結んでもいいですか? / 財前
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お店の外は日が傾いていて、照らす夕日が少し眩しい。だけど、今はこんな眩しさなんていらない。あぁ、夜風にあたりたい。
そんなことを思っていると、背後からお店のドアが開く音がして、振り向けば財前が出てきていた。
財前を見た瞬間、バッと凄い速さでまた夕日に向き直った。
近付いてくる足音は、妙に耳に響いた。
そんな財前は私の方を見向きもせずに、「ちょっと面貸し」とだけ呟いて、歩き去っていく。意を決して、私もその後をついて行く。
財前は帰ろうとしていなければ、自販機がある所に向かってる訳でもないようだった。
ちらりと半歩後ろから見た財前の後ろ姿は、昔とは違い、より男らしく逞しかった。
少し歩いた場所で、財前はちょっとした低い石の塀に腰をかけた。少し離れて私も腰をかける。
隣では財前が何かぶつぶつと言っている。
あー、私ついて来んけりゃ良かった。気まずいったらありゃしない。
その場を後にしようと、立ち上がる寸前。私の目の前には、握手を求めるような手が差し出された。
「彼女になって下さい」
頭の中で無限に回るその言葉に少し泣きそうになって、私は顔を見られないように両手で覆った。
だって…ありえへん。
『も、一回…言うて』
今にも嗚咽が出そうなのを我慢して声を出す。
財前は一拍置いて、私の我が儘なお願いを聞いてくれた。
「彼女に、なって下さい」
私は財前の手を握り、『お願いします』と言った。その途端、何とも言えないものが喉の奥から込み上げてきて、また両手で顔を覆い泣いた。
あぁ、私はこの瞬間を待っていたのだろうか。
「泣きなや」
『やって…!』
「ほら、ハンカチ」
『いや、案外だいじょぶ』
「大丈夫なんかい!」
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