思い、少し部活に顔を出した。皆、ウチがおらんでもよーやっとる。見とって微笑ましい。
部活が終わった後も、久しぶりのテニスやからか気分は高揚しとって、1人コートで打っとった。
「よっ」
背後から聞こえた声に驚いて、後ろを振り向くと白石がおった。
『びっくりしたー…。どないしたん?』
「いやー、音が聞こえて気になってな」
『あら、すんませんね』
「…俺もやってえぇ?」
おもむろに制服を脱いで、腕まくりをする白石。そういや白石と喋るんも引退して以来やなぁ…。
『…えぇで、やろ!』
ウチの予備のラケットを貸して、コートに入る。
夕暮れでこの静けさの中、テニスのラリー音だけが耳に響く。それが心地よくて、いつまでも打っていたい気分になった。
・
・
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「はい、ジュース」
『さんきゅー』
名残惜しい気持ちもあったけど、暗くなる前に切り上げて、近くにある木陰に2人腰をおろした。
「久しぶりに楽しかったわ」
『ウチもー』
一言二言交わして、会話が途切れる。別に居心地が悪いことはなかった。むしろえぇぐらい。
「……あのな、引退したら言おう思とったことあるんや」
『んーなに?』
「…好きや」
『ブハッ!』
思わず飲んでいる途中のジュースを、吹き出してもうた。良かった、白石の方を向いてなくて。
『な、なななんて?』
「ミョウジが好きや、って」
『だ、誰が?』
「俺が」
『誰を』
「ミョウジを」
『はぁああぁあ!?』
ごめん、白石。雰囲気ぶち壊しでごめん。いやだっておかしいって!
「…ミョウジやったら、そない言う思たわ」
『わ、悪かったな』
「ま、そういうことやから。心にとめといて」
『…いや、今返事する』
「え」
曖昧な関係が一番嫌や。どっちつかずな感じなんて、自分らしくないし。
『多分…、白石のこと好き…なんやと思う…多分』
あの件では、白石にホンマに支えてもろた。
あれから少し、少しずつ白石のことは気になっとった。けど、もちろん白石と自分なんて釣り合うわけがないし、心の奥底に本心を閉じ込めとった。
「ホンマに…?」
『う、うん』
「ナマエ」
名前を呼ばれた瞬間、ウチは白石の胸の中におった。
『ちょ、ちょ、ちょ!』
「自分、ホンマ可愛えぇなぁ」
『なっ』
「おめでとーございます!」
突如、背後から聞こえた歓声。後ろを振り向くと、男女のテニス部員が数十人おった。
『な、なんで自分ら!』
「そりゃあ、お二人の恋の行方を見守るためですわ」
「やっとくっつきましたね!」
ということは、こいつらに全部見られとった…?え、マジで。最初から…?
『…オ ド レ らぁあぁああ!行くで!白石!』
恥ずかしさと怒りから、皆を追い掛ける。私1人やなく、白石の手を取って。
夕暮れ時に、大人数で何をしとんやろウチらは。何の青春ドラマやねん。
何や可笑しく思えてきて、白石と互いに顔を合わせて笑いあった。
ストレートラッシュ!
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