おはようございます、ビリーさん!
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「アンタ、なんでここに…」
遡ること数時間前。行きつけのスーパーを出た帰り道。そのスーパーの袋をたくさん下げて、帰っていく後ろ姿を見かけた。大変だなぁと他人事に思っていると、それは道場でよく見かける女性だった。思わず声を掛ける。
「あ、あの大丈夫ですか?」
「あ、はい!なんとか!」
彼女は笑って袋を掲げて見せるが、やはり少し重そうだ。
「あの、あそこの道場の方ですよね? そこまでお手伝いしますよ」
そう言っても彼女は渋ったが、私も折れず半ば無理やりのような形でお手伝いすることになった。
「あの、ビリーさんのお知り合い…ですよね?」
「えっ」
「以前、ビリーさんとお話ししてるの見かけたことがあって…違いました?」
「あ、いえ、そうです!知り合いです!」
「良かった! 私、三峯ゆかりと申します。ビリーさんにはいつもお世話になってて…」
「あ、ナマエです! 私もビリーさんにいっぱいお世話になってます…」
お互い顔を見合わせて笑う。三峯さんと色んな話をしている内に、あっという間に道場に着いてしまった。
「良かったら、お夕飯食べて行きませんか? このお礼も兼ねて…」
「そんな! 申し訳ないですよ!」
「三峯?」
「大門さん!」
道場の前で三峯さんと話している最中、中から大柄な男の人が出てきた。
「買い物だったか。誰か付いて行かせれば良かったな」
「いえ!皆さんお稽古で忙しそうだったので…。なまえさんに、手伝ってもらいました!」
ビリーさんとお知り合いだそうで、と私の方を振り向いた三峯さん。自己紹介と挨拶をすると、大門さんと呼ばれる方も挨拶をしてくれた。
「お礼にお夕飯をご馳走したいと思ったのですが…良いですか?」
「あぁ、構わん。いっぱい食べて行ってくれ」
ということで、断るに断れず、なんだかんだと夕飯を頂くことになってしまったのだ。私も荷物があったので、一旦家に帰ってから、お邪魔させてもらうことにした。
* * *
「お、お邪魔してます…」
「…おう」
ビリーさんはそれだけ返事をして、ふいと自分の定位置であろう席に座ってしまった。それに少し寂しさを感じたが、出てきた食事の量にそれどころじゃなくなってしまった。
「お食事、お口に合いませんでしたか…?」
せめて片付けはお手伝いしようと、三峯さんとたくさんの食器を一緒に片付けている中、掛けられた言葉。
「いえ!とっても美味しかったですよ!」
「本当ですか? あまり、お箸が進んでないように見えたので…」
「それは、あの、周りの人達の勢いが凄くて…」
私も最初は驚きました、と笑う三峯さん。たくさんの男の人とたくさんの料理に囲まれた食事。また、凄い勢いで食べていく男の人達に圧倒されて、中々箸が進まなかったのだ。それでも、少しでも口にした三峯さんの料理はとても美味しかった。
「これで、最後ですね」
たくさんあった食器も綺麗に洗って、片付け終わった。チラリと掛けてあった時計を見ると20時を回ったところだった。あっという間の時間だったな。
「じゃあ、そろそろお暇させて頂きますね。お夕飯とっても美味しかったです!ご馳走さまでした!」
「こちらこそ、荷物持ってもらっちゃって…ありがとうございました!途中までお送りしますね」
「家すぐそこなんで大丈夫ですよ。夜道危ないですし…」
「それはナマエさんも…」
「これは俺の出番かな?」
キッチンに顔を出したのは、ビリーさんとはまた違う金髪の人だった。動く度にさらりと髪が綺麗になびく。
「俺が送ってくよ」
「お願いします、紅丸さん」
「でも…」
「この暗い夜道をレディ1人、歩かせる訳にはいかないからね」
パチンと飛ばされたウインク。様になっていて、一瞬見惚れてしまった。
「では、お言葉に甘えて…」
道場の前まで三峯さんに見送ってもらい、その後は紅丸さんと家の方へと歩き出した。
「そういえば、ビリーの知り合いって聞いたんだけど」
「あ、はい」
「声、掛けなくて良かったのかい?」
「ナギさんという方に捕まった?と聞いたので…」
「あぁ、そういえば道場の方に歩いて行くのを見たな…」
本当は少しでもビリーさんと話したかったのが本音だ。でも、夕飯の時のあの態度を見て、あまり話し掛けない方が良いのかと思った。皆さんとお話しされてて、声を掛けるタイミングが無かったのもあるけれど。また今度、お話しすれば良いと。
「寂しい?」
「えっ」
「顔に書いてある」
「そ、そうですか…?」
「……っと、どうやらプリンセスを笑顔に出来る本物のナイトの登場かな」
