いつものようにスーパーに買い出しに来ていると、見知った顔を見つけた。
しかし、いつもと格好が違うのだ。遠くから見たので人違いかと思ったが、やはりあれは…ビリーさんだ。

「ビリー、さん？」
「あ？ …あぁ、アンタか」

バンダナを外している姿を初めて見た。綺麗な金髪に、普段とは違う私服姿。見慣れない姿にドキドキした。格好いい、そう素直に思った。周りのお客さんも遠巻きにチラチラと、ビリーさんを見ている気がする。

「お買い物ですか？」
「あぁ、ちょっと買い出しにな」
「そうなんですね」

続かない会話。いつもなんて話してたっけ。なんだかドキドキして、上手く頭が回らない。
それじゃあまた、と声を掛けて別れたのは良いものの、帰りのタイミングでも一緒になってしまい、帰路を一緒に歩いていた。

「…いっぱい買いましたね」
「まぁ〜よく食べる野郎共が多いからな」
「なるほど…」

確かに、道場で見かける人達はみんな、良い身体をしている気がする。ビリーさんもその中の１人だ。チラリと横を盗み見る。やはり見慣れない姿にドキドキしてしまう。

「ビ、ビリーさん、今日はオフの日ですか？ いつもと違う格好ですけど…」
「まぁそんなもんだな」
「…似合ってます」
「…あ？」
「え、あ、えっと、見慣れないというか、格好良いなって…」

思わず言わなくて良いことまで言ってしまった。だけど、本当に格好良いと思ったのだ。普段と違う姿を見た、というだけかもしれないけれど。
なんだか居た堪れなくなってしまって、早口でビリーさんに別れを告げ、足早に家へと歩いた。


「…なんだったんだよ」
格好良い、確かにそう聞こえた。悪い気はしなかった。自然と緩んでいく頬。
道場の奴らにからかわれたら堪ったもんじゃない。顔を引き締め、俺も道場へと歩みを進めた。