着々と、確実に / 財前
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洲藤の相談を受けてから、洲藤とミョウジの距離は一気に縮まった。何故か言うたら、積極的に洲藤からミョウジのところに行きよるから。
そして、やっと…いや遂にこの日が来てしもたと思った。
洲藤がミョウジに告白するらしい。
「…洲藤が屋上に来て欲しいんやって」
放課後、俺とミョウジしかいない教室で俺はそう言った。洲藤にミョウジを呼び出して欲しいって頼まれたから。
『そっか』と呟いて、窓を見るミョウジを今すぐにでも抱きしめて、洲藤の元に行かせたくない。
伸ばしそうな手を必死に我慢して、「良かったやん。」と一言言うことしか俺には出来なかった。
『今までありがとね!財前くん!』
「…ま、俺はほとんど何もしてないけど」
『じゃ、行ってきます!』
俺は、笑顔でそう言って教室から出て行くミョウジを、姿が見えなくなるまで目で追いかけた。
「なにやっとんやろ…」
ミョウジが去った後も、俺は教室に残っとった。
今部活行ったって集中出来んし、どうせやったらと、音楽を聞きながら今日出された課題をしよった。
俺以外誰も教室におらんはずやのに、ふと俺のノートに影が差した。
イヤホンを外して顔を上げれば、そこにおったんはミョウジやった。
「ミョウジ……」
『へへっ』
少し笑みを浮かべたのを見て、あー上手くいったんやなって。もう分かっとるから、正直今は1人にして欲しい。
「良かったな、上手くいって」
ノートに目線を向けながら、そう言った俺の言葉に、ミョウジは少し無言のままやった。
『…断った』
「…は?」
今、なんて言うた?断った?
思いもよらぬ発言に俺は顔を上げてミョウジを見た。でもミョウジは、俺の顔は見ずに窓の外を見ていた。
『私な、洲藤くんの告白断った』
「なんで」
『……財前くんのことが、好きやから』
そう言ったミョウジは、視線を窓の外から俺に向けた。
頬が赤く染まり、今にも泣き出しそうなミョウジを俺は抱きしめた。
『ざ…いぜんくん…』
「アホ……俺も、好きや」
ミョウジが他の奴のモンになるのは、たまらなく不快やったけど、人の…好きな奴の幸せを祈るんが一番とか考えとった。
やけど今、俺の腕の中にはミョウジがおる。どれだけ嬉しいて、どれだけ愛しいか。
俺はミョウジを抱きしめながら思った。
この先何があっても
(もう絶対、離さへん)
「はぁ…」
『ちょ、何でため息』
「いや、洲藤が可哀想やなって」
『だって…しゃあないやん。財前くんのこと好きになったんやから』
「…おおきに」
着々と確実に
(君も僕に惹かれていたんだ)