言っている意味が分からず、紅丸さんの顔を見ると、彼は後ろを振り向いていた。私も同じように振り返ると、そこにはビリーさんがいた。
「ビリーさん…?」
「コイツは俺が送ってくから」
「はいはい、そんなに睨まなくても分かってるよ」
じゃあね、ナマエちゃん。と手をひらりと振りながら紅丸さんは道場の方へと戻って行ってしまった。
「あー…、アイツに何もされなかったか?」
「え、あ、はい。お話ししてただけですよ?」
そうか、とそれだけ呟くように言ってから、ビリーさんは黙ってしまった。私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれているが、結局どちらも言葉を発することもないまま、家に着いてしまった。
「送って頂いてありがとうございました。紅丸さんにもよろしくお伝えください」
「…悪い。今、他のヤツの名前、聞きたくねぇわ」
そっと手を引かれ、抱き締められる。伝わる温もりに少しずつ鼓動が早くなる。
「…帰ったら道場にアンタが居て、本当に驚いた」
「す、すみません。色々あってお夕飯ご馳走になることになりまして…」
「いつの間にか帰ってるしよ」
「声掛けようかなと思ったんですけど…ビリーさん、ナギさんっていう方に捕まった?って聞いたんで…」
「それは…悪かった」
「いえ、それに」
続く言葉。言おうか迷ったが、ビリーさんの考えも聞いておきたい。そう思って口を開いた。
「あまり話し掛けない方が良いのかなって」
ビリーさんの肩がピクリと動いた気がした。
「…道場の奴らの前で、アンタとどう接したら良いかよく分かんねぇんだよ。ちゃんと言ったところでからかわれるのも目に見えてるしな…」
「そうだったんですね。勝手に道場に訪れたこと、怒ってるのかと思いました」
「怒っては…いや、他のヤツとアンタが話してんの見てちょっと…」
勝手だよな、とビリーさんはそう呟いた。同時に、少し抱き締められる力が強くなる。
「勝手でもなんでも、ちゃんと言ってくれた方が…私は嬉しいです」
私も負けずに、少し力を込めた。大きなため息が頭上から聞こえてくる。
「…ホント、俺には勿体ないお姫様だ」
少し身体を離され、頬をするりとなぞられる。
「それでも、他の奴らにアンタのナイト役を譲る気は毛頭ないがな」
最初は何のことを言っているのか分からなかったが、すぐに先程の紅丸さんの言葉が脳裏をよぎった。あの言葉が聞こえていたのだろうか、そう問おうにも塞がれた熱い唇で声にならなかった。
遡ること数時間前。行きつけのスーパーを出た帰り道。そのスーパーの袋をたくさん下げて、帰っていく後ろ姿を見かけた。大変だなぁと他人事に思っていると、それは道場でよく見かける女性だった。思わず声を掛ける。
「あ、あの大丈夫ですか?」
「あ、はい!なんとか!」
彼女は笑って袋を掲げて見せるが、やはり少し重そうだ。
「あの、あそこの道場の方ですよね? そこまでお手伝いしますよ」
そう言っても彼女は渋ったが、私も折れず半ば無理やりのような形でお手伝いすることになった。
「あの、ビリーさんのお知り合い…ですよね?」
「えっ」
「以前、ビリーさんとお話ししてるの見かけたことがあって…違いました?」
「あ、いえ、そうです!知り合いです!」
「良かった! 私、三峯ゆかりと申します。ビリーさんにはいつもお世話になってて…」
「あ、ナマエです! 私もビリーさんにいっぱいお世話になってます…」
お互い顔を見合わせて笑う。三峯さんと色んな話をしている内に、あっという間に道場に着いてしまった。
「良かったら、お夕飯食べて行きませんか? このお礼も兼ねて…」
「そんな! 申し訳ないですよ!」
「三峯?」
「大門さん!」
道場の前で三峯さんと話している最中、中から大柄な男の人が出てきた。
「買い物だったか。誰か付いて行かせれば良かったな」
「いえ!皆さんお稽古で忙しそうだったので…。なまえさんに、手伝ってもらいました!」
ビリーさんとお知り合いだそうで、と私の方を振り向いた三峯さん。自己紹介と挨拶をすると、大門さんと呼ばれる方も挨拶をしてくれた。
「お礼にお夕飯をご馳走したいと思ったのですが…良いですか?」
「あぁ、構わん。いっぱい食べて行ってくれ」
ということで、断るに断れず、なんだかんだと夕飯を頂くことになってしまったのだ。私も荷物があったので、一旦家に帰ってから、お邪魔させてもらうことにした。
* * *
「お、お邪魔してます…」
「…おう」
ビリーさんはそれだけ返事をして、ふいと自分の定位置であろう席に座ってしまった。それに少し寂しさを感じたが、出てきた食事の量にそれどころじゃなくなってしまった。
「お食事、お口に合いませんでしたか…?」
