嫌よいやよも、 / 一氏
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『小春ちゃーん』
「気安く小春に寄んな、ブス」
『小春ちゃーん』
「無視すんなぁ!」
私に対して、相変わらず暴言を吐くこの男は、一氏ユウジ。
「はいはい、喧嘩しなさんな」
いつも喧嘩の仲裁をしてくれるのが、金色小春ちゃん。
入学式以来、何故かこの三人で過ごすことが多くなっていった。
それでも私に対する一氏の暴言は、減ることなく増え続けるばかり。
「いつになったら仲良くするの?あなたたち」
『「誰が仲良くなんか」』
「ハモるとか、きっしょ」
『…こっちのセリフ』
暴言は増え続けるだけか強く毒づいていって、
たまに耐えられなく時があるわけで。
『あ、ちょっと トイレ』
「勝手に行けや」
『分かってますよー、と』
トイレなんて嘘ついて、行く先は大体屋上。
今までにも何回かあって、空を見上げては何度涙が溢れないようにしたことか。
「泣い、とるんか?」
突如後ろから、今一番聞きたくない奴の声がした。
アイツにここで泣いとんなんてバレたら、また何を言われるか。
『べつに、空見上げとったんや』
「ふーん…」
あれ?いつもならここで「そのまま落ちろや」ぐらい言いそうやのに。
「その、俺の、暴言は」
『…?』
一氏に背を向けたまま、後ろから聞こえる声に耳を傾ける。
「俺の暴言は、良い意味で、取れよ」
『はい?』
「べつに、んな」
ガチャ、と扉の音がしたので反射的に振り返ってしまったが、そこにはもう誰もいなかった。
どうせ小春ちゃんに言われて来たんやろうけど、素っ気ない言葉の中にも、遠回しに謝られているような感じがした。
少し、ほんの少しだけ、一氏の優しさに触れた気がした。
触れた優しさに
(少し胸が高鳴った、気がした)
『一氏になんか言うたんやろ?小春ちゃん。
わざわざ『謝り』に来たで、私んとこに』
「あら、バレた?」
『当たり前やん。小春ちゃんが言わな、誰があんなん謝ってくんねん』
「そうかしら、あたしは少し背中を押しただけよ」
『ん?』
「ふふ。内緒!(ちゃんと伝わったみたいね)」