せめて片付けはお手伝いしようと、三峯さんとたくさんの食器を一緒に片付けている中、掛けられた言葉。
「いえ!とっても美味しかったですよ!」
「本当ですか? あまり、お箸が進んでないように見えたので…」
「それは、あの、周りの人達の勢いが凄くて…」
私も最初は驚きました、と笑う三峯さん。たくさんの男の人とたくさんの料理に囲まれた食事。また、凄い勢いで食べていく男の人達に圧倒されて、中々箸が進まなかったのだ。それでも、少しでも口にした三峯さんの料理はとても美味しかった。
「これで、最後ですね」
たくさんあった食器も綺麗に洗って、片付け終わった。チラリと掛けてあった時計を見ると20時を回ったところだった。あっという間の時間だったな。
「じゃあ、そろそろお暇させて頂きますね。お夕飯とっても美味しかったです!ご馳走さまでした!」
「こちらこそ、荷物持ってもらっちゃって…ありがとうございました!途中までお送りしますね」
「家すぐそこなんで大丈夫ですよ。夜道危ないですし…」
「それはナマエさんも…」
「これは俺の出番かな?」
キッチンに顔を出したのは、ビリーさんとはまた違う金髪の人だった。動く度にさらりと髪が綺麗になびく。
「俺が送ってくよ」
「お願いします、紅丸さん」
「でも…」
「この暗い夜道をレディ1人、歩かせる訳にはいかないからね」
パチンと飛ばされたウインク。様になっていて、一瞬見惚れてしまった。
「では、お言葉に甘えて…」
道場の前まで三峯さんに見送ってもらい、その後は紅丸さんと家の方へと歩き出した。
「そういえば、ビリーの知り合いって聞いたんだけど」
「あ、はい」
「声、掛けなくて良かったのかい?」
「ナギさんという方に捕まった?と聞いたので…」
「あぁ、そういえば道場の方に歩いて行くのを見たな…」
本当は少しでもビリーさんと話したかったのが本音だ。でも、夕飯の時のあの態度を見て、あまり話し掛けない方が良いのかと思った。皆さんとお話しされてて、声を掛けるタイミングが無かったのもあるけれど。また今度、お話しすれば良いと。
「寂しい?」
「えっ」
「顔に書いてある」
「そ、そうですか…?」
「……っと、どうやらプリンセスを笑顔に出来る本物のナイトの登場かな」
言っている意味が分からず、紅丸さんの顔を見ると、彼は後ろを振り向いていた。私も同じように振り返ると、そこにはビリーさんがいた。
「ビリーさん…?」
「コイツは俺が送ってくから」
「はいはい、そんなに睨まなくても分かってるよ」
じゃあね、ナマエちゃん。と手をひらりと振りながら紅丸さんは道場の方へと戻って行ってしまった。
「あー…、アイツに何もされなかったか?」
「え、あ、はい。お話ししてただけですよ?」
そうか、とそれだけ呟くように言ってから、ビリーさんは黙ってしまった。私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれているが、結局どちらも言葉を発することもないまま、家に着いてしまった。
「送って頂いてありがとうございました。紅丸さんにもよろしくお伝えください」
「…悪い。今、他のヤツの名前、聞きたくねぇわ」
そっと手を引かれ、抱き締められる。伝わる温もりに少しずつ鼓動が早くなる。
「…帰ったら道場にアンタが居て、本当に驚いた」
「す、すみません。色々あってお夕飯ご馳走になることになりまして…」
「いつの間にか帰ってるしよ」
「声掛けようかなと思ったんですけど…ビリーさん、ナギさんっていう方に捕まった?って聞いたんで…」
「それは…悪かった」
「いえ、それに」
続く言葉。言おうか迷ったが、ビリーさんの考えも聞いておきたい。そう思って口を開いた。
「あまり話し掛けない方が良いのかなって」
ビリーさんの肩がピクリと動いた気がした。
「…道場の奴らの前で、アンタとどう接したら良いかよく分かんねぇんだよ。ちゃんと言ったところでからかわれるのも目に見えてるしな…」
「そうだったんですね。勝手に道場に訪れたこと、怒ってるのかと思いました」
「怒っては…いや、他のヤツとアンタが話してんの見てちょっと…」
勝手だよな、とビリーさんはそう呟いた。同時に、少し抱き締められる力が強くなる。
「勝手でもなんでも、ちゃんと言ってくれた方が…私は嬉しいです」
私も負けずに、少し力を込めた。大きなため息が頭上から聞こえてくる。
「…ホント、俺には勿体ないお姫様だ」
少し身体を離され、頬をするりとなぞられる。
「それでも、他の奴らにアンタのナイト役を譲る気は毛頭ないがな」
最初は何のことを言っているのか分からなかったが、すぐに先程の紅丸さんの言葉が脳裏をよぎった。あの言葉が聞こえていたのだろうか、そう問おうにも塞がれた熱い唇で声にならなかった。